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幼なじみに「どうせ押し倒す度胸もないくせに」と散々煽られたので、朝チュンしてやった  作者: 本町かまくら


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第24話 ふたりだから、つまり


 大型ショッピングモールにやってくる。


 ちなみに今日の予定は一切聞かされておらず、眞白の完全主導。

 黙って眞白についていき、最初にやってきたのは映画館だった。


「へぇ、映画見るのか」

「何、不満?」

「いや、眞白と一緒ならどこでもいいよ」

「っ! よ、よくも平気な顔で……そんな安い言葉で私が喜ぶとでも思っているの? 呆れるわね。私を見くびって……な、舐めるのも大概にしてほしいのだけれど」


 とか言いながら、割と照れてますけどね。嬉しそうですけどね。かわいいですけどね。それはいつもか。いつもでした。


「見る映画は私が決めるから」

「どーぞ」


 眞白の後ろについていき、チケットの購入まで済ませる。

 ちなみに、見ることにしたのは間もなく上映の洋画の超大作だ。


「ちょうどいい時間だし、何よりあの迷いのない選択……眞白、事前にリサーチしてただろ」

「ま、まぁ。こういうのでモタモタしたくないもの。兼助と違って」

「俺がいつした。いや、似たようなことはいつもしてるけど」

「いい反面教師だわ。どうもありがとう。ただ、それによって迷惑しているのは私だから、今回も形式的なものに留めて……」

「いいから。もう補足いいから」


 俺が制止すると、眞白は不機嫌そうにぷくーっと頬を膨らませた。

 そして、ついてきなさいと言わんばかりに歩き始める。


 足を止めたのは、フードコーナーだ。


「いらっしゃいませ。ご注文は……」

「キャラメルポップコーンのLLサイズとチュロスが二本。ストロベリーとチョコを一本ずつで。あとナチョスに、烏龍茶とキャラメルフラペチーノをひとつずつ。ドリンクはMサイズで」

「かしこまりました」


 ふぅ、と一仕事終わらせた風の眞白。


「おい頼みすぎだろ。昼前だぞ?」

「昼前だけど、何か」

「それ以上でもそれ以下でもないだろ……ってか食べ切れるのか?」

「食べられなかったら兼助が綺麗に全部食べてくれるでしょ? 私、食べたいものがたくさんあるの」

「お、お前なぁ……」


 呆れて言うと、眞白が不敵な笑みを浮かべて挑発するように言った。



「私の彼氏なのに、彼女のこんなかわいらしいお願いも聞いてくれないの?」



「っ!!」

「兼助の私に対する愛はその程度なのね。残念だわ」

「……ほんと、眞白はズルいな」

「賢いと言ってくれると嬉しいのだけれど」


 ほんと、眞白には敵いそうにない。


 それから、眞白は自販機でアイスも買い、山ほど俺に持たせて席に座った。

 

「こっちも超大作か……」

「は?」


 眞白に冷ややかな目で睨まれながらも、上映開始。

 内容は普通に面白く、となりで甘いものをもぐもぐ食べている彼女も時折見てはかわいいなと思いながら楽しんだ。


 終盤には山盛りにあったフードもすべて食べ終え、ふたりとも映画に集中。

 そんなとき、不意に肘掛けで腕が触れ合った。


「「っ……!!!」」


 映画から現実に引き戻され、暗い中眞白をちらりと見る。

 ちょうど眞白も俺の方を見て、目が合った。


 しかし、ぷいっとそらされる。

 だが腕はそのままで、率直に手をつなぎたいと思った。今のこの雰囲気なら、いけるんじゃないかと思った。


 そっと手を近づける。

 わずかに指と指が触れ合った――そのとき。



「「っ!!!!」」



 響くデカい音に驚き、咄嗟に手が離れる。


 それから眞白はお利口さんのように手を膝の上に乗せ、少し緊張した面持ちでスクリーンに目を向けていた。


 だ、大チャンスだったのに……。


 結局、映画が想像以上に面白くて上映後は感想に熱が入った俺たちだった。




















 それからも、デートは続き。


 俺のモヤモヤとは裏腹に、想像以上にデートを楽しんでいた。

 引き続き眞白主導で進み、映画の後はお昼時のためレストラン街へ。


「何でもあるな……すごいなモール。さすがはモール」

「まったく、はしゃぎすぎよ。これくらい別に珍しくないわ」


 なんて言っていた眞白だが、その三分後には、


「こんなにスイーツの種類があるなんて……一日じゃ足りないわ。これは何日かに分けて、しっかりとデータ収集を……え、限定モンブラン? 一日十食限定⁉ なんて売り方を……くっ……!」

「はしゃぎすぎだろブーメラン」


 ただ、見ることを散々楽しんだ後、いざ昼ご飯を食べようとしたのだが……。


「……なぁ、眞白」

「……何よ、兼助」

「多分今、俺たち同じこと考えてるよな」

「誠に遺憾ながら、そうでしょうね」

「……普通にお腹いっぱいだよな」

「……まぁ、そうね」

「…………ほら言ったじゃん」

「…………うるさい」


 結局、昼ご飯は食べなかった。

 

