神との対話 壱
………消えないなぁ………
どれぐらいの時間が経っただろうか。
俺様の意識は未だはっきりと残っている。
高すぎる魔力の影響か、魂のみの精神体となっても意識が霧散する様子が一切ない。
こればかりは仕方ないな。
退屈ではあるが、瞑想だと思ってボチボチと時間が経つのを待つことにするか。
「もし………」
目はないが、スッと目を閉じる意識で瞑想にふけっていた俺様に、ふと声がかかる。
目も耳もなく、感じただけであるがやけに高い、女の声である。
「もし、そこな迷える魂よ」
今度はハッキリと聞こえる。
「憐れなり。夢半ばに倒れしそなたの未練が今もまだ消えゆくことを拒むであるか」
ん?拒む?未練?何のことだ?
「しからば我が従属となりて再び生を得る権利を其方に与えよう」
こいつはさっきから何を言っているのだ、姿は見えぬが、神族の類か。言葉の端々に荘厳さが伺える。
「さあ、選べ。そして再び生を掴むがいい」
神?がそう言うと、目の前、というか俺様の意識の中に文字が浮かぶ。
【転生しますか?…はい。………いいえ。】
よくわからんが、【いいえ】を選ぶ。
「選んだな。さぁ手を取るがいい。これより先は其方の新たな門出となる………って、え?えええっっ?」
意外だったのか、予想していなかったのか、やたらとでかい金切り声で叫ぶ神。
「ちょっ、待って!タンマ!ナシ!やり直し」
いきなり口調が幼くなったな。
すると、先程の文字がまた浮かぶ。
変わらず、【いいえ】を選ぶ。今度は即答で。
「ちょっとおおおぉ!正気なのキミ!」
「何が?」
思わず声を上げてしまった。
正確には残った魔力を制御して念話で答えたものだが、神も驚いた様子であったが、会話ができるのなら話が早いと思ったのか、すぐに言葉を続ける。
「転生だよ?もっかい人生やり直せるんだよ?未練あるでしょ?今なら特別に能力つけるからね、ね。考え直そ?」
「いや未練も何も無いんで、転生とかいらん」
ええっと神が漏らす。
嘘ではない、本当に未練はない。
魔王としての成すべきことと、後進に対しても引き継ぎは終わっている。
いなくなった後のことまで考えてはいられないし、考えるつもりもない。
「じゃあ何故ここで彷徨っているんだい。普通なら魂は霧散して元素に還るのに。それこそ強い未練があるとしか」
「生前、魔導の頂を目指していてな。死後の際その魔力が魂に付随してしまったらしく魔力枯渇せんと消滅しないらしい」
嘘はついていない。
禁呪や古代魔法をはじめとした数多くの呪文を習得し、魔導を統べる者、とかいう称号は得ていた。
相手が一応神であるので、元魔王であることは伏せておこう。
「なので、転生は望まんのでこのまま闇に漂って消滅を希望する。ではさらばだ」
そう告げて神の前から虚空の彼方に過ぎ去ろうとしたが、俺様の魂がガッっと捕まれる。
「………ダメ」
「え?」




