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102.鱗の生え変わり
仙界には、守り手である二匹の龍が居た。
黒龍と白龍である。
滅多に本来の姿である龍の姿では姿を見せない二匹の龍ではあるが、時に気紛れに、時に仙界の危機的状況に加えて、或る状況下に置いて、龍の姿を露わにする。
鱗の生え変わりだ。
一気に剥がれ落ちる鱗は、薄い膜のように広がっては天空を覆い尽くしてのち、七色の眩い光をくゆらせて、数時間も経たずして消滅する。
鱗の生え変わり時期は不明で不定期。
数百年に一度と言われたり、数千年に一度とも言われたりしている。
季節も時刻も限定されておらず、真夜中の時もあれば早朝の時もあるが、時刻に関わらず、この眩い七色の光は視認できるそうだ。
この光彩陸離たる天空を前に見惚れる者も居る一方。
天変地異の前触れ、政治の大変革など吉凶の予兆だと人間界で恐れられていた。
同様に、妖怪界でも。
黒龍と白龍の鱗の生え変わりによる現象に強く影響を受けて、暴走する妖怪が居たからだ。
(2024.4.13)