page 6 -突然の誘いー
愛実が東京に帰った後、みゆうはしばらくここ海の家潮騒に姿を見せなかった。
彼女がいつも波乗りの練習をしている場所に行っても彼女の姿は見えなかった。
俺は彼女に会えないその1日1日を長く感じていた。みゆうに会いたいな〜。まじで・・・。
風邪でもひいたのかな?怪我でもしたのかな?
そんな日が続いてしばらくした後、彼女はここへやってきた。
俺はまじで嬉しくって彼女と早く話しがしたかった。
そん時の俺は顔が赤かったかもしれないな・・・。信じられないけど。
「拓斗〜!」
「みゆうさん!おっす、ひさしぶりっす!」
「みゆうちゃん!ひさしぶり〜」「みゆうさん!」
バイト仲間の康さんや涼平さん、俊さん、そして雅弥がみんな挨拶をしていた。
「よ〜!みゆうちゃん!」「あ〜おやっさん!おひさ〜」
「みゆうちゃんがしばらく海に来ないなんて珍しいね?どっか怪我でもしたか?」
「う〜ん、怪我はしてないよ、ちょっと風邪ひいちゃって・・・」
「風邪?珍しいね、いつも元気印いっぱいのみゆうちゃんが風邪なんて・・・」
「康さんは、ばかは風邪ひかない!とでも言いたいんでしょ?」
「そうは言ってないよ・・・」
「あはは、康さんたら・・・、おもしろいの〜」
そこにはいつもの海憂がいた。俺はそんな彼女を見てホッとした。
ただ、康さんはそうは思ってなかったみたいだけど・・・。
そん時、康さんがつぶやくように小さな声で言ったんだ。
「みゆうちゃんは風邪ひいても怪我をしてても練習だけはさぼらなかったんだけどな・・・」と。
嘘ついちゃったな・・・。私は風邪なんかひいてなかった。
あの朝、拓斗と彼女を見かけたあの朝から心が重くって辛くって海に行くのも嫌だった。
それになによりも拓斗を見るのが辛かった。
拓斗の横になぜ私は並んでないんだろ?なんであの子が拓斗の横に居るの?
なんで、拓斗の横に私は居ないんだろ?そんな事をずっとずっと強く強く思って、ともかく彼に会うのが辛かった。
それだけだった。
これまで、私の横には圭が居て、彼の存在が大きくて彼以外の男の人なんて目にも留まんなかったけど拓斗は違った。
いつの間にか、拓斗の存在は私にとって圭よりも大きく、そしてずっとそばに居てほしい、そんな人になっていた。
でも、彼は私よりも5歳も年下。そんな男の子が私の事なんて相手にするわけがないな、あきらめたほうがいいのかも。
でも、それもやっぱり辛い事。そう思えばそう思うほど苦しくなって、ならいっそうの事片思いのままでもいいなんて
彼がそこに居てくれればそれだけでいいなんて、そういう風に自分の気持ちを整理するのに時間がかかったんだ。
拓斗・・・それでも私はあなたが好き!
「おやっさん!」「なんだい?」「今日、拓斗、借りてもいいかな?」「へ?」海憂が突然変な事を言った。
俺はレンタカーじゃないんだぞ。そう思いつつも俺は正直嬉しかった。後はおやっさんの返事を待つだけだ。
「いいよ!いいよ!ただで貸してやる〜、はっはっはっ!」
おいおい、おやっさん、勘弁してよ〜。でも、まじ、嬉しかったな〜。
「な〜拓斗、いいだろ?」
「俺は別にいいっすけど、店、大丈夫ですか?」
「な〜に、今日はそんなに忙しくないからみゆうちゃんに付き合ってやんな〜」
「んじゃ、そうさせてもらいます!」「あいよ〜」
げ〜ちょ〜ラッキー!海憂とデートだ〜。デート?そうじゃないよな、これはやっぱり・・・。
でも、たとえ少しの時間でも海憂と一緒にいられるって事は・・・もう最高の気分。俺は自然と笑みがこぼれて止まらなかった。