182 楽園構想
鬱蒼とした熱帯雨林が地平線の向こうまで生い茂る広大なジャングル。それを真っ二つに区切るように川幅数百メートルはあろうかという大河が蛇行している。
ここはダンジョン26階。通称、“獣牙の樹海”と呼ばれる熱帯エリア。その河原では数千にわたる冒険者が集い、酒を飲みながら祝杯をあげていた。
中央には大型バスほどの巨大な肉塊が鎮座しており、料理人によってブロック状に切り分けられている。これは“トゥルッフ・トゥルウィス”というイノシシ型フロアボスのドロップ品。1kgほどに小分けされた肉塊は次々に串に通して火にかけられると、食欲をそそる脂の匂いを一帯に広げた。ビールを片手に持った冒険者達も歓喜の声を上げて戦利品を待ちわびる。
そんな騒がしい様子を、一段と高い場所に建てられた天幕から眺める者達がいた。オレンジ色の篝火に照らされたメイド姿の女が、微笑を湛えて口を開く。
「ダンジョン深層のフロアボスとて、我ら十羅刹の手にかかればあの通り、食材になる他ありません。ドロップ品の肉は大層美味とのこと。同じ重さの黄金よりも価値があるそうですよ」
「……」
メイドが野菜に彩られた肉料理を指差し「お食べなさい」と勧めたのは、瓜二つの姿をした同じメイド姿の女。顔の作りや体型は細部まで非常に似ているが、表情は打って変わって険しい顔をしている。料理に口を付けるどころか目もくれず、睨みつけるような視線を返すばかりである。
そしてここにはもう一人。肥大した筋肉を見せつけるように上半身をはだけさせた坊主頭の男がいた。肉を豪快に食いちぎりながらその味に感嘆の声を上げる。
「何度喰っても美味ぇわ! やっぱ脂が違うんかね。んぐ……んでよぅ隊長さん。7階新エリアの城塞は調べてみたが弱っちぃゴーレムがいるくらいで何も見つからなかったぜ」
「ご苦労様です、皇諦。では金蘭会は、単に訓練用の施設を作ろうとしていただけでしたか……」
皇諦という男の報告を聞いて、隊長と言われたメイドが唇に指を当てて考え込む。
数十年ぶりに見つかったダンジョン新エリア。そこに金蘭会が拠点を建てようとしていた。何か秘密があるのかと思い、調べるよう要請したものの何も出てこなかったという。探索時間が短すぎただけの可能性もあるため「次は下部組織に時間をかけて調べさせるべきでしょうか……」と独り言ち、他に何か気付いたことはないかと続けて問う。
「どいつもこいつもゲート探しに躍起だった……あ。そういや貴族のクソガキ共に絡まれて喧嘩を売られたな」
「殺したのですか?」
「そうしてやってもよかったが、ガキの仲間に面白そうな奴がいてよ――」
高慢貴族のボンボンがあろうことか“羅刹”である皇諦に矢を放ったという。撥ね返して殺してやろうとしたものの、見えないバリアのようなもので見事に防がれたと毛の無い頭を撫でながら笑って報告する。
しかし皇諦のカウンタースキルは高位冒険者でも防ぐことは難しく、初見でならなおさらだ。となると相手側に相当の手練れがいたことになる。
攻撃されたなら二度と同じことが起きぬよう死をもって償わせるのが羅刹の流儀ではあるが、ごった返している場所で高位冒険者同士がなりふり構わず暴れることはメイドとしても避けたく、殺さなかったことには「賢明な判断です」と返すしかない。
「増長した貴族は百害あって一利なし。一刻も早く排除したいところですが……それを成すにも我らは一段と高みへ登らねばなりません」
そう言うと再び外へ目を向けるメイド。そこには数千もの冒険者が飲み食いし、笑い声を上げて騒いでいる。彼らはこのエリアに生息する名高いフロアボス“トゥルッフ・トゥルウィス”を難なく倒し、確かな力を誇示して見せた。
