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Olympus Quest  作者: 狩野理穂
Olympus Quest 2
16/34

神々の引退

まずは、皆さんご唱和ください。

『メリークリスマス!』(ちなみに、私はクリぼっちでした笑)


とうとう──とうとうですよ。第二部の最終話です。

まあ、盛り上がりは前回で終了しているので、エピローグみたいなものになるんですが是非お読みください。(作者的には何の感情も湧かない、五十音票を目の前においてエイッて感じで名付けたような彼が再登場します!)

第二部としてはただの伏線回収兼つじつま合わせですが、第三部では超重要(になるはず)の設定が出てきます。

 引退だって!?


「ルーシュ・ユピテル。よく聞け。今回の表面的な原因はあの二人だ。だがしかし、本来は我々の過信なのだ」

「神は、自分の司る範囲を操ることが可能です。それ故に自らの能力を広げようとする。その典型があの二人だったのです」

「そこで、だ。我々はその欲を消滅させる方法を考えていたのだが、意外な人物から提案があった」


 ゼウスが一人の神を指す。


「ヘラ……」


 紛れもなく、それは俺の命を狙っていたヘラの姿だった。


「私の出した案は、神々の引退です。真なる根本は、神が存在すること。ならばその神がいなくなればいいのです」


 ヘラが言った。

 だが、そんなこと可能なんだろうか。この世の全ては神々が分割して存在していると習った。そんな神々が引退をすれば、世界は破滅するんじゃないのか?


「君が思っていることは正しいよ」


 二匹の蛇が巻きついている杖を持つ神が言う。彼はヘルメスだろうか。


「確かに、僕らがそのまま居なくなれば世界は原初の混沌に回帰するだろうね。ただ、代理を立てればそれも起こらない。そうでしょ、アポロンくん」


 アポロン──太陽神であり、預言も司っている。確かに雄々しいローブを纏う姿は太陽神そのものだ。


「我ら十二神の力をもってすれば、不可能ではない。但し、幾つかの制限は設けられよう」

「制限?」

「昨今は我らの力により万物を操作できた。だがそれは無機なる構造故不可能になる。それでも世界の破滅と比較すれば些細なものであることに間違いはないであろう」


 ゼウスが頷いた。


「我々は、その代理を『科学』と呼ぶことにした。お前は、その名を聞いたことがあるのではないか?」


 科学──なぜだろうか。とても懐かしい響きがある。そして、俺は恐ろしいことに気づいてしまった。

 どうして、ニュクスが持っていた武器を知っていたんだ?拳銃?サブマシンガン?そんなもの見た事もないし聞いたこともない。なのに知っている。


「きみは、『時の旅人』なんだね」


 ヘルメスが言った。


「時の旅人という言葉は初めて聞くことだろうから少し説明するね。とはいえ、時空の流れに縛られない者としか言いようがないんだけどね。過去から未来のみならず未来から過去への逆行もできるのさ。旅の仕方は簡単。死んでから次に生まれたときはもう目的地。それだけだ。ただ、なにをもって時の旅人というのかが難しいところでね……共通点としては、以前いた時空の記憶を持っていることなんだけど、ほとんどが意識の根底にしずんでしまっている。きみみたいにね」


 時の旅人が何かはわかった。ただ、どうして俺が時の旅人なんだろうか。


「その質問は難しいな……」


 ヘルメスに訊いたが、当人は顎に手を当てて考え込んでいる。


「なぜわかったか、と訊かれればぼくがスキャンしたからって答えでいいんだけど、それじゃあ不満だろ?」


 もちろんだ。俺にそんなそぶりがあったとは思えないし、突然言われたところで信じられない。


「きみの意識──かな。純粋なこの世界の人ならば神を信仰しないなんてありえない。それなのにきみが神を信じていなかったのは、神が引退して科学が発展した世界から来たのでは、と思ったわけだ。ちなみにいっておくと、時の旅人はオリンポス神とは無関係だよ。つまり、ぼくらが引退したところできみは時空を漂流し続けるってわけ。ぼくから話せるのはここまでかな」


 ヘルメスが口を閉じ、ゼウスが一歩前に出る。


「我が息子よ。朗報だ。ハデスによると、ユピテリアの住民は冥界に来ていないらしい」


 一つのアンデッドと話していたゼウスが、俺に言う。

 ユピテリアの皆――ガイアに飲み込まれた上にケラウノスの電撃を浴びている。てっきり死んだと思っていたのに。無事だとしたら、今すぐにでも会って謝りたい。


「勝手に殺すんじゃねえよ」


 ガイアのいた穴から声がした。


「サルミ……」


 そこにいたのは、ユピテリアの住民たちだった。

 サルミが能力【万物創造】で作ったと思われる板に全員が乗り、何人かで物体浮遊をかけている。皆は本当に生きていたのだ。


「ゼウス様、本当にご隠居なさるのですか?」


 村長が言った。


「ああ。十二人で決めたことだ。もう変えるつもりはない。長年に亘る祈りは届いていたぞ」


 ゼウスの答えに、思わず目尻を濡らす村長。


「こんなことを話しているうちに時間になってしまったな。準備はいいか」


 ゼウスが十一の神を見渡す。

 ヘラ、アテナ、ヘルメス、アルテミス──それぞれの神が自らの神器を地面に置いていく。

 十一の神器が円形に並んだ。最後に、ゼウスがその中心にケラウノスを突き立てる。


「さらばだ、英雄たちよ」


 そう聞こえた気がした。だが、一つ瞬きをすると、もうそこには何もなかった。



 二〇一八年──中学三年生の僕はいま、理科の授業を受けている。


「雷はねぇ。雲と雲が起こす静電気なんだよねぇ。大昔のギリシャの人はゼウスって神様が創ってたと考えてたらしいけどねぇ。そんなことは無いんだよねぇ」


 語尾に癖のある先生だが、悪い先生じゃない。ただ、一つだけ勘違いしていることがある。



 神はいたんだ。

──と、いうわけで第二部終了です。ここまで読んでくれたあなたが大好きです。

特に書くことがないといえば大ウソになりますが、ここでは時間が足りません。(現在時刻は、8:57です)


さて、それではお知らせコーナーと行きましょう!

以前から言っている通り、第三部はなかなか厳しい進行状況です。このまま更新し続けるのはほぼ不可能でしょう。しかし、私はせめて今年中だけでもつなぎたいのです。

よって、裏話を公開することにしました!期日は12/28(金)!最後までよろしくお願いします!

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