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第20話 アレクサンドラの異変

 私達は、食事を終えて、映画館へと向かう。そこまでは問題なかった。映画のチケットを買い、席を取ろうとした時、アレクサンドラの態度が変わる。アリッサの腕に彼女の腕が当たった。隣の席だから普通の出来事だ。



「あ、私、気分が悪くなっちゃった。ちょっと早めに出るね。みんなは、映画を楽しんで見ていてね。じゃあ、外で待っているから……」


「ええ、始まってもいないんだけど。大丈夫、一緒にいようか?」


「ううん、クッパ君は、残って映画を楽しんで……。私、外でお買い物しているから終わったら映画館の出口のところで待ってるね」


 アレクサンドラは、そそくさと映画館から出ていった。クッパは、この異変の事を言っていたようだ。突然、理由もなく、自分から離れる時がある。かと言って、嫌われているわけでもなく、律儀に待っているそうだ。



「アリッサさん、これは一体……」


「黙って、映画が始まるわ! 大方、あなたの息が臭いとか、そんな理由でしょう。まあ、映画が終わって、彼女に見捨てられていなければ、理由を聞かせてあげるわ。」


「分かるんですか?」


「いえ、映画が始まる前に賢者タイムに入っていたから、全然。ネタバレを喰らうわけにはいかないのよ。 これが、私の魔法(心を読む能力)の危険な所なのよね。スタッフとか、何度も来ているイカれた客とか、迷惑も良いところだわ!」



「知りませんよ。スタッフも悪気はないですし、客も付き合いで死んだ目をして見てるんですよ。彼女が見たかったとか、事前の準備とか……」


「あなた、人が多くて気付かなかったけど、2度ほど見ているわね……」


「ええ、エッチなシーンとかが出て来たら気まずくなりますし……、全部ダメになりましたけど……」


「おっと、オシャベリタイムはここまでよ!」


 私達は、食い入るように映画を鑑賞する。ビルの上から落ちてもにゃんぱらりで無事な主人公がカッコ良かった。最後は、にゃんぱらりからジャンプをして、敵を倒していた。2時間とは思えないくらいの濃い内容だった。



「ふー、面白かった! 息するのを忘れちゃったよ」


「確かに、この映画を観ないなんて、あなたの彼女イカれてるわ。これなら、2、3度くらい見ても楽しめるわよ。


 最初の1回は、ストーリーを把握して、2度目で女優のセクシーさを愛でる。3度目でビルや建物などの臨場感りんじょうかん驚愕きょうがくできるのよ。2度くらいなら、普通よ、普通」



「フォローしてくださり、ありがとうございます。それよりも、彼女の異変は何なんですか?」


「ふー、賢者タイムも終了したわ。これなら、会うだけで謎は解けちゃうかな?」


「ええ、解決できそうなんですか?」


「探偵レベルなら、グロリアスよりも私の方が上なのよ。さあ、さっさと迎えに行くわよ」


 私達が映画館を出ると、アレクサンドラが待っていた。可愛い彼女を演じ、何事もなかったようにデートを続けようとする。そこを、アリッサの鋭い目が睨みつけていた。彼女は、アリッサの威圧感によって、びっくっと動揺していた。



「クッパ君、映画はどうだった? 私、体調が良くなったから、デートが続けられるよ。次は、ボーリング場だっけ? すっごく楽しみ♡」


「ふーん、なるほどね。これは、グロリアスじゃあ、解決し難い問題だったわ」


「あっ、ボーリング場に行きがてら、映画の内容を教えてよ。私には、それで十分だから……」


「ああ、そういう事なの?」


 アレクサンドラは、アリッサを警戒しながら、クッパと腕を組んで歩き始めた。私は、アリッサ探偵の推理に耳を傾ける。


「分かりましたか、アリッサ探偵?」


「ええ、彼女も同じ映画を2度ほど見ているようね。映画の盛り上がった部分とかで、彼らの話が合うんじゃないかしら……」


「おお、クッパの努力も無駄にはならないみたいですね」


「でっ、彼女の異変については?」


「うーん、女の子が身体的に悩むような魔法を持っているわけよ。しかも、自分では全く訓練してなくて、制御できない厄介な能力をね。彼女的には、クッパには絶対に教えたくないみたい。おそらく過去に何か傷付けられたわね。


