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page 3 -出会いー

あ〜あち〜

「おーい!拓斗!」

「へ〜い!」


ここ海の家、潮騒にバイトに来てから3日目。少しずつ仕事にも慣れてきた。

しかし暑い!猛烈に暑い!ここってば、こんなに暑いとこだったのか・・・?。

「おい、拓斗!これあそこのお客さんに届けて!」

「はいは〜い!」

「はいは一回だけでしょ!」女将さんが言う。


ここ海の家、潮騒の経営者の関さん夫妻はよく働く、朝から晩まで笑顔を絶やすことなく働く。

あのパワーはどこから出て来るんだ?

女将さんは歳のわりにはさばけていて明るくて面倒見のいいおばちゃんだ。

ここ潮騒がこんだけ忙しいのもわかる気がする。

なんか2人をみてると楽しそうだし、なによりも2人とも海が大好きっていう感じが湧き出ている。

暑さの中での仕事はきついけど目の前にある海を眺めていると元気がよみがえってくるっていうか、パワーをもらえるっていうか、そんな感じがする。

そんな気持ちでそれから1週間が過ぎた。

俺もかなり日に焼けて肌の痛さなんて忘れてきた。


ここでバイトをする目的、目的?とはいわないか・・・。

とりあえずかわいい子でもナンパしてそれなりに楽しもうという本題は全くといっていいほど果たされていない。

そんな暇さえもほとんどない。暑さと忙しさの中で、それでも俺はこんな仕事も悪くないなって思っていた。

たまに休憩なんてのがあって海辺に行ってもすぐウトウトと眠くなる。でも、こんな暑いとこでウトウトとしようもんなら

身体のあちこちがジリジリいっている気がして、なおいっそう疲労がたまっていく。

雅弥とて同じ。ナンパなんてのは出来るわけもなく、あてがはずれてややへこみ気味だ。

「人生なんてそう甘くないなぁ〜」雅弥がポツリとつぶやく。んなの、あたりまえろ・・・。

でも、俺も雅弥と同じこと考えなくもないんだけれど・・・。


「こんちは〜!」

「やぁ〜みゆうちゃん!」

「ちは〜おやっさん!景気はどうよ?」

「ぼちぼちだね〜」

「そういうみゆうちゃんの調子はどうなのよ?もうすぐプロテストでしょ?」

「うん、そうなんだけど、なんかいまいちね、調子が出ない感じ・・・」

「そうか〜でも、まぁ、もうちょいがんばってみ!」

「はいよ!じゃ〜いつものかき氷ちょうだい!」

「あいよ!」

「あれ〜新入りくん?」

「あ〜こいつ、ここでこの夏バイトしてる拓斗っていうの、古坂拓斗」

「拓斗、ちょっとこっちこい!」

「こんちは〜」

「こんにちは!帆苅海憂っていいます。よろ〜」

「はい、古坂拓斗と言います」

「とさか・・・くんって言うの?鶏の頭みたいな名前〜あはは・・・」

「違います。古坂っていいます。こ・さ・か・・・」

「あ〜ごめんね〜、古坂君ね。あらためてよろしくね〜」

「古坂君、綺麗な顔してるね〜 若〜い ちょっと生意気そう・・・」

「あっ、ごめん、ごめん」

は?なんだこの女、やに色黒くね?まるで男みたいだ。なにがとさかく〜んだ。

気が強そうな女!逞しい女!海の女ってこんなもんなのかな?

俺が初めて彼女、海憂に会った時、正直、女としての魅力や優しさなんて感じていなかった。


「古坂く〜ん、古坂く〜ん!かき氷ちょうだい、いつものね〜!」

「帆苅さん、今日もかき氷っすか?」

「いいの、いいの。これ食べないとなんか調子でないんだもん」

「みゆうちゃんは本当にかき氷好きだね〜」康さんが笑っている。

「いいじゃんね〜おいしいんだもんここの!ねっ!古坂君!」

「帆苅さん、拓斗でいいっす」

「え?だって・・・」

「ここの人俺の事みんなそう呼ぶから」

「そう、じゃ、遠慮なく 拓斗!」

彼女に自分の名前を呼ばれた時、まじに照れた。そして胸の奥がわけもなく”キュっ”となった。


「私の事はみゆうでいいよ。みんなそう呼ぶから・・・ねっ!」

「はぁ〜」


みゆうはそれから毎日毎日波乗りの練習が終わるとここ潮騒でかき氷をほおばった。

いつも明るくって、いつも笑ってて、時には怒ったりして、その表情がクルクルクルクル変わる。

早めに海を上がってきたと思ったら、またふいっと海に入っていく。

彼女が海へ行く時、ふと香ってくる髪の香りが俺の心をいつもドキリとさせる。

なんか不思議な女だ。そんな彼女の事を見ているうち、俺は彼女の事が気になり始めていた。







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