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私は私で、幸せになろうと思います  作者: みなと


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新しい生活の準備と協力者

「えーと……これは……あぁ、捨てましょうね」


 ぽいぽいと不要なものを仕分けしつつ、いらないものは容赦なく捨てていくレイラ。

 出て行く、と宣言してまだ一時間程度しか経過していないというのに、作業の手はとても早くて、迷いがない。


「あぁ、これは持っていかないといけないわね。こっちは……いらないかな」


 必要なものだけ、テキパキと荷物をまとめていけばある程度の大きさの鞄に詰め込み終わってしまった。

 こんなものか、と思いつつクローゼットにかかっているドレスを眺めるも、別に何の気持ちも湧いてこず、開いた扉をそのまま閉めた。全て、不要だこんなもの。

 リベリアとお揃いにしましょうね、と何故か生き生きとした母親によって揃いのデザインばかりにさせられてしまっている。

 特に好きでもないデザインなのだから、愛着など一切ない。


「……そもそも、寮生活を始めようだなんて考えている今の私に、ドレスはいらないわよね。今後どうなるかなんて、分からないんだし。必要な場には出ない、で解決できちゃうし」


 令嬢の身分を捨て、普通に働きながら生活をしていくか。この家族と関わらないようにできるのであれば、それも悪くないかもしれない。

 そもそも、自分のことは自分でできるように、と厳しく躾けられていたおかげもあってか、レイラの根性はだいぶ逞しくなってしまっている。


「これくらいかしら」


 改めて荷物を確認してから最後に鞄を持ち、さぁ出ていこうか、としたところで部屋の扉がノックされた。


「はい?」

「失礼するわね!」


 バン!と大きな音を立ててから部屋に入ってきたリベリアの姿を見て、何も反応せずにそのまま鞄を持ち直しスルーして行こうとしたが、がっつり腕を掴まれた。


「何?」

「悔しいんでしょ」


 フフン、と勝ち誇ったように微笑んでいるリベリアは、堂々とした態度でびしり、とレイラを指さした。だが、レイラは意味が分からずにポカンとするだけだ。


「……何が?」


 そして、淡々と指摘されてしまい、思わずリベリアはたじろいでしまうが、再びきっとレイラを睨みつけて口を開いた。


「何が、って。わ、私は、貴女の愛するジェレミー様と……」

「……愛する……って、え?」

「な、何よ」

「愛する……ねぇ……」


 はて、と首を傾げているレイラを見て、リベリアはびしりと硬直した。


「誰が、誰を、愛してる、って?」


 真顔で問い返してくるレイラに、リベリアはうぐぐ、と黙ってしまう。

 レイラは、これっぽっちだってジェレミーのことなんか、愛していない。敬愛をしているか、と問われたとしても『いいえ』としか返さない。


「あと、離してくれない? 腕、痛いんだけど」

「離したら逃げるじゃないの!」

「リベリアにこれ以上精神的負担をかけないように、私は家を出るの。理解している?」

「だ、だから!」

「理解しているなら離して、邪魔しないで」


 レイラの淡々とした反応に、リベリアはすっと腕を離してしまう。

 溜め息を吐いて鞄を持ち直したレイラは、部屋を出て行く。リベリアとしてはこのまま逃がしてなるものか、とすぐさま追いかけようとするが、ふと足を止めたレイラはくるりと振り返った。


「あぁ、そうそう。私が出ていく原因……いいえ、きっかけをくれてありがとう。感謝しているわ」

「!?」

「これから先、この家を残すために頑張ってね」

「……は?」


 今まで見たことの無い笑顔を向けられ、リベリアはあんぐりと口を開けてしまう。


 学校から帰ってきて、夕飯前だったこともあり幸いにも外は明るいし、入寮に関しての書類もしっかりゲットしている。

 卒業までの学費に関してはどうにかしてもらえるだろうし、寮費に関しても問題は無い。が、まさかあんなにもトントン拍子に進んでいくとは思っていなかった。


「とりあえず、家は出なきゃいけないから……」


 いつも通り、廊下を歩いていると、メイドがかけよってきた。


「何かしら?」

「お、お嬢様!」


 余程急いで走ってきたのか、ぜぇはぁ、と息を荒らげてやって来たメイドに、レイラは不思議そうに首を傾げる。


「で、出ていく、のですか……!」

「ええ。お世話になったわね」

「そんな……」


 今まで、何もかもリベリア最優先にされてきた。メイドたちが世話を焼くのもリベリアが優先されてきたし、食事のメニューもリベリアの好物ばかり。

 お茶の時間のお菓子も、リベリアの好物ばかり。

 だから、何だかもういいや、と思いきれた。体が弱いリベリアを優先するなら、それはそれで良い。

 この家がそうやると決めたのだから、このまま進んでいけば良いだけの話。


「お世話になりました、さようなら」

「ま、待ってください! お嬢様がいなくなったらリベリアお嬢様が……」

「ふふ、もうリベリアのことなんか、家のこと含めてなーんにも知らないわ。皆で仲良く、ね!」


 るんるんとした足取りで出て行くレイラの後ろ姿を見送るしかなかったメイドは、その場にへたり込んでしまったのだった。

 何だか、ここから先に起こる出来事に関して、嫌な予感しかしないまま、その日は終了してしまったのだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ごめんね……いきなりやって来て泊めて、だなんて」

