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私が見たもの続

『システムメッセージ:チュートリアル完了

称号:『優等生』『夢想家』を獲得しました。』


ドアをくぐった先は、

どんよりとした曇り空の広がる、冷たい空気のにじんだ街だった。


称号も気になるけど街のリアリティーに圧倒されてそれどころじゃない。


ここは…来たことがある?

ロンドンに雰囲気が似てる気がする、参考にしたのかな。


うっすらとした霧がほんのりと肌が湿らせ、身体の表面が冷めてく感じが似てる。


ここが『灰の都 ロンディニア』。


広場の様子を詳しくみて回ろうと考えた時

カチリと世界が止まった。


街の人 噴水 全ての挙動が固まる。


間の抜けたアナウンスが響き渡る


『ピンポンパンポーン!全プレイヤーのチュートリアルの完了、『灰の都:ロンディニア』への進出を確認しました!』


『これより、クリエイターから開幕の挨拶を行います!』


パッとついたスポットライトが、

中世ヨーロッパ風な衣服の人ばかりの世界に似つかわしくない白衣の男が曇天から降ってくるのを照らし出す。


その男は停止した噴水の水の上にふわりと降り立った。



「あーっテステス。ワクワクしてるところ申し訳ないけれど、ホンの少しワタシの話を聞いてください。」


男の声が響く。


「まずは、ログインありがとう。事前情報を全然出して無いのに食いついてくれた君たちの勇気に心から感謝する。」


「色々話したいが、手短に。この場にいる9865人のプレイヤー諸君にお伝えせねばならない事がある。感謝も大事だが、それ以上に大事なお知らせだ。」


…普通に広報のちゃんとしたオンラインゲームであれば開幕は接続5万人を超えるなんてざらにある。


私は父の関係で、このゲーム以外にもオンラインゲームの開幕に立ち会った事がある。

その時はカクついてこそいなかったものの辺り一面プレイヤーネームにまみれていた。


この始まりの広場は人は多いもののスペースにまだ余裕はある感じだ。


それも仕方ないかな。

まだ、お高い最新ハードに執拗しつようなまでに詳細で面倒な初期設定を乗り越えてやっと辿り着けるんだから。


凄いゲームだけど、私のような普通の学生はあんまりいないんじゃないかな?


とは言え、『VRオンライン』はアニメやSFじみたVRゲームだと思う。これから変に広告なんてしなくても勝手に広まるでしょう。



「このゲームは人間の夢の電子化及び共有化により成り立っている。君たちはバラバラの時間にログインした気でいるが結局はチュートリアル完了後、現実時刻の深夜一時までは寝落ちして、今この瞬間に夢の中に《《全プレイヤー》》が戻ってきたのだ!ここからヨーイ、ドン!でゲームが始まるぞ」



!?夢の共有化??

リアルなグラフィックだと思ってたけど、私たちは夢の中にいたの!?


本当にSFじゃない…どうして、こんなに凄いゲームなのに全然CMとかやってないのだろうか?


白衣の男の話は続く


「お知らせはもう一つ ある。

このゲームは基本的に1日一時間しか遊べない。しかし!その一時間はゲーム内では2日分の時間に引き延ばされるから、遊び足りないなんてことはないぞ!

なお、一時間を超えてインしようとしても寝落ちするだけになるから、注意してくれたまえ。

ちなみに今この世界は朝の9時だ。2日後の朝9時までの48時間を各自好きに過ごしてくれたまえ」


「あぁ注意点というかデメリットだが、このシステムは友達と会うのが難しい。ゲーム外部や現実での友達と遊ぶ際は別途説明書を読んで頂きたい」


「こんなところかな?伝え忘れがあれば、また専用アプリに通知がいくし、問い合わせもアプリで送ってくれればワタシとAIが必ず対応しよう。」


「以上だ、ではジャマしたね。どうぞ初日の2日間を有意義に過ごしてくれたまえ。」


フッと噴水から男がスポットライトの光と

ともにかき消える。


瞬間に噴水の水が落ちる音、

現地の人の喧騒、世界を構成する音が帰ってきた。


いきなり、始まって

いきなり、終わった開幕の宣言の余韻か。

間を開けて私たちプレイヤーも動きだした。


先ほどの話について 語り合ったり、攻略に乗り出したい人が何処かへ走り出したり思い思いに行動し始めた。


私はどこへ行こう?


広場を見渡すとちょうど私の後ろにある、大きなレンガ造りの建物に看板に『Guild』と書いてあった。


…ここに入るのが正解だろうと予想し、私はドアに入った。


_____________


『冒険者ギルド』というワードがチラホラ聞こえる。やはり、ここが正解みたい。


丁寧にニスが塗られたしっかりとした作りのドアを開いた先は、長椅子が幾つもある役所っぽい場所だった。


「新規登録窓口はこちらですよー」


声のする方向を見る。カウンター窓口の中の端に小部屋が5つほどある。声は中から聞こえている。


幸いまだ、あんまり混んではない。

さっさと入ろうと私は小部屋の前に向かう。


私と同じ初期服のおじさんがスッと入ると、次の瞬間に入口とは別にある横の扉から出てきた。


「!?」


おじさんは普通にギルドから出ていったが、

あの一瞬で登録をされたの?


