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page 12 -朝焼けの空ー

遠くで波の音が聞こえる・・・


朝陽が差し込むその部屋で俺は目ざめた。

まだ頭の中が覚醒していない。

えーと・・・

そうか、ここは海憂の部屋だ。

じょじょに目ざめていく記憶の中で、昨日の夜のこと、なんで俺が海憂の部屋にいるのかなんていろいろ思い返していた。

そうだ、昨夜ゆうべ海憂は俺の女になったんだ・・・俺の海憂になったんだ・・・

完全に目ざめた俺は、そのことがやたらと恥ずかしくなり照れくさくなった。


「海憂?海憂?」とりあえず俺は彼女の名前を呼んでみた。それが夢ではないんだと確かめたかったから。


隣の部屋で人の気配がする。

目玉焼きが焼ける匂い、トーストの香ばしい香り、コーヒーメーカーがポコポコという音。

俺はベッドの中からノソっと起き上がると、その部屋へと行ってみた。


「あ、おはよ〜!」

「あ、はよ〜」

「なんかテンション低いよ〜」

「俺って朝はいつもこんな感じ・・・」

「ふ〜ん、でも、少しテンション低くてトーンダウンした拓斗の声もいいね・・・なんてね・・」

「なに言ってんの・・」

「あんまり、気持ちよさそうに寝てたからそのままほっといた、へへへ・・・」

<チュっ!>

「!?」俺は海憂の唇に軽くキスをした。 

「おはよ〜のキス」「もう、拓斗ってば〜」海憂は照れながら笑っていた。


「さぁ〜ごはん食べよ〜!」

「うん、いただきます」

「いただきま〜す」

「うまい!」「ほんと?ならよかった〜」きれいに盛り付けられた朝めしはとってもうまかった。

「こんなふうに海憂の作る朝めしをずっと食べていけたらいいな・・・」

俺がなにげなく言ったその言葉をさえぎるように「ごちそうさま・・・」と海憂が言った。

?ごちそうさま なんかへんな感じ・・・。俺、なんかへんなこと言ったかな・・・?

海憂も、それいいかもね、とか、これからも作ってあげるよ、とかとでも言ってくれるんじゃないかと思った。

「・・・・・」

「海憂?」彼女がきゅうに黙り込んでしまった。

「拓斗・・・」「うん?どうした?」

「ひょっとして、昨夜ゆうべのこととか思い出しちゃった?」俺は冗談めかしにそんなことを言ってみた。

いつもの海憂なら、やだぁ〜拓斗のすけべ〜とでも言い返してくるかと思ったから・・・。


「拓斗・・・」

「うん、なに?」

「・・・・・」

「なんだよ〜?」

「拓斗、わたしあなたに言っておかなきゃいけないことがある・・・」

「なに?そんなにしんみりして、らしくないね〜」

「冗談じゃないからね・・・」

「・・・わかった」


それからわたしは拓斗に今まで自分がどんなことをしてきたか、どんな恋をしてきたか、どういう気持ちでプロサーファーなんか

めざしたか、今の自分の気持ちを洗いざらい彼に話した。もちろん、圭という恋人がいたことも、その彼が今もまだ寝たきりの状態

でいることも話した。そして彼を裏切ってしまった自分のことも、ちゃんと彼とお別れをしてきたことも全部、全部、拓斗に打ち明けた。

拓斗はだまって聞いていた。

わたしはそのことで拓斗が自分から離れていってしまうんじゃないかと不安でいっぱいだった。

涙がこぼれた。わたしは拓斗に別れを告げられんじゃないかと覚悟を決めていた。


しばらくの沈黙のあと、涙でいっぱいのわたしの頬をぬぐいながら拓斗が言った。

「海憂、全部話してくれてありがとう、なんて言っていいかわからないけど・・・」

「うん・・・」

「海憂、俺は海憂の過去とか海憂の元彼のこととかって今の俺には正直、関係ないと思っている

だって海憂は今の俺を好きでいてくれてんだろ?それと同じに俺は今の海憂を好きになった、俺とここで一緒に生きている今の

海憂が好きだから。で、なによりもどんなことよりも俺は海憂のことが大事だと思っているから・・・」

「拓斗?ほんと?本当に?」

「うん」

「こんなわたしでもいいの?あなたと一緒に生きてっていいの?こんなわたしでも大事に思ってくれてるの?」

「あたりまえだろ、海憂は俺の一番大事な女だよ・・・一番大切にしたい女だ」

「拓斗・・・ありがとう・・・」海憂がまた泣き顔になった。

「海憂・・・もう泣くな・・・」俺たちはふたたび抱き合った。

その日、海憂の部屋から眺めた朝焼けの空はとっても綺麗だった。

そんな空を見ながら俺はこの女を海憂をなおいっそう幸せにしたいと思っていた。

彼女のその肌の温もりを感じながら・・・。






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