55植物で蜜を生成
砂糖代わりに植物の蜜を集めたもの。
想像の産物なので普通に甘い。
コレスはその甘みに虜になったらしい。
実はさっきのミルクに砂糖も入っていて、甘いものだ。
砂糖のようなものが高いというのではなく、仮にモンスターやその場所にあっても取りにいける人が限られている。
となると、Sランクのこの夫はいい隠れ蓑になるというもの。
エレラはニヤッと思わず笑う。
植物で蜜を生成できたのは最高の気分だった。
自分だけのために使うぞってね。
売るのはクッキーだけど、ほぼ砂糖なしのものだ。
甘くしたら騒ぎになる。
でも、一応これも特許登録しておく。
でも、クッキーも手間なのでやりたくなくなるだろう、直ぐに。
結構面倒くさい。
調理器具もろくにないので割と失敗する。
こうしてクッキーを作ろうとしているけれど、多分次はなにかしら失敗するだろうからバラで妖精の気を引いたってわけ。
コレスは滅多にできないクッキーを食べたいからこそじっと見つめているらしい。
本人談。
自分が作れるようになれば、クッキーを食べれる確率がグンと上がるかもしれないと思ってるのだ。
まあ、うん、好きにすればいい。
別にエレラはそこまでクッキーに対して熱意はないので。
温泉の方はどうなってるのだろうか。
「温泉……あった?」
作りつつ聞く。
「かなりありそうな場所を、いくつか見つけた」
「えっ、ほんとっ!?」
喜びに跳ぶ。
妖精達が驚いてこっちに来たぞと言う。
そうは言われても見えないから、わからんよ。
再びクッキーの生地をこねこね。
「妖精が見つけてくれないかなぁ」
「ああ、そんな方法もあるか。聞いてみる」
そんなあっさり、手伝ってくれるのかなと期待に目を輝かせてしまう。
失敗ばかりだけど、温泉のためならこの国に暫く居たい。
見つかるならもっといることを考える。
見つからないなら、さっさと他の国で温泉を探す。
そのために、グレードの低い家にしたのだ。
竹を植えるために、土地は買ったけど。
諦めきれない。
「おい、妖精ども」
「悪役じゃん」
「ああ、聞いていたな?で、探せるのか?」
なにやら会話し始める。
上を向き横を向き、下を見た。
あちこちにいるみたい。
「どお?どお?」
「探してみる、だそうだ」
「すでに探してるとか、ない感じ?」
「考えたこともないと言っている」
「妖精が住んで暖かくなったから、火山もできたのに、考えたこともないんだ……魔力入り温泉ができればいいって希望出しといてね。念押ししてね」
「大丈夫だ。バラとミルクがすごく嬉しかったと喜んでいる。張り切って探すそうだ」
「ミルクとバラ効果!やった!これで決まったーっ」
拳を握りしめて高く上げる。
その仕草を初めて見たのかコレスも同じように真似をして、拳をあげていた。
「これはなんの意味が?」
「これは、やったー、とか、やるぞーって意気込むときの手」
「手」
「そうそう、拳上げて気分が高くなるとやるやつ」
今、自分は気分もよくなんでも答えられる。
妖精達も同じことをしていると告げられ、想像すると可愛いではないかと、にこりとなる。
「クッキー、焼こうか」
「ああ。バラに整えておいた」
もう薔薇の形にされている。
相変わらず器用。
本当に薔薇の花を模したものを作り上げている。
これ、売ったらいくらになるんだろう。
五百とか、もしかしたら、もっといけるかも。
うーん、悩む。
自分だけ楽しむためだったけど、この芸術的なクッキーを見せびらかしたくなる。
温泉についての保証がある程度約束された途端、肩の力が程よく抜けてくれたっぽい。
「ふう。よし、焼いて終わり。焼いたら焦げるかもだけど」
楽しそうにするエレラに、コレスは嬉しそうに火の調節をする。
クッキーを失敗しないためには、火の加減が命だ。
火さえどうにかできれば、失敗する確率がなくなるというわけではない。
けど、かなり上手く焼けることができるようになるかも。
「火の妖精に頼めばいい。さっきお前がやったことでなにかしたいと周りを飛んでる」
「え?そうなの?火力をあげるだけじゃなくて、火力を調節できる?」
「らしいな」
試してみるのもいいかもしれない。
先ずは焼かせてみよう。
その間、手持ち無沙汰なエレラはコレスに陶芸の件はどうなっているのかと確認。
確か潜入するとか言っていた。
それについて進展しているのか気になった。
必須ではなく努力義務だけど。
あと、なんとなくいった言葉から技術を会得しようとする謎のやる気があった。
「ちゃんと情報を習得している。回してなかったけどな」
「この世界のお皿は回さないのかもね」
いずれ水筒も売るのだが、その間ということなのか。
「水筒はどうしようかな。だいぶ数を作れてきたし……特許申請お願いね」
水筒は自動販売機で売る予定なので、まず特許だ。