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妖国伝エルソラーナス ― 剣と石の叙事詩 ―  作者: 美刀 尊志


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夕闇の街道

※活動報告にて物語の舞台となるロワン地方の地図を公開しました。位置関係の参考にどうぞ。

キリムが前へ出る。


ユンタスとイストハックも哺乳獣を進めた。



騎影は、こちらへ気付いた途端、驚いたように速度を落とした。


兵士だった。


イルージ軍の軽装鎧。


肩当てには、国境監視隊の紋章が刻まれている。



ミリナスが目を細める。


「イルージの監視兵……」



兵士は周囲を見回し、わずかに息をついた。


「敵では……ないようですね」



イストハックが呆れたように言う。


「そりゃこっちの台詞だ」



兵士は苦笑しようとして、諦めた。


疲労の色が濃い。


「監視所が……やられました」



クヮデューゥが答える。


「見ました」



兵士が顔を上げる。


「なら、やはり……」



「他にもあるのですか」


エリムスが尋ねた。



兵士は頷いた。


「西の街道沿いです」


「三つ」


「今日」


「ほぼ同時に」



風が止む。



キリムが眉を寄せる。


「三つ?」



「ええ」


「どこも規模は小さい」


「ですが」


「全て、監視所だけが狙われている」



クヮデューゥとエリムスが、ほぼ同時に視線を上げた。



兵士は続ける。


「街道は無事」


「近くの村も無事」


「死人も少ない」


「なのに」


「監視だけが潰されている」



夕陽が沈み始めていた。



クヮデューゥが呟く。


「視界を奪っている……」



エリムスは答えない。


ただ。


西の空を見ている。



キリムが聞く。


「敵は見たか」



兵士は少し考えた。


「遠目ですが」


「十二人」


「全員、街道を外れていました」



「どこへ?」



兵士は首を振る。


「わかりません」


「ですが」


そこで言葉を切る。


「何かを待っているように見えました」



夕陽が、地平線へ沈んでいく。



監視所。


三箇所。


十二人。


そして。


夜。



エリムスが、小さく呟く。


「……なるほど」



クヮデューゥが振り向く。


「何か」



エリムスは少し考えた。


「もし私が敵なら」


西を見たまま続ける。


「今夜」


「湖岸で仕掛けます」



誰も言葉を返さなかった。



風だけが。


レジイ湖を渡っていく。

※物語の舞台となるロワン地方の地図を公開しました。イルージ砦戦の位置や、この先の旅路も分かりやすくなると思います。活動報告よりご覧いただけます。

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