「良いのよ、レイラとのお泊まりは何日だって歓迎するわ!」


 レイラが頼った先は、チェスカの家だった。

 リッドの家の方が近いし、付き合いの長さもリッドの方が長いのだが、そこは男女。泊まるならチェスカの方が悪い噂は一切ないだろう、と判断した。


 なお、どうやって連絡を取ったのか。


 レイラは物凄い行動力を発揮し、街まで歩いていってから辻馬車の料金を聞き、手持ちのお金でチェスカの家まで向かったのだ。


 今までなら家の馬車で来ていたレイラが、辻馬車でやってきたものだから、チェスカは慌ててやってきて客間の準備をさせた。


 だがしかし、『お泊まりなんだから寝るのは一緒よ!』と目をキラキラと輝かせたチェスカにより、夕飯を食べて入浴も済ませてから、チェスカの部屋に拉致(?)されたのだ。


 なお今は二人揃ってベッドに寝転がっている、という状況である。


「……それにしても、レイラの行動力にはお見事、としか言えないわ」

「そう、かしら」

「思いきった判断ができるようになったの、私は凄く嬉しいから良いんだけどね」


 うふふ、と笑っているチェスカに、レイラもつられて微笑んだ。


「とりあえず、この書類があったら入寮も出来るし……明日登校したら早々に先生のところ行きましょ。あ、もし万が一の後見人が必要なら言ってね?」

「いやそれは」

「家の皆、レイラが大好きなのよ」

「あのね、チェスカ」

「勿論それはリッドの家でもそうだとは思うんだけど」

「はい!?」


 ぎょっとしたレイラだが、寝る前のハーブティーを持ってきてくれていたチェスカ付きのメイドがうんうん、と首を縦に振っている。

 あ、本当なんだ……とレイラが思っていると、チェスカはにんまりと微笑んで、ベッドにごろりと寝転がった。


「あのね、何回でも言ってあげるけど。レイラは色んな人に愛されまくりなんだから、自覚しなさーい?」


 足をパタパタと動かしていると、メイドから『お嬢様!』と叱られてしまったチェスカは不満そうにしながらよっこいせ、と体を起こした。

 さすがに行儀が悪かったか、とボヤいているチェスカだったのだが、メイドからお茶が入ったことを教えてもらうと表情をぱっと輝かせてレイラの手をぎゅっと掴んだ。


「レイラ、とりあえず寝ましょ! 寝て、起きて、朝ごはんを食べてから、学校に行って、書類を提出!」

「……うん」

「その前にこれ飲みましょ~。寝つきが良くなるし、美容にもいいんだから!」

「もしかして……」

「私の特製ブレンドよ!」

「やっぱりそうね、……あれ、でも前にもらったやつとちょっと違うような……」

「改良版だからね!」


 フフン、と得意げに笑っているチェスカ。彼女はあれこれと商品開発をしており、めちゃくちゃ家の役に立っている。

 なお、このお茶は貴族のご令嬢たちから大変好評で、予約必須な商品となっている。

 レイラは以前別バージョンを飲んだのだが、その時は寝つきが良くなるお茶、というだけだった。一回だけ飲んだものの、残りはリベリアに奪われてしまっていた。また飲みたいな、と思っていたのだ。


「嬉しい……前のはリベリアに取られちゃって……」

「は?」


 いただきます、と言ってからお茶を飲んで嬉しそうに表情を緩めているレイラの発言に、チェスカは一瞬で怒りの表情になる。


「あのクソ女……っ!」

「飲み切って、また飲みたい、ってジタバタしてたけど結局買えなかったらしくて」

「…………あぁ、思い出した」


 チェスカもお茶を飲んで、怒りの感情をどうにかおさめ、記憶を探る。

 レイラの両親が『特製のお茶を買わせてくれ!』と家に乗り込んできたものだから、チェスカの父が遠慮なく追い返した、と言っていたのだ。


「うちのお父さまに感謝だわ」

「追い返された、って言ってたわね。ちょっとだけざまぁみろ、って思ったわ」


 あはは、と笑うレイラには迷いなどもう無い。

 むしろ清々しいほどで、これなら家が何をどう言ってこようとも、恐らく何の問題もないだろう、とチェスカは判断した。


「あぁそうだ、レイラがお風呂に入っていた時にお父さまが言ってたんだけど」

「うん?」

「寮に入るまで、うちに居てもいい、ですって」

「え!?」


 さすがに一日だけで……とレイラは思っていたのだが、その考えも見抜いています、と言わんばかりにチェスカはニヤリ、と笑った。


「手続きに時間がかかるかもしれないし、その間宿に泊まらせるなんてさせたくないからな、って」

「えぇと」

「色んなことが整うまで、ちゃーんと、保護しててあげるから安心して~」


 語尾にハートマークが付きそうな程にご機嫌状態で言われたレイラは、ポカンとするがまたすぐに笑顔になる。

 いつもより、少しだけ遅くまで起きていて、その日はとても穏やかに眠れた。家にいるときは、常にリベリア絡みのとばっちりを受けていたレイラからすれば、とても穏やかで優しい時間だったのだった。

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