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——とある貴族の館。
影から見下ろす分には、ここには争いの種すらない。
楽師たちの奏でる優美な旋律が広間に満ち、テーブルには豪勢な料理が所狭しと並ぶ。
給仕がワインを注いで回る中、貴族たちは思い思いに談笑し、華やいだ時間を過ごしている。
中でも、ひときわ優雅なドレスを着た少女に目を引かれる。
この少女は、今日で17歳になる。
少女の周りには絶えず人が来て、彼女を囲んでいる。
人々が祝いの言葉を口にする中、少女はひとりひとりに向けて微笑み、感謝を返す。
遅れて来賓が現れる。
その人物を見て、少女は喜びをあらわにする。
この国の王太子だ。
彼は少女と目が合うと、微笑み返す。
少女の前まで来た彼は、彼女の手を取り、その甲にキスをする。
表情は取り繕っているが、少女の顔は赤く染まっている。
王太子が少女に祝いの言葉を贈ると、少女はその日一番の笑みを向けた。
◇◇◇
パーティーが終わり、寝支度を終えた少女が自室に戻る。
侍女が退出したため、部屋には少女だけだ。
普段は取り繕っているのだろうか。
少女はひとりだけになると、ベッドの枕に抱きつき、足をジタバタしている。
興奮冷めやらぬ様子だ。
だが、疲れていたのだろう、少女はすぐに眠りにつく。
私は、少女の眠るベッドの隣に音もなく降りる。
——そして、少女の首にナイフをあて、
切る。
血が一気に噴き出して、ベッドを真っ赤に汚す。
鉄くさい匂いが部屋に充満していき、鼻を刺激する。
少女の目が見開かれ、両手が自分の首へ伸びる。
指の間から血が溢れ、シーツに流れていく。
口ははくはくと動いた後、気管に血が入ったのだろう、
「ゴフッ」という湿った音が静かな室内に響かせた。
一瞬、目が合った。
……いや、合ったように見えただけだ。
開いた目は、私を通り抜けて天蓋を向いている。
そして瞬く間に、光を失った。
唇は真っ白になっており、顔が青紫に染まっていく。
返り血の熱が、指先から失われる。
——これが私の日常だ。
はじめまして、みのるです。
こちらの作品は、異世界×百合で隔週投稿の予定です。
どうぞよろしくお願いいたします。