 これは、アリッサお姉さんが本気を出す必要があるかしら? クッパとアレクサンドラがただイチャラブしていただけなら、適当に引っ掻く回して別れさせてやったんだけど……。状況が変わったわ!」



「適当に引っ掻き回してやろうとしていたんですね?」


「さあ、急ぐわよ! ローソン(ローレン+ワトソン)!」


「そんなコンビニみたいな名前で……」


 私とアリッサは、バカップルを装っている男女の後を付いていった。どうやら、アレクサンドラの心の闇は深いらしい。私達が後を追って行くと、睨み付けるように見つめてきた。ちょっと涙を浮かべているようだ。そんなに嫌われる理由もないのだが……。



「アリッサ探偵、貰われてきた猫みたいな表情をしています。元の家が良かったのに、ムリやりこんな場所へ住まわせやがって……、みたいな」


「ヤバイわね。さっきまでなら油断もしていたようだけど、これからは近づく事さえ難しそうね。そうなると、クッパの存在が邪魔だわ!」


 アリッサは、指を鳴らして戦闘態勢を取る。このボーリング場で、クッパを亡き者にする気なのだ。そんな事とはつゆ知らず、クッパは上機嫌で彼女と語り合っていた。見てもいない映画の内容で盛り上がっていたが、彼がそのことに気が付くこともなかった。



 ボーリング場に着き、各々準備をする。私とクッパは、ボーリングシューズと球を選ぶだけだが、他の2人は違っていた。マイボールとマイシューズを預けてあり、さらに手袋まではめる。


「ほう、少しはやるようね」


「ええ、こう見えても、ボーリングは得意なんです」


 2人の目に火花が散り始めた。最初はクッパが投げて、8ピンほどを倒していた。そして、スペアを取る。彼もボーリングは得意な方だと言う。調子に乗り、アリッサに勝負を仕掛けてきた。


「アリッサさん、俺が勝ったら、今日は帰ってもらうよ。俺とアレクサンドラならば、ラブラブ状態のようだし、どんな問題でも克服できるさ。2人でじっくり、今後の将来を決めて行く気だ。あなた達の協力に感謝しますよ」


「もう、クッパ君たら、大胆なんだから……。もうそれ、プロポーズも同然の宣言じゃないの……」


 2人はラブラブ状態を続けていたが、アリッサの鋭い手刀がクッパを襲う。格闘スキルを備えた彼女ならば、彼を気絶させることなんて容易だった。体に傷を付けず、気絶だけさせたようだ。アレクサンドラの悲鳴がボーリング場内に響き渡った。


「テイ!」


「いやああああああ、何をするの? 確かに、クッパ君が生意気な挑戦をしてきたのは認めるけど、ここまでする必要はないじゃない。これじゃあ、数時間は動かないわよ」


「ふう、それもあるけど……。あなたの為よ。あなたの体、このままの状態にしておくのがダメなのは、あなたが一番分かっているでしょう。今日は、クッパに気付かせなくて済むだろうけど、付き合う時間が長くなっていけば、傷付くのはお互い様よ。


 あなた、私と同じ超能力者タイプでしょう? しかも、訓練もされず、そのまま放置されて制御できないタイプの。両親が必要と思わなければ、訓練なんてさせてくれないからね。いいえ、両親さえも気付いていないのかしら?」


「何を、言ってるんですか?」


 アリッサは、アレクサンドラに触れようとするが、彼女は激しく拒絶した。どうやら、他人には容易に話せない内容らしい。


「ふー、超能力者タイプに多い特徴ね。超絶可愛いのに、男性経験がなかったり、他人に容易に心を開こうとしないところとか……。なら、ボーリングで得点の高かった方が言う事を聞くというルールで勝負しましょうか?」



「良いですよ。私、かなり強いですよ。私が勝ったら、今日はもう帰ってもらいます!」


「OK、私が勝ったら、あなたの体を触らせてもらうわ」


「え、レズなのかしら?」


「ふふ、じゃあ、オッパイに触ろうかしら?」


 こうして、アリッサとアレクサンドラのボーリング対決が始まった。私は、キモい顔で倒れているクッパを見ながら、ドキドキしていた。初めてのボーリングで緊張していた。上手く投げれるかな?

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