戦いの果て1
スケルトンニンジャは身体をプルプルとさせて短刀を振り下ろしてこない。
「今のうちだ!」
反応し声の方を見るとゼインが腕を前に出し空気を掴んでいた。
――ゼイン!? 今はスケルトンニンジャを倒せるチャンス。
ヴェルトは顔面に正拳突きを放つが当たった瞬間に木に変わっていた。
――ここにきて変わり身の術か。
ゼインが駆け寄って来て顔を合わせる。
「無事でよかったよ」
「ごめん兄さん仕留め損ねちゃった」
「問題ないよ。おれも念動力があまり上手くいかなくてね」
――あれが念動力だったのか。使いこなせるようになれば強力だな。
「それより村は大変だし父さん(分身)が動かないんだ!」
「今俺の仲間が来て戦ってる。あれは分身だから大丈夫だよ」
「えそうだったの!? 騙されたー! ずっと無視されるから嫌いになりそうだった!」
「ハハハ、ヴェルトはほんとにマイペースだね」
「それじゃあ父さんまだ魔族と戦ってるのかも」
ゼインに緊張感が走りスケルトンニンジャを見る目付きが変わった。
「ほんとかい? じゃあ早くこいつを倒して加勢に行かなきゃ。ヴェルトは今のうちに逃げるんだ」
「魔族と魔物は僕を狙ってるみたいなんだよ」
「それなら村で俺の仲間たちと合流するといい」
――ぶっちゃけ戦いたいけど、やめておくか。
「わかったよ」
そう言ってヴェルトは村に向かった。
スケルトンニンジャはヴェルトを追おうとする。
「アモネ・プリーグマ (風の斬撃)」
ゼインは風の斬撃をスケルトンニンジャと進行方向に飛ばす。
飛び上がって避けるとその体勢のままゼインにクナイを飛ばした。
「タヒス・アネモス (疾風)」
ゼインは身体が薄黄緑のプラーナに包まれる。
そこから凄まじい速さでクナイを全て避けながら、スケルトンニンジャより高く飛び上がると、上から剣を振って斬りかかった。
短刀でガードしたが威力に押し負け、受け止められず地面に叩きつけられた。
空中に浮いたまま
「アモネ・プリーグマ(風の斬撃)」
ゼインのあまりの速さにスケルトンニンジャは術を使う暇もなく斬撃でバラバラにされて倒された。まさに瞬殺。
倒したのを確認してすぐさまガウンの元へ向かった。
ゼインはガウンが見えてくると、両者共々互角の戦いをしていて、スケルトンジェネラルの攻撃を片手で受け止めていた。
すぐ加勢しようと1歩前に足を出した時、「トン」と何かに躓いた。
足元を見ると、ガウンの右腕が落ちていた。
ゼインのとてつもない殺気が目に宿る。
奥歯を噛み締め、持っている剣をぎゅっと握り悔しい表情を見せる。
――俺が…俺がもっと早く来ていれば…
魔族を見る目付きがギラリと変わった。
ゼインは怒りに身を任せ刹那主義になる。
プラーナの制御を辞めた時一時的覚醒状態に突入した。
「アネモ・ケラヴノス (疾風迅雷)」
薄黄緑のプラーナに所々稲妻が走り、風属性に近い光属性が生まれたのだった。
スケルトンジェネラルに向かって踏み出し地面に足跡が着く。
疾風と比べて段違いの速さで、二人の間に割り込み
スケルトンジェネラルの刀を持つ片腕を切り落としてから空中で一回転して蹴り飛ばした。
「父さん、遅くなってごめん」
ガウンは少し微笑む。
「覚醒に近づけたのか…」
「俺にも分からない。でも、なにか掴めた気がしたんだ。てか、なんでパンイチ?」
「あいつは俺との戦いでもうBランク程の力はないが、 油断はできない。 この格好には色々あってな。 それよか今の技じゃプラーナの消費が持たないだろう。 あまりないが俺のを持って行ってくれ」
ガウンは左腕をゼインの背中に手を当てて残りのプラーナを送り込んだ。
「村はもう仲間達が来たから大丈夫。俺が絶対倒すから少し休んでてね」
「ああ、すまないな。 たのんだぞゼイン」
そう言って大の字に倒れ込んで気を失った。
スケルトンジェネラルは立ち上がり歩いてくる。
「我が気づかない速さとは恐れ入ったぞ」
「黙れ。もう許さない。 父さんの腕はお前の腕より高くつくよ」
