魔王の舞台
「もういいか?」
低く、重く呟いた。
少しだけ傾聴の魔力を乗せて。
耳障りな嘲笑が止み、聞くに耐えない雑言は鳴りを潜めた。
やっと静かになったな、俺様の言葉に神々の視線が注がれる。
「子どもの喧嘩じゃないんだ。くだらんことを言っていないで、始めようではないか。」
そうだ。
さっさと始めて、終わらせよう。
虚無に至るまでの僅かながらの暇つぶしなのだから。
フゥッとため息が聞こえた。
奥に座すドレッド神、ニュークリアのものだった。
「転生者よ」
「なんだ?」
「よもや、神々の遊戯のルールを聞いていないのではないか。」
いや、と俺様は答える。
「俺様が聞かされた話は単純だ。」
神々の遊戯
神々は十柱。
各神は、死者やそれに準ずる人間を代理として選ぶ。
代理は一柱につき三人まで。
加護と、ひとつの特殊技能が与えられる。
めでたく優勝した神には【神の頂き】が与えられる
と、色々聞いていた内容について、要約してみせた。
「で、あれば。未だ遊戯の開催には至らな…」
「いやいや、出来るだろうよ」
言葉を遮り、自らの異を唱える
「参加する1神は3人の代理を、立てなければならないではなく、代理人は1神につき3人までだ」
場が静まる。
目を丸くする神の面々。
「何を…」
「お前達が言うルールだよ」
続く抗議の言葉は遮る。
「代理人を1人ではダメだ、という内容ではないな」
「1人だけが代表で何か問題でもあるか?」
「むしろサッサと事を始めようではないか」
早口で一息に巻くしたててやる。
どよめきが神々の間で起きているのがわかる。
当然だろうな。
「意味はわかってるのかな?」
ギルベルトが問いかけてくる。
「何がかな?」
悪戯っぽく返してみる。
うすら笑いを崩さないギルベルト。
反応は薄いか…
「後からの追加はできないし、君がいなくなった時点で終わりだよ」
スッと指を指す。
俺様の脇で惚けている、我が君に。
さて、ここからだな…
「そうだなぁ…確かに色々と不便は不便ではあるなぁ」
困った困ったと、呟いてもみせる。
大きく頭を抱えたりもしてみせよう。
どうもこの身体では若い時のように、おちょくりたくなるな。
「まぁ…勝てるかどうかはわからんが」
神々のざわめきが、ほんの僅かに弱まった。
安堵?納得?
おめでたいな、本当にわからん奴らよ
「ここまで、ハンデをやらんと話にならんかと思ってな」
フフフッと微笑んでみせる。
出来るだけ悪戯っぽく。
突然の静寂。
怒り…ではないな。
…困惑…疑念といったところか。
誰かの息を飲む音が聞こえた
それが合図となって、ざわめく神々。
そして……
「何を言っている!⁇」「1人でなんて認められるか‼︎」「前例がないではないか!!」「神の儀式をなんだと心得る!!」「不敬不敬!!」
怒号。
怒気。
殺気。
などなど、他にも色々罵声が飛ぶ。
予想はできたがな。
荒れ狂う神々。
焦る我が君。
ケタケタ笑うギルベルト。
ニュークリアともう1人の神は沈黙を守る。
コイツらはまだ読めんか……
「あー笑った笑った」
ギルベルトだ。
やはりこいつか。
罵声の雨の中、ポツリと放つ。
妙に耳についた。
「ギルベルト様!」「このような暴言」「許されざる侮辱」「三神の裁きを!!」
「裁きを!!」「裁きを!!」「裁きを!!」「裁きを!!」
津波の如く襲う神の圧。
今にも襲い掛からんとする勢いである。
少し鬱陶しく思うな…蹴散らすか?
身構え、魔力を解放してやろうとしたが、ギルベルトが視界に入る。
ニュークリアに視線を送ったか?
そんな様子の後、スッと指を立て、唇に運ぶ。
静寂が訪れた。
いや、いなくなったと言うが正しいか。
先ほどまでの神々の謁見の座から一転し、今ここにいるのは、俺様と青い顔している我が君、そして三神と呼ばれた3人の神。
ニュークリア、ギルベルト、六対の目を持つ青白い肌の神だった。
「さて…」
ギルベルトが口を開く。
いつの間に用意された玉座に座する三神を前にして。
「話をしようか魔王殿?」
三日月のように、唇か裂ける。
隣で小さく息を呑む音がした。
我が君だ。
青ざめた顔で周囲を見回し、やがて俺様に視線を止める。
……少しだけ肩の力が抜けたようだった。
だが、それも束の間。
小さく息を吸い、震える拳を握り締める。
一歩。
俺様の隣へ並ぶように歩み出た。
ほう。
逃げる気はないらしい。
さて。
舞台装置の役割を果たそうではないか…




