第一章エルフの里⑥ メルリ行方不明
「ふわぁあぁぁ…」
「あら? フルルちゃん、おはよう」
「おはようございますなのでしてぇ」
「と言ってももうすぐ夕ごはんよ?」
「うひゃぁ! ボクはそんなにねてたのでしてぇ?」
「ぐっすりだったよ?」
「うーん…ねごこちがよくなりすぎ、でして…?」
「ほんじゃオレ、ブッコロリーもらってくんわ」
「ブロッコリーだよー、カナートくーん」
「カナートはどこへいくのでして?」
メルリから飛び立ったフルルがひょこひょこやって来た。
「エルフのおっさんから野菜分けてもらいにな。お前ぐーすか眠ってたから知らねーだろうけど、今エルフの里ってとこに来てんだ」
「エルフ! ニンフのおなかまなのでして。ボクもあってみたいのでして」
「おー、そんじゃ一緒に行くか」
「メルリー! ボクもエルフにごあいさつしてくるのでしてー!」
「はーい。いってらっしゃーい…
…メルリもエルフなんだけどなー…」
◆
「おっと!」
ロッジを出たところでちょうどグランディールたちと遭遇。
「フルル様にカナート。どちらへ」
「さっき言ってた野菜もらいに。ブッコロ…」
「ブロッコリーなのでして…」
「ああ、それではワタシも参ろう」
「オレ一人で大丈夫じゃね?」
「そうかもしれんが…戦闘以外では役に立ててる気がしないのでな…こういう時くらい手伝わせてくれ」
「まぁ、そういうことなら」
とはいえ、オレ的にはずっとメルリを背負ってもらってたってのがあるんだが、ここはむしろ手伝ってもらった方がグランディールも気が楽だろうな。
◆
「…うーん……うーん…」
「メルリちゃーん。何ソワソワしてるの?」
「…ヒミコさん? え? そわそわなんかしてませんよ?」
(うわぁぁ…目がめっちゃ泳いでるぅぅ…あ、そっか! そういうことか!)
「メルリちゃん、ブロッコリーって結構重いと思うの」
「? はい…」
「カナートくん、一人じゃ大変かなーって。手伝ってあげるといいのかなーって」
「え? あ! そ、そうです、そうですよねっ! どのくらいいただけるのかも分かりませんしね、一人じゃ大変かもしれませんもんねっ!」
「こっちはやっておくからさ」
「はいっ! 行ってきますっ!」
だだーっ
「あ! 走ったら」
ぺしゃっ
「ああん!」
「危ないよ、って…」
「行ってきます!」
バタンっ
「ああ…寸分違わぬ恋する乙女ムーブ…かわいすぎる…」
「なんのさわぎー?」
「いやぁ、メルリちゃん、かわいいなって」
「何をそんな、今さらネコって可愛いよねみたいなこと」
「姉さん、そこはイヌでは?」
「「…アァンンンッ?!?!?!」」
◆
「灯りを持っているワタシが先の方がよかろう」
カチッ パッ
なんかフツーに懐中電灯出てきた…しかも軍とか警察とかで使うようなマグライト…
「なぁグランディール…この世界って中世欧州的なところだと思ってたんだが、なんでこんな現代的だったりすんの?」
「うーむ…ワタシが転生してきた頃はお主の言うような世界のところも多かったが、だんだんと元いた世界のような建物や道具が増えていってな…転生してきた人々にしてみれば元の世界の方が便利だったから、そういった物を【設定】で追加したのではないだろうか」
「案外ルールがスカスカなのか? この【フォビドゥン】ってところは」
「そうなのだろうな。自分の在り方を自分で決められるなど、そんな自由な世界はそうそうないだろう…とは思うが…」
「思うが?」
「何が禁じられているのか分からない世界が果たして本当に自由なのか…白騎士団の真の活動目的もそこにあるからな」
「そうなん?」
「街を暴徒から守るというのが主な活動だが、一方で【真祖の魔王】の行方は探している。【真祖の魔王】から支配権限を剥奪し、禁止条項を解放して自由世界をつくるのが白騎士団の存在目的だ」
「いいのか? そういうのって秘密じゃねぇの?」
「いや、あからさまではないにしても公言していることだからな」
「ふーん。ユーリの姉ちゃんの件はあるにしても、こんな自由な世界にしてくれるってぇんなら、【真祖の魔王】とやらも案外悪いヤツじゃないんじゃねぇか?」
「そうなのだろうか…」
グランディールの表情は浮かないが
「まずはブッコロリー、貰ってこうぜ!」
「ああ、そうだな」
◆
さて、さっきのエルフのおっさんとこ行ってまず挨拶。おっさんとフルル、それぞれ違う種族と会うのは初めてだって大興奮だったぜ…
で、ブッコロリーは納屋にあるんで、好きなだけ持ってけ、ってさ。
灯り持ちのグランディールが先行するわけだが、コイツがオレより背がデカいもんだからさ…
スッ…
ガンッ
「ガぁっ!?」
「ふぎゃっ!」
グランディールの影になって納屋の入り口が低くなってるのが見えなかった。アイツは見えてるから避けるわけだがその天性の見切り力が発揮されたかギリギリで避けやがった。気が付いた時には目の前が入り口の梁だった…おかげで強かデコをぶつけちまい、頭に乗ってたフルルも巻き添えだよ…
「フルル様っ!」
グランディールが慌ててフルルに駆け寄る。
まぁニンフ親衛隊みたいなもんだからな、それは分かるんだが。
「テメェ、グランディール! 急に避けんじゃねぇ!」
「ん? ああ、すまない。灯りはワタシが持っているんだったな」
冷静に言われてもな…
「っつゥゥゥ…あーあ、デコにたんこぶできちまった…」
「切ったりしてないか? 見てやろう」
と顔を掴まれグイッと持ち上げられた。
◆
「もうご主人様ったら! 荷物運びくらいメルリに手伝わせてくれてもいいのに! …こっちの方だったよね…あ、灯り…え…?」
「………キス…してる…? ご主人様と……オスカレッテさん…」
◆
「うがぁ!」
急にやられりゃ首のスジおかしくなるだろうが!
