99.わくわく
大仙人と共に栞太を元の世界に送ろう。
そう決めた凍夜がさっさと淡雪筍を探し出して、琅青と栞太と共に仙界に戻ろうと考えた時だった。
栞太が急に屈んだかと思いきや、散り積もる竹の落葉をかき分けると、素手で地面を掘り始めたのだ。
土質が柔らかいのだろうか。
どんどん素手でも掘り進めていく栞太を見下ろしていた凍夜は、本当に素人が掘り当てたかもと見守り態勢に入った。
栞太と同じく手で掘り進めていた琅青とは違って。
琅青は凍夜と栞太と二手に別れて、距離の離れたところで淡雪筍を探していたはずだったが、栞太が掘り進める事によって僅かに匂い立つ淡雪筍の匂いを嗅ぎ分けたのだろう。瞬時に栞太の元まで出現したのだ。
「少年。あとは吾輩に任せて、うぬは休んでいるがよい」
「いいえ。俺もこのまま掘り続けます」
「必死に掘らずとも、適切に淡雪筍を分割するぞ」
「わくわくしているんで掘り続けたいんです」
「わくわく、か」
「はい。わくわくです」
「そうか。そうだな。吾輩は要らぬ気遣いをしたようだ。よし。共に掘り続けよう」
「はい!」
(淡雪筍確定してるし。まあ、琅青の鼻は確かだろうから、そうなんだろうけど。これで、仙界に戻れるわけだけど。この子を異世界に戻せるわけだけど。大仙人様と一緒に………う~ん~)
よし万事解決だ。
そう喜びたい凍夜だったが。
(う~ん~)
何故だろう。
このまま栞太を元の世界に戻していいのか。
囁く己が突如として誕生したのだ。
(2024.4.12)




