第一話 足手まとい
『お前は勇者様の足手まといだ。』
見下したような言い方で仲間であるエデリーにそう告げられた。尤も、エデリーは僕のことなんか仲間だとは思っていないだろうがな。
僕はその言葉に納得するだけで怒り等は湧いてこなかった。
何故なら、自分でも確かにそう思うからだ。
魔道士という世界に一人しかいない名誉ある称号をもらっているエデリー。
世界コンテストで見事にチャンピオンになり、今も尚その座を渡していないローグ。
どんな目に見える傷も見えない傷も癒すと言われている聖女マリア。
そして、唯一魔王を倒せると言われている勇者アビー。
そのメンバーと肩を並べているのが痴がましいぐらいに、才能もなく何をやるにも一個下の自分。
ただただ、勇者にと幼馴染だからといってついてきた邪魔者。
『わかった。明日にでも抜けるよ。』
『……いや、今出ていってくれ。まだ、勇者様が寝ている。勇者さまは優しいお方だ。お前みたいな雑魚でも抜けたら悲しんでしまう。』
『……わかった。』
言われるがままに、荷物を置いて外に出た。もうあたりは暗くなっていて、しんと静まり返っていた。
──じゃあね、アビー。僕がずっとそばにいることができなかったけど、いつかまた出会えることを望むよ。
別れも告げることができなかった友に最後の言葉を呟いてから歩き出した。
***
「お腹が減った……。」
全ての荷物と紙幣をおいてきてしまったため、無一文状態である。当然、ご飯など買えるわけがない。
そしたら、お金を稼がないと。
すぐにお金を稼げる職業で思いつくのは2つ。
一つは冒険者。
すぐにお金を稼ぐことが出来て、簡単の依頼をやれば食料を買うぐらいのお金は手に入れられるだろう。だけど、命の保証はない。
もう一つは…体を売ること。
幸い、容姿には普通の人よりもまぁまぁ優れている。男でも抱く奴はいるし、一回売るだけでも意外と大金を手に入れられるだろう。その分、悪いやつに捕まれば……性奴隷かな。
──でも先に、生活を安泰にさせるのは……
「体を売るほうかなぁ。」
「ダメだ。」
「え…?」
無意識でポツリと行った言葉にまさか返事が返ってくるとは……驚いて後ろを向く。
そこにいたのは──
「アビー…?」
「そう。ルイの幼馴染のアビーだ。」
勇者の象徴の金髪の髪に蒼く透き通っている瞳を持った青年が元気いっぱいに自己紹介をした。
だけど、意味のわからない行動に僕は固まった。
「なん…で?」
「なんでってそりゃ、俺の大切な幼馴染が消えたんだぞ?それに体を売るとか言ってたし。そしたら駆けつけるってもんが幼馴染だろ。」
アビーにそう言われて、少し頬が緩んだ。けど…すぐに引き締めた顔に戻す。
「……でも、アビーは勇者だよ。僕になんてかまってる場合じゃない。」
──ごめんね、アビー。嬉しいけど…君と僕じゃ住む世界が違うんだ。君は…魔王を倒さないといけない。それに僕は足手まといだ。
理解してくれればいいのだけど、と思いながらゆっくりとアビーの顔を見る。
勇者という名がとても似合う美貌が少し悲しそうな……ではなく何かを決心した瞳をしていた。
それがどういうことか聞こうとしたとき、先にアビーが口を開いた。
「わかった。勇者だからラビィと一緒に入れないって言うなら俺は勇者を辞める。」
定期的に更新していく予定です!!