「…ふむ。なんともないようだ」
「…今度は首が捩じ切れるかと思った…」
「何を大袈裟な。さぁ、運ぶぞ」
くっそー、どこまでも冷静だな、コイツ。まぁこんくらいでギャースカ言ってたら白騎士団なんか務まらんのだろうけどな。
「ボクもおてつだいするのでして!」
とブッコロリーを持ち上げるが
「ふぁ、あぁ、ふあぁぁぁ…」
ぼとっ
ブッコロリーごと地上へ落下。
「無理すんなよ。まだ手術して間もないんだ。医者にも言われたろうに」
「そうだったのでして。ルククのこういをむだにしてしまうところだったのでして」
「フルル様。荷物は我らに任せられて、いざ参りましょう。ところでカナート。いくらワタシでもブロッコリーが正解だということくらい分かるぞ?」
◆
「おー。戻ったぞー。…何やってんの…?」
パイセンとヒミコが互いのほっぺた引っ張り合ってるんだが。
「これは人類史上最も由々しき対立…」
「イヌ派対ネコ派の宗教紛争…」
アホか。
「どっちもカワイイんだ、派閥なんか無ェ」
「ぐぬぅ…博愛主義者めェー」
「あれ? カナートくん、メルリちゃんは?」
「いや、知らんが」
「さっきロマネスコ運ぶの手伝うって出て行ったんだけど」
「ん? グランディール! メルリ見かけたか? オレたちの方へ来たらしいんだが」
「いや、分からぬ。道に迷ってしまわれたか? ちょっと様子を見てこよう」
「オレも出る!」
◆
迷っているかとエルフの里の中を総出で探すんだが…
「どうだ?」
「いなかったよー」
「こっちも」
「里の中ではないのだろうか?」
大声上げて探し回るものだからエルフのオルフィンも出てきて探すのを手伝ってくれている。
「外の森へ入ってしまうとやっかいですよ? 夏至の時期とはいえ日が落ちれば森の中は暗くなりますからね」
「手分けして探そー! 迷子になんないように気を付けてねー! 散開っ!」
◆
「はぁっ はぁっ はぁっ ああっ!」
バタッ
「いたい…いたい…いたい…う、うぅ、ううぅ…」
痛い。
転んで痛いのはもちろんだが、胸が、心が、チクチクと痛い。
…ご主人様がオスカレッテさんと…キス…しているのを見て、咄嗟に逃げてしまった…
ご主人様がどんな方とお付き合いしようと、それは自分には関係ない。
でも…また彼女が…皆様からウランちゃんと名付けてもらった彼女が目を醒ましてしまったら…
それで取り返しのつかない事になってしまったら…
怖い。
考えただけでも…
ご主人様は、共に戦ってくれる女性が好みなんだろうか?
守られているだけじゃ、やっぱり…
戦うのなら彼女が、ウランちゃんが表に出た方がいいのだろうけど。
それでオスカレッテさんに何かあったら…
結局、同じところをぐるぐる回っているだけだ。
そして…どこにもメルリの居場所が、無い事に気付く。
何より、今ここがどこなのかが分からない。
もう、身も心も、帰ることができなくなってしまった…
◆
「メぇぇぇぇぇルぅぅぅぅぅリぃぃぃぃぃちゅわぁぁぁぁぁん!」
どすっ
遠くから呼ぶ声が聞こえたと思ったら体当たりのように何かが抱きついた。
「きゃぁッ!? …ミキミキ…さん?」
「探したよぉー! どったのー? 道に迷っちゃったー?」
「え? あ、はい、そうですね…」
「…うーん…そっかー。まぁでもお家に戻ろっか。みんな心配してるしさー」
「あの…でも…」
「まぁその辺、戻ってからミキミキ姉さんがお話し聞いてあげちゃうよー! ささ、行こう、みんなのところへっ!」
グイッと手を引かれる。
温かい、手。
はいしゅーりょー はいここまでーヽ(`Д´)ノ
えー( ´△`) というところで終わりますが、実際原稿がここまで。
このあとキメラとの戦闘に入っていくわけですが、続きを書くのにモタモタしてたら原稿提出した先からコテンパンな寸評をいただきまして、心が折れた(つД`)
まぁぐぅのねも出ないほどの正論パンチだったのでそんなものだよなー、と( ´△`)
プロット的には先まで、というかラストまで考えてはあるのですが、なんか「どうせ書いても酷評されるだけだし…( ´△`)」と心がすっかり委縮してしまっているのでこの作品はここまで。
ただ、考えた設定とかもったいないな、と思って他作品へ流用したりしてますんで、じゃいのの「遺伝子」はどこかで息づいている…かもしれません。
シリーズ最初の「プロローグ」公開から、途中「クレハ」を挟んで、週1ペースの公開で1年と4カ月ですってΣ(゜Д゜)
初めて書いた「異世界モノ」だったんですが、いかがでしたでしょうか?
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました<(_ _)>




