ようやくたどり着いた時にはもうあの頃の君はいない
今年もエアコンの掃除を無事に・・・終えることができたのでしょうか。
ちゃんと掃除カバーを買って万全にやったつもりが気づいてしまった。
あの中の回る奴。あの溝を100均で買ってきた細いところに手が届く
掃除道具でこすって見たら・・・真っ黒・・・真っ黒。
毎年洗剤を吹きかけて水で洗い流していたはず・・・これは・・・。
うーん、そこまでいったらもう限界。
さすがにもう解体するか業者を呼んで掃除してもらうか。
そもそも、この回る奴を完璧に洗浄できなければ意味がない。
これそもそも取り外しできるのか?いや、一般家庭レベルでは無理だ。
結局ブシャーと吹きかけて洗浄してしばらくクーラーをつけて完了した。
知らない方が良かったのか・・・知ってしまっての後悔がデカかった。
どこか遠くを見つめるヒルマにアルヴァンは問いかけた。
『その後、その少年はどうなったんだよ。』
「知らね。」
『あっそ。』
「とは言え何百年前の話だ。もう生きてはいてはいないだろう。」
『けど、死ねないって言ってなかったか?』
「そういう呪いだったんだろう。我はただ、興味本位で何もせずにその少年の話を聞いていただけだ。あの時は人間とはいやらしいもので陰湿なところ以外は魔物とさほど変わらないのだと思っていた。だが、人間の文化や生活と言うものは有限であってそれでいて、けど過去を起因して今がある不思議なものだ。」
『完全にハマったな。』
「ハマった。我らは魔物だぞ。何を欲するのも自由だ。」
『いつか、ヒルマ語録として出版したらどうだ。』
「それも面白い。」
ヒルマなら本気でやりそうだと思いアルヴァンは今の提案を少し後悔した。
「それでそっちの移住計画は順調なのか?むしろ、一度シロモンドへ行ってみたのだが。」
『王が不在じゃダメだろ。しばらく我慢しろ。』
「うむ、手厳しいな。その代わりVIP対応で頼むぞ。」
『はいはい。ギンガルは知り合いが動いてくれている。話だと幹部クラス1名合わせて14体の魔物が駐在しそして、黒い礼服を着た男がいると。毎週、食糧の供給にカイノスから物資が届くそうだ。』
「ほう。それで。」
『町人は今のとこ普段通り生活はできているそうだ。けど、最近テスカトリポカを信仰する者が布教し始め入信する者が出てきているそうだ。そして、ギンガルから離れてカイノスへ移住するみたいだ。』
「それは厄介だ。アルヴァン殿が敵視している神であろう。下手に洗脳されたら移住先でも問題が出てくるぞ。」
『だよな・・。根本を絶たないとまずいか。』
「それで、魔水晶の設置は進んでおるのか?」
『あぁ数は少ないが数十個をユリスがシルバに渡したそうだ。そして、町の中心の広場の至る所に設置してある。』
「気づかれる心配は?」
『こっちには口うるさい加工の達人がいる。魔水晶の見てくれぐらい変えられるから心配ない。普通の石ころみたいに加工してもらっている。』
「それは頼もしいな。さて、こちらも会場を作らないとな。」
『おい!わざわざ会場を作るのか?』
「当り前だろう。我の晴れ舞台座だぞ。ちゃんと国民に見えるようにかつ我の強さを知らしめる絶好の場を用意せぬでどうする。」
『なら、なんで演劇場を先に立てたんだ。』
「・・・気分だ。」
『どっかの広い空き地でいいだろ。』
「それは困る。」
『前言ってたことと違うぞ。国民の安全を考えろ。』
「仕方ない。コンパクトに済ませればよいなら・・・そうだ。アルヴァン殿その魔水晶を分けてくれないか?そうだな・・100個ほど。」
『高いぞ。』
「金を取るのか?」
『いや、職人が口うるさいから。』
「あぁ代価は支払えってことだな。何を所望する?」
『珍しくおいしい石。』
「うむ・・・石においしさがあるのか?」
『奴は鉱物、宝石を食べるからな。』
「無機物系なのか。い・・し・・・。ちょっと何かないか探してこよう。」
ヒルマはそう言い残して自身の地下の城へ戻って行った。取り残されたアルヴァンは休憩しているレインとノクターに近づき話しかけた。
『頑張ってるな。』
「あっアルヴァンさんこんにちは。」
レインが挨拶して、ノクターがアルヴァンに返した。
「どうされましたか?」
『垂れ幕に続いて建築まで手掛けているんだな。』
「あぁそうですね。いきなりヒルマ様か演劇場を造ると言われて言われるがままに仕事していますがいいものですね。地下だと造形者が城の修復や工事をしているので関わったことはありませんでした。けど、形が少しづつ出来上がってくると達成感があります。」
それを聞いてレインも応えた。
「自分の能力がこういう形で活用できるのは本当に嬉しいですね。人間の世界も知らないだけで違う形でいろんなことができそうで楽しみです。」
『お前らはそれでいいのか?』
ノクターとレインは互いに見合いながらノクター先に口を開いた。
「魔物だからと言って限定的に生きてい行くのも窮屈になるときがあると。それに世界を知るのも悪くないと思いますよ。」
レインも応えた。
「魔物として求められていたから暗部の仕事をしてましたが、今ここで求められていることがあるって幸福だと思います。純粋にそれに応えられることって本当は少ないかと。だからこそ、今こうして仕事しているのは嬉しいです。」
アルヴァンは目を丸くしてしばらく黙り込んだ。二匹があまりにプロフェッショナルなことを語るので言葉を失ってしまった。そして、まっすぐな二匹に対してアルヴァンは改めて言葉を選び言った。
『そうか・・お前ら充分魔物らしかったんだな。』
アルヴァンの言葉に二匹は嬉しそうに微笑んだ。




