最終話 告白
最終話となりました。
ええー・・・なところで終わってます・・・。
続編、かければ書きたいんですよ。だって、まだラブの要素少ないんですから・・・
病院の屋上まではエレベーターと階段を使っていった。屋上へと続くドアを開き、屋上へと出ると、奥の方の手すりにつかまり、向こうの方の景色を眺めている真琴の後姿があった。翔と同じデザインで、サイズが小さい緑色の入院服が、風になびいている。翔はゆっくりと、真琴の方に歩いていった。
「真琴・・・・・。」
「此処・・・・。」
「え・・・・?」
「僕はこの町で生まれたらしいです。18年前の7月7日の、この町にある『不知火』本家の地下で、僕、中澤真琴は産まれました。」
遠い景色を眺めながら、真琴はしっかりと自分の過去を話し始めた。
「僕は自然にそむくような生まれ方をしました。母体から産まれなかったんです。僕は翔さん、貴方のお母さんの細胞を能力で増殖させて造られた人間なんです。」
「何言って・・・・・。」
「本当なんです。僕は『白姫』として――――『白姫』の生まれ変わりとしてこの世に生を受けたんです。人であって人でない、それが僕なんです。やっと・・・自分の過去が分かって、そして自分も能力者であると知って、さてどうしようとずっと考えてました。僕は今まで、助けてもらってばかりでした。翔さんにも護さん、充さん、要一さん、優さん、香月。皆に助けてもらってばかりだと思ったんです。だったら、僕も皆を助けたいと思ったんです。僕が大切だと思う人たちを・・・・守りたいなって。」
くるりと振り向いた真琴はにっこりと笑っていた。
「ごめんなさい、翔さん。」
「?」
「つらい思いをさせてしまって、ごめんなさい。わかってたんです。あの時、翔さんにあれだけ近付いたら、どうなるかわからないと・・・・。」
「っ・・・ならなんで!!」
「あのまま翔さんが能力に支配されてあの場所が壊されてしまうのは、嫌だったんです。仮にも僕の生まれたところですから。僕は自分のことだけしか考えられないのかもしれないです。もともと、僕には自我というものが欠落してたようですから・・・楽しい、うれしい、悲しい、悔しい、むかつく、愛しい、寂しい。それらの感情は僕にとってはよくわからないのかもしれません。まぁ、以前の話ですけどね。結局は僕は自分がかわいいのかもしれないです。だからこそ、あんなことをしてしまったんです。」
「・・・・・・・・?」
「貴方を失いたくなかったんです。確かに、あの本家にいたとき、皆のことが頭に浮かんできました。だって・・・皆大切な人たちだからです。ずっと一人だった僕に、こんなにも素敵な人たちがいてくれる。それだけで、僕はうれしかった。あの家にいると、施設では感じられなかったこと、感情が、少しずつ感じられるようになって、本当に楽しいと思えた。それは皆がいてくれるからで、そう思えているだけでよかったはずなんですけど・・・。どうも僕はそれ以上を望んでしまってるみたいです。」
「・・・・・よ・・・・・。」
「え・・・?」
「怖くないのかよ?俺が・・・・。」
「どうしてですか?」
「だって俺は、まだ自分の力を時々だけどもコントロールできなくなる。そのせいで、真琴を、俺は傷つけた。それなのに、お前は怖くないって言うのか?」
「はいそうですよ。」
「・・・・・・・・・・ならなおさら、俺はお前とは一緒にいられない。」
「!?・・・・・なんでですか!?僕がいると、力が使えなくなるからですか?それともやっぱり僕がお荷物だからですか?それとも・・・・・。」
「違う!そうじゃない!!ただ・・・お前だからこそ、俺の傍になんかにいてほしくないんだ。真琴は『白姫』だろ?俺といたら、母さんと同じようになるかもしれない・・・そんなの俺は絶対に嫌だ。それに、どうせ俺といたってお前を苦しめるだけだ!だから・・・俺の傍にはいない方が良い・・・・。」
「そんな・・・・・。」
「新しい住居とか、生活費とかは俺らがちゃんと面倒見てやるからさ、安心しろよ?じゃ、それだけ伝えに来たから。」
そう言って、翔は踵を返した。去って行ってしまうその姿を、真琴は叫んでとめた。
「待ってください!!翔さんのお母さん、美琴さんは稔さんも危険だという事は分かってたんじゃないですか!?でも、それでもずっと最後まで一緒にいたのはどうしてですか?」
「それは・・・・。」
「愛してたから。二人とも、お互いが好きだったからですよ。それ以外にあると思いますか?僕もそうしちゃだめですか?」
「え・・・・・?」
「あの時の返事、今しても良いですか?」
「あの時?あの時って一体・・・・・・・・・。」
「僕も好きですよ、翔さん。」
その途端、翔の頬が真っ赤になった。そう言った真琴も翔の後ろで真っ赤にいなっている。ゆっくりと振り向いた翔は、そんな真っ赤になった顔を隠すようにうつむく真琴を見た。そして二・三歩歩き、近付いたところで翔は真琴を強く抱きしめた。
「か・・・翔さ・・・・・。」
「いいんだ?俺なんかで?」
「はい・・・・・でも・・・・翔さんこそ、僕でいいんですか?だって、僕男ですし、なにもできないし、ぜんぜんそんな期待に添えるようなことできませんよ?」
「俺は真琴がいてくれれば十分。さっきのは確かに本心だけどさ。不安だったんだ。真琴まで母さんみたいに失ったら・・・俺は今度こそ自分自身を許せなくなるってな。でも、そうだな。真琴の言う通りだと俺も思う。父さん母さんがいっしょにいたのはあの二人がそれだけお互いを信頼して、想いやってたからだろうな。真琴、これからも一緒にいてくれるか?」
「・・・・はい。」
「真琴、愛してる。」
「え・・・っ・・・・・・んっ・・・・・・。」
やんわりとした感触が、互いの唇にあった。真琴はようやく自分達がキスしてることに気がついて、思わず鼓動がびくっとはねた気がした。触れるだけのそれはその後すぐに離れた。
「か・・・翔さん!?」
「今度こそ、ちゃんと守るからな、真琴。」
「・・・・はい!」
たとえ許されないことでも、僕はそんなの気にしない。
同性だろうが僕には関係ない。
だって、僕はすでに存在自体あり得ないものだから。
それに、これも一つの幸せなんだと思えるから。
一緒にいられるなら、たとえ何が待ち受けていようと、僕は頑張れる。
隣にあの人がいる限り・・・・・・。
あの日、あの時出会ったことは、偶然ではなかったのかもしれない。
これも運命の一片だったのかもしれない。
あの日の出会いはそれこそ『不思議な出会い(magical encounter)』だったのだから。そしてこれから始まるのは・・・・・・・・・・・愛・・・・なのかなぁ・・・・・
終
今までお読みくださり、ありがとうございました。
アクセスしてくれた方、お気に入りしてくださった方、評価してくださった方。
皆さまありがとうございました。
私としましては、続編のようなものをやりたいと思っています。
また、真琴たちが動く時が来たらよろしくお願いいたしたいと思います。