とりあえず、私も入ってみよう。


_____________



「ようこそ、冒険者ギルドへ!ご登録ですか?」


「お願いします」


冒険者登録の受け付け部屋には、私より一つ二つくらい年上のお姉さんがいた。

部屋の中は思ってたより広い。間違いなく外観より広い。


「私、アズ様を担当させて頂きます。レジスタと申します。」


レジスタさんの話し方や雰囲気はメイカさんにとても似ている。


「お願いします。ここでは何か説明もあるのでしょうか?」


「ございます。ですので、チュートリアルと同様に個別に時間の流れの違う空間に案内しております。後ろにお並びの方を気にせずゆっくり説明を聞いて頂けます。」


にこりと笑って答えてくれる。

男の子ならデレデレしちゃいそうなキレイな営業スマイルだ。


「すごいですね…夢の中を操る技術って」


創造主クリエイターの研究の成果です。お話はこれくらいにして、冒険者チュートリアルを始めます。」


「お願いします」


「まずは、ステータスをご覧下さい。」


「はい」


_____________


【Name:AZ】

種族:ハーフリング


称号:『優等生』『夢想家』


LV:0


HP:103

MP:104


STR(力):7

INT(知力):3

DEX(器用)5

AGI(敏捷)10

MIN(精神):1

VIT(頑強):3

SP(スキルポイント):75

VAR(拡張性):75-50=25


オリジンスキル:

雹嵐ヘイルストーム


【効果】総合AGIを三分間2倍にする。

物理攻撃に氷属性付与。

歩数に応じて脚部に雷を蓄積する。

雷は脚を使った攻撃時に解放。

雷解放にて残り時間に関わらず効果

を終了する。

クールタイム30分


【行動】詠唱必須

詠唱時に他の行動不可。

発動後は1秒以上の停止不可。

VARコスト50

_____________


「ありがとうございます。そちらの項目のSPをタップしてください。」


「SP…あった」


タップするとステータスの画面に項目が増える。


_____________


SP(スキルポイント):75


獲得可能スキル一覧


『戦闘スキル』


・近接物理攻撃

・遠距離物理攻撃

・魔法攻撃


・防御強化

・回避強化

・回復支援


『生産関連スキル』


・武器生産

・防具生産

・装飾生産

・消耗品生産

・インテリア生産

・料理生産


『特殊スキル』


・職業スキル

・称号スキル


_____________


おぉ…



「そちらのメニューで獲得可能なのが『システムスキル』です。」


「項目がたくさんありますね」


「はい、まずは職業スキルをタップしてください。」


_____________


・職業スキル


・冒険者Lv0 cost SP0



_____________


「初めは冒険者のスキルのみ表示されると思います。」


「他にはないんですか?」


「最初はこちらの冒険者スキルを最大レベルのLv10にしてもらいます。その後の職業スキルはアズさんのスキル構成次第で派生します。」


冒険者スキルはチュートリアル用のスキルって感じなのかな。


「職業スキルと称号スキルは他の『システムスキル』と違い複数の行動に補正がかかったり、ステータスに直接の影響を与える物もあります。」


「冒険者だと何が出来るんですか?」


「野営、剥ぎ取り、サバイバル料理、食中毒耐性、運動能力補正、等の冒険者として必要な要素の補正が少しずつ手に入ります。」


「結構お得ですね」


「大盤振る舞いです、costも0なので獲得しない手はないスキルになります。」


「ですね」


そうして冒険者スキルを手にいれた。


「おめでとうございます。アズ様はこれで冒険者になりました。」


「冒険者になったことで、クエストボードの使用・魔物素材の売却が可能になりました。」


「職業システムがあるんですね」


「その通りです。一例を上げますと冒険者のスキルと近接物理攻撃から『剣』と回避強化から『軽業』を取って職業スキル『軽剣士ライトソードマン』を取得可能になる。といった具合になります。また、職業スキルを持ってるのが獲得条件のスキルもございます。」


「考えて取るのが大変そうですね」


「スキルポイントも限りがあるので構成は計画的にやるべきですね。救済措置として、教会にて、リセットアイテム『忘却の聖水』がございます。」


「…課金アイテムですよね?」


「…まぁ、そうですね。教会の貴重な収入源ですので。」


どこのゲームもそういった課金アイテムは付き物だ。


「続いて、称号スキルの説明をします。」


「称号スキル?他のスキルとは何が違うのですか?」


響きからして、称号と関係があることは分かるけど何なの?