「フハハ、やってみよ。――ドロー (引き寄せる)」
スケルトンジェネラルは魔力を使い、切り落とされた腕から刀を自分の手元に引き寄せた。
「アネモ・ケラヴノス (疾風迅雷)」
ゼインの速すぎる動きと連撃に、刀で受け止めるのが精一杯のようだ。
そこに蹴りを織り交ぜながら攻め続ける。
顔を集中的に狙っているフリをして、胸部の空いた所に一撃だけ蹴りが入る。
すると、スケルトンジェネラルは地面に足を着いたまま吹っ飛ぶ。
刀を地面に刺し体勢を保ち続ける。
ゼインはその隙を見逃さない。
「アモネ・プリーグマ (風の斬撃)」
縦横斜めの斬撃を飛ばし命中し、スケルトンジェネラルは煙に包まれている。
一旦アネモ・ケラヴノスを解く。
――プラーナの消費が激しい。奴の目が慣れればこっちが不利になる。なにか無いか…
ゼインは頭をフル回転させ考えている。
すると目を見開き閃いた顔をした。
――一か八かの賭けになるがこれしかない。
スケルトンジェネラルは煙の中から飛び出てゼインに斬りかかる。
ガウンとの戦いでの疲労とゼインの予想外の実力で先程の余裕は無くなっていた。
ゼインはプラーナを抑え、余力を隠している。
そして、剣で攻撃を捌きつつ反撃を入れながら、チャンスを伺う。
――こいつ、なかなかしぶとい。
防戦一方で捌き続ける。
スケルトンジェネラルの攻撃が軽くなったのを瞬時に悟る
――ここしかない。
ガウンの片腕が切り落とされたことを思い出す。
「アネモ・ケラヴノス (疾風迅雷)」
再びゼインが凄まじい速さになり、スケルトンジェネラルは驚いている。
「なんだと!? まだ力が残っていたのか!」
「この瞬間を待っていた」
防戦一方だった打ち合いをひっくり返し、素早く動き周りながら攻め続ける。
――もうプラーナがギリギリだ。
攻撃を捌き切るのが難しくなったスケルトンジェネラル 身体がよろける。
――頼む。上手くいってくれ。
地面に手を当てて、ガウンに分けてもらった少ない地属性のプラーナを使った。
「ラスピ (ぬかるみ)」
すると、よろけて体勢を立て直そうと、体重を掛けた方の足元に軽いぬかるみが出来た。
スケルトンジェネラルは踏ん張ってもぬかるみで体勢を崩し、地面に膝を着く。
「これで終わらせる」
ゼインは踏み込んで、スケルトンジェネラルの胸部を下から上に剣を振り上げて斬った。
「ぐぅっ」
と声を出して仰向けに倒れ、少しずつ身体が蒸発していく。
蒸発していく中でスケルトンジェネラルは口を開き振り絞った声を出す
「我を倒すとはお前はなかなかやるではないか」
「俺もギリギリだったけどね。それよりなんでヴェルトを狙ってる?」
「フハハ、ヴェルト? ああ、あの小僧か。理由はわからん。命令だ。」
「そうか」
「だが、我は死にこの世から消える。だから最後に一つだけ教えてやろう。」
「なに? 」
「あの小僧を狙うよう我に命令したのは……」
ゼインは目を見開き耳を疑ったような顔をした。
「なんだって!?それは大変だ。父さんに伝えなきゃ」
「あの方達は我が足元にも及ばぬ強さだ。精々頑張るがよい」
そう言って消えていった。
ゼインは急いでガウンを叩き起した。
「なんだ。やっと飯か?」
ガウンは寝ぼけている。
「父さん!大変なんだよ、ヴェルトが……」
スケルトンジェネラルに言われたことをガウンに説明する。
ガウンもゼインと同じように驚き、飛び起きて息が混じるような声を出した。
「え!まじで? それやばいじゃん」
「そうなんだ。でもまだヴェルトには言わない方がいいよね 」
「そうだな。俺達と母さん、3人だけでとどめとこう」
ゼインは眉をひそめた。
「ちょっと待って、今後また同じようなこと起きないように、俺の仲間には伝えようと思う」
「そうだな。そこはお前に任せるよ」
「ありがとう。了解だよ父さん。村に戻ろう」
ガウンは何故か少しカッコつけたように
「おう。おんぶ頼む」
その頃ヴェルトは村でゼインの仲間と合流していた。