しかも眼下にいるのは組織の一部隊に過ぎず、より強力な本隊はクランリーダーの鷹村楓が別件で率いている。これほどの戦力を持つ組織は日本にはないと、己と瓜二つのメイドに向かって誇らしげに言うが、何を思ったのかすぐに眉を下げて首を振るう。
「だからといって何もかもを自由にする力はまだありません。長き戦いが続き、組織を率いる羅刹にも数名の欠員がでてしまっています。百合香にはその穴を埋めてもらおうと考えていたのですが……まだ力が足りてないようですね」
「私は羅刹になるつもりなど――」
「だが、アンタはこの上なく適任なんだよなぁ」
大規模攻略クラン・十羅刹は創設以来、羅刹と呼ばれる十人の大幹部が中心となって運営されていたが、度重なる抗争により現在は二人の欠員がでてしまっている。それでも長い選考の末、次期羅刹として一人は内定している。
他の羅刹と比べるとやや力は劣るものの、今回のゲート探索において集団を統率する経験を積ませ、“ゲート新発見”という誰もが認める手柄を持たせてから、大々的に宣伝する予定だという。
そして険しい顔で座っている百合香と呼ばれたメイドこそが最後の羅刹候補。そう打ち明けられると本人は話にならないと拒絶の構えを見せるが、横で聞いていた坊主頭がすぐに割って入る。
「“黒崎”の名は、十羅刹において特別な意味を持つ。その血が通っているだけで俺らは従う価値を認めるんだぜ」
この世界に初めてダンジョンが現れた大正時代末期。
当時は光を反射しない真っ黒い入口と、異形の生物が跋扈する薄暗い内部の様子に人々は気味悪がり、【聖女】パーティー以外に近づく者はいなかった。日本の歴史書にはそのように記録がなされている。
だが実際には【聖女】以外にも果敢にダンジョンに挑む者がいた。ダンジョンの近くに建てられていた古びた児童養護施設――いわゆる孤児院の子供達だ。
大人の目を掻い潜ってはダンジョンに入り、対モンスターやフロアボスの戦略を立てつつMAPを作成し、それらすべてを“黒崎アヤメ”という小さな少女が行っていたのだから驚きである。
その後、アヤメが口にするのもはばかられる暴力の嵐の中で立ち上げたのが“十羅刹”という日本最古のクランだったわけだ。メンバーも最初こそ孤児院の子供達だけだったが、日本中の孤児を際限なく取り込み、おまけに社会であぶれた落伍者の受け皿にもなり、今日まで多くの人々を救ってきた実績と歴史がある。
「十羅刹というデケェ家を、何代にも渡って陰から支えてきた随一の功労者、黒崎家。俺も含めてあんたらに流れる血に命を救われたって奴は数えきれねぇほどいる」
貴族同士の権力闘争は大戦前後も現在であっても常にあり、犠牲になるのはいつも庶民。政府も貴族の意見ばかりに耳を傾け、弱き者達の叫びなど聞き入れられることはなかった。代々の黒崎家はそうやって生まれた犠牲者を広く受け入れ、今や十羅刹の重要な核メンバーとなっている者も多い。何を隠そう皇諦も黒崎の思想に救われた一人なのだと打ち明ける。
そしていつの間にか拠点周囲には街が形成され、巨大な経済圏を成すまでに発展した。そこに住まう者も十羅刹、より正確に言えば黒崎家の思想の恩恵に与っているといっても過言ではない。黒崎という名は十羅刹において計り知れないほどに大きな意味を持つのだ。
話を戻せば、険しい顔で眉間に皺を寄せているメイド、黒崎百合香も歴とした黒崎家の一員。このゲート捜索隊の総指揮を執る十羅刹ナンバー2、黒崎莉々愛の双子の妹でもある。貴族連合との闘争が続く中で組織を再建し、さらなる飛躍を狙うならば、百合香は新たな羅刹候補としてこの上なく最適な人選だと皇諦が強く力説する。
姉の莉々愛もゆっくりと頷き、優しく包むような眼差しで妹に今後の予定を告げる。
「まずは精鋭を集めてパワーレベリングを行いましょう。機を見て新たに部隊を授け、それから――」