「称号スキルはプレイヤーに対して付与される称号にスキルとしての効果を持たせるものになります。最初の称号はチュートリアル完了時に付与されます。今後も全プレイヤー毎に何かしらイベントを達成した際に称号付与が行われます。」


機会はプレイヤーに対して平等にあるようにしてるのかな。

…なるべくゲームバランスを考えてるように見せてるのになんで、私はチートスキルをもらえたのかな?よく分からない運営だ。


「私の場合『優等生』『夢想家』ですね。」


「はい、他の例としてはチュートリアルで10分以内に全ての設定を終らせてドアについての説明をも聞かずにくぐると『生き急ぎ野郎』『猪突猛進』が付与されます。」


「称号スキルは全てステータス強化など、支援効果のあるパッシブスキルになります。称号を獲得したら、なるべくスキル化をオススメ致します。」


確認してみよう。

_____________


・称号スキル


『優等生』

【効果】

NPCからの好感度が上がりやすくなる。

lNTの成長率を上げる。


【代価】


スキルポイント:10


≪きちんと話を聞いて言われた通りに出来た人。ただし言いなりになることなかれ。≫


『夢想家』


【効果】

オリジンスキルの獲得コスト微軽減


【代価】


スキルポイント:10



≪夢に夢見る貴方の想いは何を形作り何を為す?≫


_____________


有用そうだし、獲得しちゃおう。


「スキルに関しましては説明は以上になります、後は物理攻撃スキルなどは実際に獲得して試してみて下さい。」


緊張していたのだろうか。

説明を終えた安堵でホッと、笑顔を浮かべるレジスタさん。


「実践ですか…このリアリティの中で戦闘するなんて腰が引けそうです。」


「武器を持ってスキルを揃えればなんとかなるように設計されてます。痛みもほぼ無いので挑戦してみてください。」


やるだけやってみよう。

がんばるぞいっ!


「そこで次は戦闘の実践の為、東の平原に行くことを推奨します。東の門番に一言声をかけて下されば『ハジマリ』の武器をどの武器種でも差し上げます。また、合わなければ途中で武器種交換も可能です。」


「迷っちゃいそうです。」


「今後使っていくことになるものですから、存分に悩んで選んでください。」


ちょっと意地悪そうに笑ってレジスタさんは締めくくった。


「以上で一通りの説明は終わりになります。何か分からない事はございませんか?」


「大丈夫です。」


「かしこまりました、お出口はあちらです。楽しんで、冒険してくださいね。」


「はい!」


ドアをくぐって冒険者登録室チュートリアルの外に出た。



_____________


ギルドを出て右手をまっすぐ行くと東の平原に続く門があった。


私は門番さんに声をかけた。


「すみません、武器の貸し出しをお願いできますか?」


「はーい!武器の貸し出しはこちらですよー!」


まだ、余り人が来てる様子はない。

緊張ぎみの門番さんに案内される。

新人さんなのかな?


温かい目で門番のお兄さんを見る。


「お疲れ様です…」


「?ありがとうございます」


そうして、案内された武器庫には色んな武器があった。


短剣 直剣 曲剣 幅広の剣 刀 刺突剣 両手剣

長槍 短槍 手斧 大斧 ハンマー 棍 トンファー 金属バット 鞭弓 短弓 クロスボウ 紐 ブーメラン杖が短いのから長いのまで多数……トゲ付きの棒?魔導書っぽい本付 メリケンサック


…色々あった。


「最初は種類の多さにみなさん驚かれますけど、性能はほぼ変わらずです。」


「どれがいいかなぁ…」


「どうぞ、手にとってお試しください。」


手近な武器を手にとっては振るうイメージを思い浮かべる。


中々イメージはつかない…


私の強みは脚の速さだから、やっぱり短剣系の武器かなぁ。

短剣カテゴリーをいくつか振ってから決めた。


「これでお願いします」


「かしこまりました」


_____________


名前:ハジマリのダガーナイフ


物理攻撃力:10

武器耐久度:∞


≪刃渡り20cm。取り回しのいい両刃短剣の量産品。急所に突き立てましょう。決して壊れないハジマリの武器≫


_____________


「これが一番良さそうです。」


「それじゃ、そいつで手続きするよ。」


門番のお兄さんが更々と書類に何かを書き記して、手渡してくれた。


「はい、ここにサインしたらもう持っていっていいからね」


「分かりました」


武器を貰いますって申請用紙。『灰の都』の中で貰った武器を使って暴れませんって誓約する項目もある。


AZと記した。



「よし!これで冒険者としての準備が整ったね!門から出て東の平原のモンスターの駆除がんばってね!」


新人冒険者を元気よく見送ってあげようと思ってくれてるのか門番のお兄さんが大きな声で送り出してくれた。


「はいっ!いってきます!」


私は初めての戦闘にワクワクしながら門を出た。


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