15
生家に戻るとエルシャが待ち構えていた。
特にアルマに会いにいくことは伝えていなかったのだが、恐らく父か母が教えたのだろう。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「帰る前には連絡してって言ったわ」
「ごめん。電話も何もない田舎だったんだ」
エルシャはむっつりとした顔で、クッションを抱えてソファに沈み込んでいる。
きっとなんと言葉をかけたものか迷っているのだろう。
「アルマに謝ってきた」
「うん」
「ただ謝ることしかできなかった。でも、初めてアルマと話した気がする」
「そう」
どう反応したものか困っているのだろう。
眉間に皺を寄せ、黙り込んでいる。
そんないつも以上に小さな身体の横に並んで座り、足を投げ出す。
いつもならだらしない、と叩いてくるのに、エルシャはじっと床を見ている。
「お前がおとなしいと俺も反応に困るよ」
「だって。こんなとき、なんて言ったらいいのか分からないのよ。私はアルマ様じゃないもの」
「やめろよ」
ルディガーは体を起こし、エルシャに向き直った。
そしてその顎に手を添えて自分の方を向かせる。
不安気に揺れた瞳に、あの日の少女を見た。
大丈夫。
もう、大丈夫だ。
「お前とアルマは違う。もう二度と、彼女と比べて自分を貶めるようなことを言うな」
「だって」
「だってじゃない。俺が嫌だと言ったんだ。それ以外の理由が必要か?」
エルシャは涙を堪えるように顎と喉に力を入れ、心底不愉快だという顔をして頬を膨らませた。
「やり返したわね」
「やられっぱなしは性に合わないんだ」
エルシャはルディガーにのしかかり、ぽかぽかとその胸を叩いた。
ルディガーは体を揺らすように笑いながら、痛くもない暴力をおとなしく受け入れた。