「――また可哀そうな子達を見捨てろと?」
「あれは仕方のなかったことなのですよ」
元々、十羅刹の部隊長だった百合香がクランを抜けた理由は、任務中に危機に陥ったことが発端だった。
抗争中の組織に急襲され、与えられていた部隊を見捨てて自分だけ帰還石で逃げろと命令がきたときのことだ。もちろん拒否し、その場で部下の逃げ道を作ろうと留まることを選んだわけだが、十羅刹としても黒崎家に名を連なる者を死なせるわけにはいかない。そうなれば士気はガタ落ちになり、組織全体が危うくなるからだ。
十羅刹幹部会は急遽、救出隊を創設。電撃的に送り込んで百合香を救うことはできたが、その救出隊は半壊。残された百合香の部隊もあえなく全滅した。あまりに悲惨な結末に自身の愚かな判断と弱さを嘆き、同時に非情な判断を下した組織に失望し、去ることを決断したのであった。
だが百合香はその先で新たな居場所を見つけることができた。
温かく前向きな主と出会い、同じように傷ついた部下達も得られた。初めて経験する安寧な世界。薄汚れた自分がそんな眩しく温かい場所で生きてもいいと知り、一瞬一瞬を噛みしめるように過ごしていたわけだが……過去が無くなるわけでもない。
十羅刹が武力をチラつかせて天摩家を圧迫したのだ。百合香は自分がいると命よりも大切にしている主を傷つけてしまうと考え、闇の世界に戻る覚悟を決めて今に至る。
そのような経緯から態度を硬化させる妹に、姉はできるだけ柔らかい口調で譲歩案を出しながら諭そうとする。
「――もちろん、貴女を保護してくれた天摩家には十分に報いることを誓いましょう。今ごろ新たな羅刹候補である白水が、貴女の主だった女と上手く交渉をまとめてくれているはずです」
「……お嬢様の身に何かがあれば、背後にいる大いなる存在が許さない」
「またそれですか……安心してください。対応している白水には天摩家の士族程度なら不殺で抑え込む程度の力量くらいあります。それに我らとしても天摩家と事を構えようなどと思ってはいません」
天摩家を脅すようにして強引に連れ戻したことは謝罪するし、百合香を保護してくれていたことへの見返りも十分なほどする。十羅刹としても日本最大の武具メーカーである天摩家とは、たとえ貴族であっても良い関係を築きたいと考えている。
そうまでしてでも連れ戻したかった。所在は以前から掴んでいたが躊躇っていた。しかし十羅刹の悲願、黒崎アヤメの理想を叶えるためにはどうしても百合香が必要だった、と莉々愛が目を伏せながら胸の内を吐露する。
だが百合香は目つきをより鋭くし、態度を軟化させない。
「その理想こそがゲート探しだと?」
「そうだ。ゲートがありゃ戦力を大幅強化でき、理想も叶えられる。まだいくつかしか見つかっていないが、俺らは情報の質と動かせる戦力で抜きんでている。果てしなく優位な状況だ」
熱望するように未来を語ってくる姉に、冷ややかな視線で言葉を返す百合香。それに答えたのは肉を一通り腹に入れて口を拭く皇諦だ。
ダンジョンダイブにおける最大の障害はモンスターではなく、移動時間だ。十羅刹ほどの高位クランの冒険者は狩場の30階に到達するだけでも2ヶ月。往復でその倍の時間がかかる。それを大幅に短縮させるのがゲートである。
もし仮に他より先んじてゲートを押さえられるのなら、どこよりも早く飛躍的に戦力を強化することができる。政府が握っている情報は優先的に流してくれるという密約も手に入れた。加えて戦力面で最も充実している十羅刹が他に遅れを取る理由はない。
本来ならゲート情報はカラーズが独占していたのだが、勝手に内部崩壊し自滅してくれた。これもまさしく天恵に他ならないと皇諦が豪快に笑い飛ばす。
