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元魔王の異世界冒険譚  作者: Undo
第一章 魔王と神と儀式と
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神との対話 弍


「ダメ」

「はい?」

ガッチリと俺様の魂が、ものすごい力で掴まれる。


「ダメったらダメェェッッー!」

「とりあえず話だけでも聞いてよぉぉ。」

「本当に後がないんですぅぅ!!!」

「お願いだからぁぁ「はい」って言ってぇぇえぇ!」


グチグチネチネチと呪文のように吐く言葉は聞いていて気持ちの良いものではない。


「お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします」

「気に入らなかったら断ってもいいから」

「とりあえず話を聞いてヨォぉぉっっ!!!」


目の前に先程の選択肢が何度も映し出され、何重にも重なって迫ってくる。


いかん。ゲシュタルト崩壊してきた。


別にたいしたダメージでもないが、やっぱり気分の良いものではない。


ふぅとため息でも洩らしたいが、あいにく洩らす口もなければ、息する器官も失せている。


ソッと【はい】を選択すると、先程までギリギリと締め付けられていた拘束がパッと外れ、自由になった。


「あ、ありがとぅぅ」


おそらくではあるが、泣いているのだろう。

先程とは打って変わって、明るい声音だ。


「勘違いするなよ神よ。話を聞いてからだぞ」


ウッと言葉を詰まらせる神。 


そう、俺様はゆっくりとこの虚無の空間を漂っていたいのだ。


それには、この神の駄々が邪魔。


とりあえず話聞いて、難癖つけて断ればいいか。


「わかったよ…」


露骨に落ち込んだ声で答えるな。


「で?何故そこまで転生させたい?」


えっと言葉を詰まらせる神。


当然気になる。 


前世でも偶に転生者とか、神の代行者を名乗る輩を目にしている。

悉く返り討ちにしたが。


不毛な神魔の争い事や諍いに駆出そうもんなら即断るつもりである。


どこぞの世界の平和なんぞに今さら興味はない。


「それは」


「それは?」


「キミにボクの眷属となって次代の神の代理戦を戦って欲しいんだ」


「うん。断る」

「待ってエェェッッ!」


やっぱりこんな話か。


即断り、虚空に消えようとする俺様を再度ガッチリと掴む神。


意外と反応いいな、コイツ。


「ホント色々と後が無いんです。」

「詳しく話すから。事情があるんですぅぅ」


悲痛な叫びではあるが、俺様を掴む手にはギリギリと尋常ではない力が込められる。


話だけでも聞かんと終わりそうにもないなぁ。


「わかった、わかった。話だけは聞くからとりあえず離してくれ」


言葉を向ける俺様に不信感を持ったか、すぐには離さない神。


「あと、念話は疲れる」

「それに顔もわからん奴とどう接していいか対応にも困るんでな、なんとかしてくれ」


これは、本当である。


魔力を微細に調整して、言葉として飛ばすのは結構高度な事なので疲れるのだ。


それに、あくまで今俺様の前にいるのは、【自称神】その真価も分からんのでは交渉にもならない。



視界の一つでも与えてくれればいいが…


「なんとか?えぇっと、これでどう?」


フゥっと風に吹かれた感覚の後に、視界が広がる。

真っ白なだだっ広い空間が映った。


…本当に神を名乗る奴らはこういう所好きだな。


「お前が神か」


俺様の目の前に、1人の女が立っていた。


見た目はあどけない少女。


腰まであるかと思う黒髪を一つに結い上げている。


黒曜石を思わせる大きな瞳はキラキラと輝いており、肌艶も絹のような滑らかさが見て取れる。


神が纏う淡いブルー色の法衣や周囲の空気なんかが所々輝き、神々しさを感じるものであった。


ザ・神様。みたいな奴だ


「そう。ボクはヘスティア」

「はじめまして転生者くん」


ヘスティアと名乗る神はクスリと笑いながら、仰々しく頭を下げた。

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