それぞれの金曜日・下
もうすぐクリスマスがやってくる。
学園前の駐車場のイルミネーションは、年々派手になっていた。
最初は大きな木1本に装飾されていただけなのに、5本の木に飾りがつけられ、木の間をサンタクロースが飛んでいる。
木の根元には、首を動かすトナカイの人形。
イルミネーションの回廊までつくられている。
暗くなるのを待って、俺と空は、駐車場のイルミネーションを眺めた。
17時を回れば、人影はなくなる田舎町。
駐車場に止められている先生たちの車も、ほとんどが帰路についている。
俺はあたりに人がいないことを確認してから、空を後ろから抱きしめた。
いつも嫌だ、とか否定の言葉ばかり重ねていた唇からは、自分の名前が漏れる。
「亜砂斗……」
「ねえ空。クリスマス、一緒にいたい」
「……外に出るのはあまり……」
そう言って、空は黙ってしまう。
「じゃあ、家に行く」
言いながら、抱きしめる腕に力を入れる。
「調子に乗るな」
空が、こちらを振り返った。
その表情は、怒りよりも恥ずかしさのほうが勝っているように見えた。
自分のために、感情が動いているのがうれしくて、空を正面から抱きしめる。
空が、俺の胸に顔をうずめ、そして、見上げてくる。
「香水のにおいがする」
「嫌い? ならやめるけど」
空は小さく首を横に振り、また胸に顔をうずめる。
「そういうわけじゃない」
と小声で言う。
「空は来年どうするの?」
前から気になっていたことを尋ねる。彼女はまだ、進路が決まっていない。
むしろどうするつもりなのかも全然知らなかった。
「叔母ははじめから浪人していいと言っていたし、あんな状態じゃあ、勉強どころではなかったから……
とりあえず、願書はだすが、期待はしていない」
「俺と同じ大学受ける?」
「お前と同じ大学に、これから勉強して受かるわけないだろう。最初から念頭にない!」
と声を上げる。
それは少し残念に思うけれど、仕方ないかなと思う。
「クリスマス……来てもいいが、夜には帰れ」
恥ずかしそうに、空は言った。
「夜って何時?」
「九時だ、九時」
「九時かあ……ちょっと残念」
できれば泊まるくらいしたいが、さすがにそれは無理かとも思う。
「怒るぞ」
空が俺を見上げてくる。口をとがらせ、確かに怒っているようだ。
俺は首を横に振り、
「ううん。大丈夫。空が怒るようなこと、俺はしないから」
そして、にっこりと笑いかけた。
空は顔をしかめ、勝手にしろ、と呟く。
顔を真っ赤にして言う姿が可愛くて、空を抱き締める腕に力を入れる。
そして、耳元で囁いた
「大好きだよ、空」
戸惑いがちに、背中に手が回される。
とても小さな声で、空は応えた。
「私もだ」
ていう感じでどうですか。
たぶん最初を書いたのはリアル高校生に近い年齢のころ。
反省はしているが後悔は(ry
面倒だから一気にうpしてしまいましたが。
まあ、こんなことも書くんですよね。っていう話。