「それだけではありません。我らには魔法陣の解析と探知に特化した持瓔珞もいますので、ゲート捜索において他クランの追随を許しません――丁度、帰ってきましたようですね」
莉々愛が補足している最中に扉が開く音がした。この天幕は羅刹の許しが無ければ入ることは許されない特別な場所。そこへ許可もなしに入ってくるというなら同じ羅刹しかない。
入口にある薄い布の仕切りがめくられると、黒基調のゴシックドレスを着た少女が、青のアクセントが入った銀髪を揺らして跳ねるように入ってきた。羅刹が一人、持瓔珞である。
「……ぷぷっ、ただいまでありんす!」
普段は濃いメイクのせいで表情が読みにくいのだが、よほど面白いことがあったのか笑いを堪えるかのように表情をコロコロと変えている。いつもと違う様子に莉々愛と皇諦が互いの顔を見合わせるも、まずは労いの言葉をかけるべく口を開く。
「お疲れ様です、持瓔珞。予定よりも随分と早い帰りでしたが……交渉が上手く運んだということでしょうか」
「天摩家とはもう全部話がついたのか?」
新たな羅刹候補である白水祥吾には、百合香を正式な手順で十羅刹に戻すべく、天摩家と交渉に当たらせていた。見返りとして天摩家へは多額の資金と情報を援助。それだけでなく今後も十羅刹が後ろ盾となるという破格の条件まで提示した。
言うまでもなく十羅刹は大貴族や大規模攻略クランであろうと一目を置かざるをえない日本最大規模の攻略クラン。そんな存在が背後に付くというなら、いくら金満貴族の天摩家であろうと話を呑むに違いない。
そして持瓔珞は魔法陣だけでなく契約魔法の専門家でもある。取りまとめた交渉結果を高度な魔法契約書に写すため白水のサポートとして向かわせたのだが……すぐに帰ってきてしまったのだ。それならば話が難なく進展し、すんなりと契約が締結されたのだろう。
この成果についても白水の手柄とし、箔を付けさせようかと莉々愛が考えていると、持瓔珞はおもむろに腕端末の画面をタップし映像を見せてきた。多少の時間を要したもののそれが衝撃的な映像だと理解し、自信に満ちていた莉々愛の目が大きく見開かれる。
白水が側近の女と一緒に縛られている映像だ。
武具はボロボロに破壊され、衣服も破られ穴だらけになっている。おまけに青あざだらけの顔には黒いマジックペンで所せましと落書きが描かれていた。これには皇諦も度肝を抜かれるしかない。
「おいおいおい、待て待て……こいつぁ白水の野郎か!?」
「派手にやられてるでありんす! これであの高く伸びた鼻も少しは低くなりしんたね? ひひっ」
色々な角度から撮ったからもっと見てくれと嬉々として腕端末の画面をスクロールし突き付けてくるゴスロリ少女。白水と彼女は昔から折り合いが悪く、新たな羅刹に選定されるときも声高に反対していた。そんな間柄の弱みを握れたと過去に見たことがないくらいにはしゃいで上機嫌になっている。
だが白水は千に届く冒険者を従え、曲がりなりにも十羅刹の大幹部になる男。これまでも死線を潜り抜けた数は一度や二度ではなく、貴族との闘争でも強敵を屠って名を上げてきた。莉々愛は信じられないと首を振りながらも、映像を凝視して何が起きたのかを今一度推測しようと思考をフル回転させる。
「それほどの……いいえ。天摩家の士族はこの目で確認しましたが、羅刹を倒せるほどの魔力の持ち主はいませんでした」
「あの野郎は俺ほどでないにせよ、そこらの雑魚が束になっても軽く蹴散らせるくらいの力はあるし知能もある。それなのに……相手はどこのどいつだ?」
ただ単にやられたわけじゃない。白水の状態をよく見れば重症ではなく、ポーション1つで治る程度に抑えられている。つまりこれは“加減された”ことを意味している。映像の奥には数百を超える白水傘下の部隊も丸ごと不殺で転がされているが、そのようなことを可能とする実力者となると非常に限られる。
