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第21話 アリッサVSアレクサンドラ

 クッパはダメージを受けて棄権となり、私が練習という事で彼の分も投げることになった。アリッサとアレクサンドラの気は張り詰めている。それでも、親切に私にボーリングを教えてくれていた。


「じゃあ、まずは、私が投げますね」


「マイグローブとマイシューズ、マイボールまで持っているということは、少しは期待してもよろしいのかしら?」


「得点を見て判断してくださいよ」


 アレクサンドラが先行して投げる。真っ直ぐだが、狙ったように真ん中へ引き込まれていき、全てのピンが一撃で倒されていた。ストライクという高得点の状態だ。得点数は全く表示されないが、後の者には圧力プレッシャーがかかることだろう。



「ふふ、ストライクです! 勝負は、もう付いたも同然ですかね? スペアでも、この差は後々に響きますから……」


「ふん、ストレートに投げてストライクなんて、運が良かっただけじゃない。私は、スピンを使って、全てをストライクにする予定よ。一本でも取りこぼしたら、あなたの敗北が決定するから、そのつもりで……」


「ああ、性格が捻じ曲げってそうですもんね!」


「ふん、挑発させてミスを誘う気? あなたの作戦なんて、お見通しなのよ!」


「くっ、『心を(マインド)読む(スキャン)能力』か……。本当に、厄介な能力ね!」


 アリッサは宣言通り、スピンでピンをバラつかせ、ストライクを取る。次は、私が投げる番だ。ぎこちないが、2人がしていたフォームを真似て投げて見る。


「確か、こうやって投げていたような……」


 見よう見まねでは、2人のようには上手くいかない。球が、脇へそれてガーターになってしまった。もう一度チャンスがある。それを思うと、ちょっとやる気が出てきた。


「ローレンちゃん、真ん中を狙うように投げるのよ。後、重い球の方が威力があるわ」


「あら、軽い球にして、スピンを使うという手もあるわ。親指を外せば、素人でもスピンになるはずよ!」


 2人のアドバイスが別れて、どうすれば良いのか分からない。バトルをするのは良いが、私の教え方にも闘志を燃やさないで欲しい。


「じゃあ、まずは、真ん中を狙って……」


 私は真ん中を狙って投げたが、途中でそれて5本程度になってしまった。


「ドンマイ! 初めてで5本なら、良い方だよ!」


 アレクサンドラは良いお姉さんに変わっていた。もうすでに、私が男の子じゃない事にも違和感を持っていないようだ。最初見た時から、男装していることがバレていたのであろう。


「自分が同じ状況だから、ローレンちゃんが男装しているのに気付いたのね?」


「何のことかしら? あの格好で男の子って、無理があるんじゃない?」


「ボーリングをしている姿を見たら、もろ女の子ね。必死な姿が可愛いわ」


「でしょう♡」


 私は、なんとかピンを8本まで倒せた。アレクサンドラの番になり、球を持つ。構えている姿がかっこいいと思ってしまうほどだ。今度も前と同じで、1発でピンを全て倒してしまった。ストライクとなり、得点は表示されない。



「やるわね。あなたも体を鍛えているのかしら?」


「ええ、親が体だけは鍛えるように訓練してくれたからね」


「そして、何か体に違和感が出ていたら、教えるように告げられたんじゃないかしら?」


「体の変化なんて、起きませんでしたよ」


「小さい頃は、ね……」


 アレクサンドラの顔が曇り始めた。最初は無表情な感じだったが、私に異変を気付かれないように作り笑顔をする。少なからず、アリッサの言葉が効いているようだ。


 それでも、動揺せずにストライクを連発させていた。アリッサも同様に最終レーンまでストライクを出し続けていた。


「やるわね。まさか、ここまで私と張り合ってくるとは思わなかったわ」


「私も、互角以上に戦えたのは初めてです。本当に、1時も気が抜けない……。これは、延長戦も考えないといけませんかね?」


「いいえ、このレーンで決着を付けるわ!」


「あっ、アリッサさんって、最終レーンに弱い人ですか? いますよね、最後にミスする人って……」


「あなた、このままじゃあ、結婚できないわよ?」


 アリッサの一言を聞き、アレクサンドラの顔から笑顔が無くなった。磁石でも付いているかのような正確なコントロールもなくなり、5本ほど倒して終了した。それでも高得点だが、アリッサには追いつけない。アリッサは、3回ともストライクを取り、勝利した。



(悪いわね。夜行バスの時間まで延長させるわけにはいかないのよ。だから、切り札を使わしてもらったわ。私も同じ立場だったから、その不安をあおれば、ミスすると思っていたのよ。今度は、純粋に勝負しましょう!)



「負けたわ……」


 アレクサンドラは、潔く負けを認めた。真剣勝負で負けたのだ。精神的に追い詰められるような方法で負けても、卑怯だとは言わない。


「では、キュッと」


 アリッサは、華奢きゃしゃな体の彼女に抱きついた。Eカップのオッパイと女の子特有の心地よい香りが包み込んでいた。グロリアスでさえ、この攻撃の前に撃沈したのだ。いくら女の子同士とはいえ、この攻撃はたまらない。


「きゃあ」


「ふふ、やっぱりね。性別が変わる能力でしたか。顔や髪型は変わりませんが、体付きが固くなり、オッパイも無くなっていますね。おそらく下の方には、立派な物があると思いますけど……」


 アリッサの言葉を聞くと、アレクサンドラはショックを受ける。今までは、自分と同じくらいに可愛いとか考えていたけど、それが女の子としての価値を一気に失ったように感じられたのだ。この事を拡散されたら、女の子としてはキツイだろう。


「いやああああああああああ、バレちゃった……。お父さんにもお母さんにも相談できなくて困っていたのに……。みんな、嫌だよね、こんな能力……。


 身体能力が上がるわけでもない。自分で希望すれば、男女どちらにでもなれるわけでもない。本当に、使えない能力なんだから……」


 アレクサンドラは、しばらくの間、崩れ落ちて泣いていた。確かに、コントロールができなければ、困った能力ではありそうだ。アリッサも彼女の能力を役立てれる方法を考えていたようだ。


「風俗関係なら、重宝しそうだけど……。夜は、女の子として生きて、昼間は、ホストとして荒稼ぎする。結婚した後なら、夫が望む姿でご奉仕できるとか……」


「それ、フォローになってません。確かに、男の夢かもしれませんけど……」


 一通り彼女が泣き終わると、その騒ぎを聞きつけてか、クッパが起き上がって来た。根性を振り絞り、ムリやり体を動かしているようだ。どうやら、今までの会話は聞かれてしまっていたらしい。


「クッパ君……、ダメ……、汚れた私の体を見ないで!」


「可愛いよ。どんな姿をしていても、アレクサンドラ・ウィルは、超可愛い♡」


「本当に、嬉しい……」


 クッパは、泣いている彼女にそっとジャンパーをかける。いつになくかっこいい姿に、コイツ、次の話では死ぬんじゃないかとさえ思わせていた。アリッサは、夜行バスに乗るように指示を出す。そこで、彼女と私の特訓をするようだ。



「本当は、あなた達の関係を上手くいかせる気なんて無かったけど、超能力者タイプの魔法なら話は別だわ。今ので、クッパの覚悟も見れたし、遊びじゃないことも確認できた。


 私が、彼女の修行に協力してあげる。夜行バスが山の麓へたどり着く頃には、自分の意思で変化できるようになるはずだわ」


 こうして、私達は夜行バスに乗り、山の麓を目指して移動する。彼女に必要な修行とは、どんなものなのだろうか?

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