56火の妖精がクッキーをうまく焼いてくれた
押し付けているように見えるが彼がギルドに行くと言って譲らないので、どちらでも構わない姿勢。
「わかった。エレラ、お前はあの愛し子に腹が立たないのか」
「あるかないかって言われたら、ある。甘やかされたとしても、初めて見る人を嘲るのはどうかと思う。それに、妖精が見えてなかったように感じたんだけど」
名前を呼ばれて問われたけれど、その消化不良はコレスの妖精捕獲で解消されている。
「見えてないんだろうな。妖精が焼けたと伝えてきた」
会話している間に、クッキーを焼いてくれていた妖精が男に伝えにきたみたいだ。
「見に行こ」
立ち上がって、どんなもんだろうかとキッチンへ。
キッチンはエレラから見たら必要最低限のものしか置いていない簡素な風景だ。
焼き具合を見てみた。
「お……え、今までで一番焼けてる」
「さすが火の妖精」
男は感嘆の声音で誉め上げる。
狐色にこんがり綺麗に焼き色が告げられ、薔薇の香りが室内に広がった。
試食するために早速さくりと食べる。
「お、美味しい」
「今までで一番じゃないか?」
「うん。火の妖精すごくいい」
妖精達の分もクッキーを分けて出したらあっという間になくなる。
目の前で綺麗さっぱりなくなるので妖精がいると証明され、エレラにもわかりやすい。
大好評のクッキーはなくなり、空の皿だけが残る。
バラも追加して置いておく。
ミルクも注いだ。
クッキーを食べたら喉が渇くし。
夫の言葉によれば妖精は小さいので、量は少しで平気なのだと。
どれくらいの小ささなのかと聞くと手を円の形にした。
かなり小さい。
ということは、結構な数がこの部屋を飛び回っていることになる。
数えて欲しいと頼むとめんどくさいと首を振られた。
どれほどいるのかと驚く。
「そんなにごっそり?今頃、愛し子が泣いてそう」
「見えてないから、いないのと同じだろ」
彼はフッと、相手の鼻を明かせたと満足そうに呟く。
「あの女は明日から妖精なしだ」
愛し子が見えないなんてことはあるのだろうか。
コレスは、その愛し子についても調査しておくとクッキーを、もりもり平らげていく。
焼き加減丁度なクッキーは、他に取られたくないほどのようだ。
それを見ながら、妖精用の皿に違う食べ物を入れた。
またなくなる。
やっぱりいるのだと、少し興奮が胸に宿った。
その後ろでコレスが教えた算数を忘れないようにか、紙に記入している。
役に立っているのかは今の所わからないけど、財布を出す速さがちょっと変化したかもしれない。
微々たる誤差なんだけども。
頬を膨らませて食べる男を横目に自身は、温泉のことやどうするかについて紙に書き連ねていく。
早く見つかりますように。