 気を取り直して、それからはウィンドウショッピング。

 主に眞白の服を見て回り、全部に「可愛い」「似合う」と言っていたら怒られた。


 本当のことを言っただけなのだが、やはり俺は女心を分かっていないらしい。


「……ほんと、仕方がないわね。これからは私が直々に、じっくり教えてあげる」

「眞白……!」

「でも私、教え方が厳しいことに定評があるの。スパルタだから、覚悟しなさい」

「えぇ……」


 また、たまに俺の服を見ることもあり、眞白があれを着てこいこれを着てこいと指示。命令通りに試着すると、眞白はいろんな角度からふんふんと眺め、


「意外に似合うわね……こっちのパターンもありだわ」

「パターンってなんだよ」


 どうやら俺の着せ替えをするのが楽しいらしく、それからとにかく試着させられた。あと、買わされもした。


 その後は眞白が目星をつけておいたカフェで休憩し、また雑貨屋やインテリアショップなど、眞白のあとをついて行き……。


 あっという間に時間は流れ、気づけば夕方。


 馴染みある最寄り駅に到着し、ふたり並んで帰り道を歩く。


「今日はありがとな。楽しかった」

「……そ。ま、まぁ……私も、楽しかったけれど」


 相変わらずな眞白に、思わず頬が緩む。


 本当に、今日は楽しかった。

 恋人と、眞白とデートすることがこんなにも幸せで、満たされるなんて……終わり際なのに、もう次のことを考えてしまう。


「次はどこ行く?」

「気が早いわね。そんなに私とデートしたいの?」

「したいよ。それに眞白、俺の夏休みの予定を埋めてくれるんだろ?」

「っ! ……そうね。可哀そうな恋人のために、仕方なく遊んであげるわ」


 それから、夏休みに何をしたいか途切れることなく話した。


 海に行ったり、花火大会に行ったり、水族館に行ったり、動物園に行ったり。広い公園を散歩したり、ピクニックしたり。ちょっといいレストランで夕飯を食べたり、眞白のスイーツ巡りに付き合ったり。日帰りで小旅行したり、普通に家でゴロゴロしたり、また映画を見たり。


 話すだけでも、想像するだけでも楽しくて、幸せだった。


 ……俺はほんと、何に悩んでいたんだろう。

 答えはもっとシンプルで、簡単なことだったのに。


 いつの間にか俺と眞白の距離は近づいていて、時折手が触れていた。

 最初はビクッと反応していた眞白だが、徐々に馴染んでくる。


 動きに合わせて、触れては離れるを繰り返す。

 やがて、きっかけもなく眞白の人差し指に手を伸ばした。


「っ……!!!」


 顔をほんのり赤らめ、手を引っ込める眞白。

 しかし、少し経って手を元の位置に戻し、また触れ合う。


 今度は確かに触れ、眞白の手を握り、指を絡め、そして――つないだ。


 ふたり手をつないで、歩き慣れた道を歩く。

 見知った風景なのにまるでいつもと違うような、そんな不思議な感覚があった。


「……ごめんなさい」

「なんだよ急に」

「だ、だって……私、こういうこと避けていたから」

「眞白……」

「兼助がしようとしてくれていたのは分かっていたの。そもそも、私たちはこれ以上のことを……し、しているわけだし」

「そう、だな」

「……でも、兼助と付き合ってから変に意識するようになって……元々、あまり得意ではないのよ。こういう……こと、は」

「見てれば分かるよ」


 わかっていたから、そのことを問い直したから新しい結論を見つけることが出来た。


「あ、あれよ? 別に不得意なだけであって、その……したいとは思っているの。兼助に触れたいし……触れられたい。本当よ」

「……うん」

「でも、体が思うように動かなくて、気持ちとは正反対のことをしちゃって……私、ずっと体が心に追いついていないの。だから……」


「大丈夫だよ、眞白」


 沈んだ表情の眞白に手を差し伸べるように、俺は微笑んだ。


「大丈夫なんだよ、ほんとにさ」

「な、何が大丈夫なのよ」

「俺たちのペースで進んでいけば大丈夫だ。一緒に追いついていけばいいし、その間も間違いなく、疑いようもなく俺は、俺たちは幸せだから」


 何を今さらジタバタすることがあるんだ。

 俺たちはもう幸せなんだ。その強さを、今日知ったから。


「確かに色々順序がおかしいし、その……二回も俺たちはシてるわけで、それからしたら変なのかもしれないし、変だと俺も思ってたんだけどさ。でも、もう“ふたり”だから。今みたいに並んで、俺たちのペースで歩いていけばいいんだ」


 確信をもって、眞白に告げる。

 眞白は俺を見て、俺の手をぎゅっと握った。


 俯いて、口をきゅっと引き結んで、顔を上げて呆れたように笑った。


「……そうね。私たちのペースで、ずっと」


 手をつなぎ、歩いていく。


 “ふたり”で、歩いていく。


 誰がどう思おうが何と言うが、この道は俺たちだけのものだ。


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