勇猛果敢な初陣3
正拳突きはしっかりと当たって数メートルほど飛んで行ったのを見る。
―うん?筋肉の手応えに生肌……パンイチ。
冷や汗を垂れ流しながら焦った表情をしている。
「と、父さん!?」
すぐに近づきガウン(分身)がうつ伏せで倒れ、背中が赤く拳の形になっている。
そして黒ずくめの何かが下敷きになっていた。
――もしかして某名探偵の犯人!?
目をぱちくりとさせて見ているとガウン(分身)に対して違和感があるのに気がついた。
――さっきまで持ってた武器がどこにもない。ただのパンイチ……。こんなんで戦えるのか?
ガウン(分身)が起き上がると黒ずくめの姿が消えていた。
――あれ?犯人はどこだ?
と当たりをキョロキョロと見回しても木々や煙が漂う村しか見えない。
犯人の正体が気になりガウン(分身)に聞いてみようとする。
「魔族はどうな…」
喋っている最中、ヴェルトの足元に手を突っ込んだ。
「はあ?ドユコト?!」
――こ、こいつ正気か!?頭のネジ落とした?
地面から何かを掴みながら手を抜き出すとさっき居た黒ずくめが出てきた。
「おーまいごっど!」
――忍者なんて初めて見た!骨じゃなきゃ120点!
初めて見る忍者に目を輝かせテンションが上がった。逃げなければならない立場を忘れ、危機感より忍者が気になって仕方がない。
――さっきのは土遁の術だよね。あとはどんな術使うのかな?手裏剣とかクナイとか持ってるのかな?
ガウン(分身)はスケルトンニンジャをやり投げのように投げ飛ばしたが空中で体制を立て直し地面に着地した。
ヴェルトはその見事な身のこなしに、口を少し開け「さすが」と言いたげな表情をして拍手を拍手をした。
――どうしよう!戦い方とか気になるし、なにより戦いたすぎる!
気持ちが抑えられなくなりそうだと気づき肩の力を抜き、深呼吸を数回繰り返し自分を落ち着かせようと息を整えた。
落ち着きを取り戻し考えてからガウン(分身)に話しかけた。
「父さんこいつって魔族??」
「……………」
「無視?怒ってる?」
ヴェルトは不機嫌になり声を張り上げた。
「おーい!!!ねえってば!!」
ガウン(分身)はスケルトンニンジャから目を離さずこちらを見ようともせず反応もしない。
――はー。そんな無視することある?黙って逃げろってことなのか?
ヴェルトは眉をひそめてムッとした表情で、拗ねたように言う。
「もういいよ!ふん」
―逃げればいいんでしょ。
そっぽを向き走り出そうとした時、スケルトンニンジャはガウンとヴェルトに、何かを投げてきたので目を凝らした。
――うお!これって手裏剣じゃない?!
足を止めてつい見入ってしまった。
――やばい、避けきれないかも。
覚悟を決め真剣な眼差しになる。急いで避けようとしたその時。ガウン(分身)がヴェルトに背を向けて立ち、身を呈して守ろうとする。
――好奇心に負けた俺のせいだ。
自分の不甲斐なさに押し潰されそうな表情で、申し訳なさと心配が混じりあったような声を出す。
「父さん、ごめん!」
ガウン(分身)は相変わらず何も答えず、飛んでくる手裏剣を素手で殴った。
ヴェルトは度肝を抜かれた表情をした。
――えええ!?今のってそのまま手裏剣が刺さるよくある流れじゃないの!?いや、よかったけどね!?痛くないのかな。
思ってたのと違く、何事もないようで安心はした。
でも同時に素手で殴ってることが心配になった。
殴った拳を見ると手裏剣が1枚刺さっていた。傷はあったが、血は出ていなかった。
――この刺さり具合ならさすがに血は出るじゃん。なんかさっきからおかしくない?この人。
守っては貰ったが違和感が増していく。
飛んできた手裏剣からモクモクと煙が上がり視界が真っ白に染まり見えなくなっていく。
――手裏剣に煙玉仕込んでんのかよ!隠れんぼ上手すぎだろ!
ヴェルトは走って煙を抜けたがガウン(分身)の姿はない。
―まだ煙の中か。でもガウンは大丈夫だろう。早く逃げなきゃまた怒られるよな。
すると薄い煙の中から2体の影が見えてきた。
――良かった。大丈夫そうだ。
影を見つめながら逃げようとするがヴェルトは目を大きく開けて驚く。
――2体ともニンジャ!?これが世に言う影分身?!
焦って全力で逃げ出し、走りながら後ろを振り返る。
――ニンジャの速さじゃすぐ追いつかれる。むりだ。戦うしかない!不可抗力♪
戦えることに対して喜びで笑みがこぼれる。
2体いるのが厄介だな。片方の相手しても邪魔が入るだろう。どうしようか。よし。
ヴェルトは走りながら眉が少し上がり何かを閃いた。
シャトルランのような切り替えしをしてスケルトンニンジャの方に突っ込んでいく。
助走を付けて地面を踏み込み飛び上がると技風に声を出して飛び越える。
「空中走行! 動きだけ!」
そして勢いを殺さず地面に着地し、スケルトンニンジャの相手をせず煙の中に走り込んで行った。
追いかけてきてるのを確認してから、口元を片側だけニヤつかせしめしめというような表情をした。
――よしそのまま俺についてこい。
煙の中に入ってから後ろを振り返り、ちゃんと追ってきてるのかをギリギリ確認できる距離になってから
――この辺かな?しらんけど!
追ってくるスケルトンニンジャの頭上を目掛けて自分の最大限の力でジャンプをした。
落下速度を活かしてバレないように、両足で見えない脳天を目掛けて踏みつける攻撃をしてみた。
――とくと味わえ!おれの全力着地!当たってくれ!
運良くしっかりと脳天を捉えたが当たってから姿が無くなった。
「ドンッ!」
と地面を凹ませて着地をした。
――影分身の方だったかあ。まあ賭けだったし当たっただけ良しとしよう。
周囲を見渡すと最初より煙は薄くなっていたが、何も見えなかった。
――後のこと考えてなかったー!これじゃ不利じゃないか!
両手でわしゃわしゃと頭を掻きながら上を見上げるとあることに気がついた。
なんと落下と着地の風圧でヴェルトの周りだけ煙が円状に消えていたのだ。
――これってもしかしたら思いっきり走り回れば風圧で煙薄くなるんじゃね?
そう思い縦横無尽に全力で駆け回り始めた。
すると全体的に薄くなり巨漢の影が見えてきた。
――あれは…きっとガウンだ!
駆け回り続けると段々煙がなくなっていった。
その時ヴェルトは目を見開き瞬きをした。
――ガウンが2人!?
片方は身体もブリーフもボロボロで人形のように立ち尽くしていて、もう片方は同じような感じに加えて腕が砕けて断面が土になっていた。
それ以外は他に誰も見当たらなく状況が掴めないで困惑している。
交互に2人に顔を向けてを繰り返す。
――なんでだ?同じガウンが2人。スケルトンニンジャもいないしガウンはぴくりとも動かない。
腕が砕けたガウン(分身)に警戒心なく近づいた。
その時誰かの声が遠くから聞こえた。
「ヴェルト! 危ない!」
「えっ?」
振り返ると腕が砕けていないガウン(分身)の姿はなくなっていた。
変化の術でガウン(分身)に化けていたのだった。
そして背後から気配を消していたスケルトンニンジャが短剣を振り下ろそうとした。
油断していたヴェルトは身体が固まって動かなくなってしまった。
――あ。やばい。終わった。




