page 18 −甘ったれー
ー海憂第2章ー
俺が23歳になった年、いろんないろんな出来事があった。
でも、どんなに辛くても苦しくってもいつも俺のそばには海憂がいてくれた。
ずっとずっと俺のことを支えてきてくれた。
そんな海憂に俺は思いっきり甘えていたんだ。
彼女の寂しさや辛さなんかなんにも考えずに・・・自分のことばかり押し通してきた。
「やってらんね〜よ!!」
「なに言ってんだ、拓斗!俳優の道ってのはそんなに甘いもんじゃない!」
「うるせ〜よ!」
「なんだと!!!」この頃の俺は少しばかり名が売れてきたからって相当、高飛車になっていたんだと思う。
ここまでマネージャーをやってきてくれた山根さんにもたて突いていた。
「な、拓斗この道はな、ある程度の我慢も媚も嫌だと思うことさえ耐えてやっていくしかないんだよ、お前、この前もプロデューサーに文句付けたっていうじゃないか」
「だって、どうしても納得できなかったんで!」
「なに生意気な事言ってやがる!」
去年の暮れにたまたま出させてもらえた単発ドラマで、俺は主人公を演じた。
その時の演技が高く評価され、来年の春からの連ドラで主役をまかせてもらえるところまで辿り着いていた。
そのドラマは青春物のドラマだったけど俺のキャラにはあまりあてはまるような役ではなかった。
「もう、いい、今日は帰れ!うちへ帰ってよく頭を冷やして来い!」
「あ〜帰ります!」
俺は頭をカッカさせながら家へといそいだ。
海憂がいるから、彼女になぐさめてもらいたかったから・・・
「ただいま〜・・・海憂?・・・居ないのか?」
いつもそこで待っていてくれる海憂がいない。あいつ、どこいったんだ?
その日、海憂は仕事が忙しかったらしく、なかなか帰ってこなかった。
だんだん、俺はイラついてきた。
「ただいま〜」
「あれ〜?拓斗、もう帰ってたの?仕事は?」
俺は彼女の声を聞く間もなく彼女をなかば強引に抱いた。
「拓斗、拓斗、ちょっとどうしたの?」
「・・・・・」
「ね、拓斗ってば、ちょっとちょっと・・・」
彼女は次第に抵抗しなくなり俺のなすがままになっていた。
俺は彼女にそうすることで自分の苛立ちや仕事に対する嫌なことすべて打ち消そうとしたんだ。
ひどいやつだな・・・俺ってやつは・・・
でも、海憂はけっしてそんな俺をせめようとはしなかった。
「ね?どうしたの?なにかあったの?」
「なんでもない・・・」
「そんなことないでしょ?」
俺は山根さんに言われたことすべてを彼女に話した。
「そう、そんなことがあったの・・・」
「でも、拓斗、あえて言うけど・・・」
「山根さんのいう事も正しいと思うよ、そりゃぁ、あなたの演技に対する思いってすごく強いと思うけど
譲れない部分ってのもわかるけど、もっともっと、違う世界?う〜ん、なんて言っていいんだろ?演技の幅っていうの?
それが今以上に広げていけたなら、あなたはもっともっといい役者さんになると思うけどな・・・」
海憂のその言葉を聞いて俺は励まされていた。
「海憂・・・」
「うん?」
「さっきは、ごめん、悪かった、俺、どうかしてた、ごめん、ごめんな・・・」
「うん、いいよ、さ〜ごはんでも食べようか! 今日は拓斗の大好物のオムライス海憂スペシャルを作るからね」
「まじで?・・・やったね!」
海憂はそう言ってキッチンへと入って行った。
彼女の背中を眺めながら
俺はどこまで海憂に甘えているんだ・・・。
もう少ししっかりしろ!
どうしようもなく甘ったれな俺に俺はつぶやいていた。