まず最初に浮かんだのはカラーズの幹部連中だが、東京での失態により今は動ける状況にない。次に関西貴族連合の仕業も考えられるが、クランリーダーである鷹村を抑えるために主だった高位冒険者は関西に集結させており、とてもじゃないがこちらに回している余裕などないはずだ。
他の大規模攻略クランか。もしくは7階にいた高慢貴族の用心棒の仕業か。その他にも幾人かの実力者の名は思い当たるが、たとえそいつらであっても十羅刹に真正面から喧嘩を売るとは考えにくい。
――というように莉々愛と皇諦が画面を睨みながらあれこれと推測するものの、明確な答えには結びつかない。知っている可能性が一番高い持瓔珞に素直に問うが、肩をすくめて首を振るだけである。
「あでも、落書きに“EEE参上”と書かれているでありんすよ? ほらここ」
「……EEE……新興クランでしょうか。しかしどこの誰であれ、我らを舐めた代償は――何か知っているようですね、百合香」
顔に怒りを滲ませ、メイド服の裾を軽く握り潰しながら報復のあれこれを考える莉々愛であったが、静かな笑い声により思考が阻害される。その声の方へ皆が目を向けると、自信たっぷりに胸を張って冷笑する百合香がいた。
「だからいっただろう。天摩家の背後には、常識では測れない大いなる存在がいると」
「……ブラフではなかったのですね」
「で? どうすんだ、隊長」
そらみたことか、と言わんばかりに静かに笑って紅茶を一口含む妹メイド。最初から“大いなる存在”などブラフであると決めつけていた姉であるが、それが真実だと分かり再び思考の海へ潜ろうとする。だが皇諦にどう対処するのかと問われれば、大隊を率いる長として決断しなくてはならない。
「引き続き、ゲート捜索を優先します。天摩家と“EEE”なる組織については調査隊を設置。情報がある程度集まってから対応策を考えても遅くはないでしょう」
相手の目的は何か。天摩家に手を出したことか、それとも百合香を強引に連れ戻したことへの報復か。やられたのは末端の構成員ではなく、クラン運営に大きな影響を及ぼす羅刹。本来なら莉々愛自らが陣頭指揮を執って徹底的に報復に動くところだが、今はクランの未来を左右する大切な任務の最中。
すでに莫大な資金を投じており、貴族連合との抗争中にもかかわらず巨大戦力を動かすというリスクも背負っている。それに相手にそれほどの実力者がいるというのなら遅かれ早かれ相まみえる運命。楽しみにそのときを待っていれば良い。我々は前に進むことに専念すべきである。
そこまで部隊の方向性を説明すると、莉々愛はたっぷりと一呼吸置いてから皆に向かって語りかける。
「何も持たなかった創始アヤメが、虐げられる人々のために奔走し、救いの手を差し伸べたことで生まれたのが十羅刹です。後世に生きる我らは彼女の夢見た“楽園構想”を何としても叶えなければなりません」
「そうでありんすね、それこそがあたし達の悲願!」
「白水の野郎は俺が何とかして再起させるしかねーな」
黒崎アヤメが願った誰も悲しむことのない世界――“楽園”。それを実現させるには途方もない力が必要となる。時を重ねて仲間を増やし財を蓄えてきた十羅刹であっても、上のステージに上がるほどに抵抗勢力は手強くなり、理想に届くにはあとどれだけの時間と犠牲が必要になるのか分からないほどであった。
そこに、またとないチャンスが巡ってきた。夢にまで見た未来はもうすぐそこにある。莉々愛がそう鼓舞すると、持瓔珞は何度も頷いて呼応し、皇諦も決意を固めて大きな拳を強く握りしめる。
そして一人窓の外を見つめる百合香は、胸に手を当て小さく願う。
「……お嬢様を……頼んだぞ」
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