道明寺 晶
あの巨大な影は何であったのか私はいまだ内に秘め外には出していない、大体あの様に巨大な何かが存在するなら誰かしら人目に触れ自衛隊が全火力を持って挑むであろう、巨大であるが故隠れ潜む場所も限られる思い当たる場所といえば海中くらいしか思いつかないがそれでも必ず見つけ出され対処されるであろう、しかしニュースにも上がらずましてやSNSを覗いても欠片すら書かれていない、私にしか見えていなかったのか“幻覚”あの時の私の心理状態を考えればその線も捨てがたい、ところであれがもし実在すると仮定するならば今回の富士山の噴火に関わりが有るのであろうかあの場所にいたのであればそう考えて当然、噴火見物に現れたとは思い辛い、では今回の災害はあの巨人の意思によって起こされた事になる“作為的災害”になる、私は色々と考えたがそれを止めた我々特救の使命は言うなれば対症療法、発症した症状に対応するのみ根治療法ならば発症原因の治療を行うのだが特救はそんな部署ではないのだ、それは賢人達が行えば良いのだ。
だがさて置きであった、私は救える小さな命を自らの失態でそれを失ったのだ、いまだにあの少女の重みと温もりをこの腕が覚えている、母親はやはり亡くなっていた父親は単身赴任で都内にいたらしく難を逃れていたが妻子を同時に失い意気消沈するばかり『お前の所為で娘は死んだんだ!』と罵ってもらった方が救われたかもしれないが父親はただ『ありがとうございました』と言うだけで後悔の念は増すばかりだった、しかしそんな私の沈んだ心を癒す暇も与えず災害は立て続けに起こった、まるで特救設立のきっかけになった同時多発災害の再来の様に。
既に5日間基地詰めで家には戻っていないが問題はなかった多少スーツ内は匂っていたが他人の体臭ではない、時間があれば技術開発課へ赴き消臭機能を装備して貰おうと考えている間にティルトローター機は押上上空で旋回しランディング場所を探していた眼下には既に赤色灯が多数集まりその先はオレンジ色に染まり黒煙が立ち昇っていた、木造住宅が建ち並び道路も狭く大型車両は入って行けぬ木密地域、火の手は押上3丁目の1ブロックを火の海にしていた、機は結局スカイツリーの広場へランディングすると我々は消火にあたっている指揮所へ向かった。




