VS黒めがね
まず、首輪と腕輪を外すのは簡単だ。本来、従属の状態異常は特殊なアーティファクトで外す様な物の上に今、魔術と魔法を使えないが、問題はない。
「世界の全てを結びつける永久の力を司りし契約の魔よ、『レン』の名の元に導く、我らを従属という名の契約から解き放ちたまえ。『魔導、契約解除』。」
そう唱えるだけで自身の体力な魔力と引き換えに首輪と腕輪は光を放つと外れる。後は脱出だけなのだが、問題はここが地下で 、出口が黒めがねの部屋しか無いと言うことだ。まぁそこは武力行使でいいだろ。ユウの手を引き外に出ると階段を登る。そして階段の上に着くと一気に扉を開ける。
「?・・・何故、あなた達がここに!?しっかりと首輪と腕輪をした筈です!・・・まぁいいでしょう、みなさんやってください!」
また、わらわらと暗殺者が出てくが今回はもう遅い。対魔術結界を発動している装置にダッシュでついた自分はスイッチを押す。それと同時にユウが暗殺者の周りに即座に結界を張り巡らせる。大規模な結界ではないので詠唱が必要無いのだろう。暗殺者達は結界を叩いて破壊しようとしているが、それは無理だろう。ユウの結界は破壊不能にも等しいのだから。
「こうなったら私が相手するしか無い様ですね。」
そう言うと黒めがねの男は、ナイフで自分にかなりの速さで切りかかってくる。しかし目で追えない様な速さではない。メニュー機能についてるインベントリから剣を取り出しナイフを受け止める。
「あなた、本当に魔術師ですか?しかも子供の。」
実際、アバターを決めるとき体格でステータスが変動するものだ。
男は、後ろに下がるとおそらくインベントリから出したであろうたくさんのナイフを投げてくる。それを剣で切り落としながら答える。
「あいにく、自分は人族アバターじゃないんですよ。」
人族はステータスが全ての平均値である種族で、全てのスキルを手に入れる可能性を持っているのである。
最後の一本を切り落とした所で、目の前に突然男が現れ、ナイフを振り下ろしてくる。おそらく剣で死角になったところから接近して来たのだろう。それを横にステップしてかわし、男に剣を振るも、もう一方のナイフで受け止められる。
「じゃあ、なんの種族なんです?」
「簡単ですよ。魔法や剣術が出来るが、精霊術や陰陽術、特に神聖術が出来ない種族ですよ。」
そう答えると、一旦後ろに下がり、剣で防御しながら唱える。
「書庫よ、その本を呼ぶ出したまえ『魔導書、魔法典』。」
剣を持っていない方の手の上に本が出現する。男は魔法を自分が使おうとしているのが分かったのだろう。一気に攻撃に出た様だ。それを避けながら目次からお目当てのページを探す。しばらくして見つけると自分は剣を思いっきり横に振るう。男は咄嗟に後ろに下がる。そこに本を向けて魔法を発動する。
「その魔法、具現化せよ。『拘束』。」
魔法陣からロープが出ると、そのまま男を縛る。これにて捕獲完了だ。
「まさか、あなたは魔族だったとは・・・。それが分かっていたら、神官を雇えばよかったです。」
「・・・そうかもしれませんね。」
そう呟く黒めがねの男に答える。そして後ろで傍観していたユウの方に向くと、今まで思っていたことを言う。
「ユウ、なんで見てるだけだったの?」
「久々に、お兄ちゃんが剣で戦ってたからついつい見ちゃった!」
笑顔でそう言うユウに溜息をつくと、とりあえずきたさんに窓の外へと声をかける。
「きたさん、こっちは終わりましたよ。」
「レン君!よくやったね。じゃあ迎えに行くよ。」
するとと、きたさんが転移でこっちに飛んでくる。
「レン君にユウ君、お疲れ様。」
「ありがとうございます。それで、ここに転がってる黒めがねは、どうしましょか。」
「私は黒めがねじゃないですよ!ちゃんとミストって名前があります!」
なにか黒めがねが言っているが、無視してきたさんとこれからどうするのか考えるのだった。
結局、黒めがねの一味は、衛兵に預けることになった。そして今、自分達のクランに帰っているところである。
「おいー、お前ら、なんで俺を置いていったんだ。」
「そうですよ。マスターはともかく俺も置いてくなんて。」
「おい天堂、それはひどくねぇか。」
「だっていっつもマスターは、突っ込んでくじゃないですか。」
前を歩くマスターと、天堂君の二人が何か言い争っている。そこに時雨さんが行くと、
「あなた達が、みんなに紛れて先に言っちゃうのが悪いの。反省しなさい。」
そう言い放つ。
「「はい。」」
その言葉にやけに素直になる二人であった。
「それにしても、レン君とユウちゃんが無事でよかったー。」
時雨さんは、唐突に自分達の方に向くと抱きついて来ようとしてくる。それがやけに早く、疲れていることもあって、結局二人とも抱きつかれてしまった。それを見てきたさんが、
「いやー、本当に二人とも無事でよかったよ。」
そう言うのだった。
王座のある部屋に、二人の人影があった。一人は王座に座り、もう一人は跪いていた。
「協力関係になったルビナス王国のクランが、連絡を途絶えました。」
「うむ、まさか即座に潰されるとわな。もしかしたら関者がいるかもしれんな。調べておけ。」
「はっ。しかし魔術師の方はどうします?」
「それについては、大丈夫だ。あのクランから寝返りそうな者を見つけたからな。」
その後、二人はしばらく話を続けるのであった。