page 17 −嵐の前ー
-海憂第2章ー
俺が22歳になった頃、少しばかりの役が付くようになっていた。
ほんのちょい役でしかなかったけど・・・
俺が高校性だった頃、俺をモデルとしてスカウトしてくれた八坂さんのつてで俺は@芸能事務所の一員になっていた。
その事務所の山根誠さんと知りあい、その人のコネもあって役が付いた。
俺はどこか腑に落ちなかったけど、このままなにもしないでこの俳優の世界で生きていくことは正直無理なことなんだろう・・・
そう無理やり自分を納得させてちょい役でも出させてもらおうと決心したんだ。
いつでもどこでも俺の中には海憂のことがあって、なんとしてでも彼女を幸せにしてやりたくて
彼女を安心させたくて無我夢中で頑張っていた。
「拓斗!」
「はい」山根さんに呼び止められた。
彼は俺がここ@芸能事務所に入ってからなにかとサポートしてくれている兄貴的な存在の人だ。
「今日のお前の演技よかったぞ!」
「けっこういい目になってきたな、役者てっのはどんな小さな役でも目で演技ができなきゃだめだ、その目、1つで
怒りや悲しみや喜びなんかをうまく表現できないと、大きくはなれない」
「は〜・・・」
「最近のお前、なかなかいい目になってきたな、その調子で頑張ってくれよ!」
「はい!ありがとうございます」やった、やっと誉めてもらえた・・・。
俺はやたらと嬉しくなった。
「お疲れさまで〜す!」
「お〜お疲れ〜〜〜!」
俺は海憂に、今日、山根さんに誉められた事をいち早く報告したくて、海憂の待つ家までの道のりを走っていた。
「海憂〜ただいま〜!」
「拓斗、お帰り〜どうしたの?そんなに息はずませて・・・」
「海憂、俺、今日、初めて山根さんに誉められた、目の演技がよくなってきたって!」
「ほんと?よかったじゃない!おめでとう!」
「海憂、海憂のおかげだよ・・・」
「そんなことはないよ、拓斗が一生懸命頑張ってるから、その結果が出てきたんだよ」
「海憂・・・」
「な、なに、拓斗?」
「ありがとう、愛してる・・・」
「なに、言ってんの、もう・・・」
「な?海憂・・・」
「なに?」
「こうして役者なんかやってる俺と今、お前の目の前にいる俺って、どっか違うのかな?」
こんなくだらない俺の質問に
「なに、ばかなこと言ってるの?どちらともあなたでしょ・・・」と言って海憂が笑った。
彼女は俺のことなのにそれを自分のことのように喜んでくれた、絶対、絶対、彼女のこと大事にしよう、
今、以上に大事にしよう・・・彼女のこと必ず幸せにしてやるんだ・・・俺はあらためて決心した。
「海憂・・・」
俺たちは体を重ねてお互いの気持ちを確かめ合っていた。
これからさき、2人のあいだにいろんなことが巻き起こっていくなんてこと、これっぽっちも想像せずに・・・




