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黄金の世界、銀の焔  作者: ひろすけほー
「黄金の世界、銀の焔」
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第二十一話「戲万(ざま)Ⅱ」

焔鋼籠手(フランメシュタル)……それは、どういう」


 かつての師、ヘルベルト・ギレは、その言葉の意味を問う。


「……」


 俺はその問いには答えずに、変装用に着ていた作業服の上着を脱ぎ捨てた。


 ーー!


 その姿に、ギレだけで無く、俺に注目していた全員が目を見開く。


 穂邑(ほむら) (はがね)、上着を脱ぎ捨てた俺の姿は黒いタンクトップ、しかしその上に、バツの形にたすき掛けした革のベルトを装着し、そこには幾つもの長方形の銃のカードリッジのような物体が装備されていた。


 今までの経緯から、人々はそれが何か察しは付いているだろう。


 穂邑(ほむら) (はがね)特製の武装兵器、それを動かす動力源である麟石(りんせき)が装填された物体、それがこのカードリッジだ。


 一見、銃の弾倉のようにみえるそれを無数に巻き付けた俺は、有名な映画に登場する、唯一人で敵に特攻する兵士のようだ。


 ガチャ!、ーーガチャ!


 俺は、その胸に装備した革ベルトから新品のカードリッジを二つ取り、器用に両腕の武装兵器に装填する。


「じゃあ、第二ラウンドをはじめようか……九宝(くほう) 戲万(ざま)閣下」


 白銀に輝く武装兵器、焔鋼籠手(フランメシュタル)を構えながら、俺は態と戲万(ざま)を挑発する様に手のひらを上にして手招きした。



 ーーヴオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーン!



 同時に、それに呼応して雄叫びを上げる白銀の魔神ブリトラ。


 最初は開発グループの一人と開発中の兵器、次は狩られる側と狩る側、そして今は共に戦う最強の兵器、焔鋼籠手(フランメシュタル)


 俺と彼の者は、完全にシンクロしていた。


 俺の視線の先、九宝(くほう) 戲万(ざま)は……



「……ああふぅ」


 なんとも警戒心の欠片もない大きな欠伸をひとつ。


 巨大な白銀の魔神と、それと一体化した、両腕に白銀の武装兵器を携える俺、自身に敵意を剥き出しに挑んでくる相手にも、警戒心の欠片も無い姿勢で立っていた。


 派手なアロハシャツに、クロップドパンツ、それに素足に草履履きの足。


 おおよそ、これから闘いを控えているような雰囲気の感じられない男。


「……おめぇ、穂邑(ほむら)って言ったか?……何で俺様が、お前なんぞの相手をしなきゃならねぇんだ、たくっ……てめぇはどうやったって雑魚なんだから、大人しく自害でもしとけ、あほう!」



「五式無反動砲”(きょく)”!」


 シュオーーーーーーーーン!


 俺は問答無用で武装兵器、右腕のレンズ部分から放出する光の槍を放つ。


「しゃらくせぇんだよ!」


 ーーバキィィィ!


 自らに迫る光の槍を、蝿叩きの様に左手でたたき落とす戲万(ざま)


 途端に、俺の右腕から射出された光の槍は、爆裂して霧散した。


「ふっ!」


 その隙に、ダッシュして、戲万(ざま)を射程圏内に捉えていた俺は焔鋼籠手(フランメシュタル)の右ストレートを繰り出す。


 ーーバキィィー!


 戲万(ざま)は不意打ちの、白銀の籠手から繰り出される重厚な右ストレートに、信じられない動体視力で、ぴったりと自身の右ストレートを合わせていた。


「ぐっ!」


 結果、吹き飛ばされたのは俺の方であった。


 俺の右腕は、磁石に反発するかの様に後方に弾け飛び、続いて引っ張られる形で体が吹っ飛ぶ。


 ーーけどな!


 ーーヴォォォォーーーン!


 そうだ、それらさえも全てカモフラージュ!


 ドゴォォォォーーーーン!!


 本命は俺に連動するブリトラの巨大な鋼鉄の腕。


 凶悪な四本爪が、ターゲットの胴体を打ち抜いていた。


「ふんっ!」


 息を吸い込み、戲万(ざま)は腹筋を固める。


 ガキィィィィーーーーン!


 自分の背丈以上はある凶悪なる四本爪を、腹筋の硬度だけで弾き返す非常識な男。


 戲万(ざま)は目的を果たすことが出来なかった魔神の鉄腕、蛇腹状の腕を脇に抱え、どう見ても不可能な対比である巨体を、腕を支点に持ち上げようとしていた。


 ぐぐぐぐっっ


「なんだとっ!」


 ギレも、フォルカー達も言葉を失う、それはそうだ、一体何十トンあると思っているんだ!


 しかし、それは簡単に地上から離れていく。


 ーーブォォォォォーーーン、ブォォォォォーーーーン!


 いや、それだけじゃ無い!


 中心の小さな男に持ち上げられただけで無く、その鉄塊は、勢いよく振り回され、男の周りをグルグル回る。


「非常識すぎるじじいだわ!」


 彩夏(あやか)が立ち上がろうとするが、ヨロヨロと腰砕けで、またすぐに尻餅をついた。


峰月(ほうづき) 彩夏(あやか)、まだ無理だ、我らの回復にはまだ……」


 それを見た阿薙(あなぎ) 琉生(るい)が、離れた所から忠告していた。


「ちっ、わかってるのよ、そんなことは……」


 憎々しげに呟くと、彼女は戦況を見守りつつ、忌々しく思っている同族の男同様、回復に専念する事を続けた。



 ーーブォォォォォーーーン、ブォォォォォーーーーン!


「そらっ!飛んでけよ、鉄くず!」



 ヒュバーーーーーー!!


 楽しそうに叫んだ中年の男は、巨大な鉄塊を勢いよく投げ捨てた。


「ん?」


 その隙に、ハンマー投げのようにブリトラを投げ捨てた戲万(ざま)の直ぐ脇に、俺は舞い戻る。


「三式百五十番”(ほう)”」


 途端に俺と九宝(くほう) 戲万(ざま)の間に、青色光のサークルが展開された。


 青円光のサークル、加速フィールドを突き破り、俺の拳が炸裂する!


 ドゴォォォォォーーーーーーーーーーン!!


 鼓膜を引き裂くような衝突音。


「……」


 しかし痩せた中年、九宝(くほう) 戲万(ざま)はそこから一ミリも動いた形跡が無い。


「てめぇ……学習能力無いのか……たく」


 右手の平で俺の一撃を軽々受け止めた男は、呆れながら大雑把な前蹴りを放った。


 ガシィーー


「くっ!」


 咄嗟に両腕を前に交差してブロックする俺。


 こちらは相手の男と違い、踏ん張った足がズズズと摩擦熱で煙を上げながら、数メートルは後ろに下がっていた。


 ガシィィィィィーーーーーン!


「なんだぁーーー?」


 俺を蹴り飛ばした戲万(ざま)の背後から伸びた巨大な蛇腹状の腕が瞬く間にその男に巻き付いていた。


 先に投げ飛ばしたはずの、白銀の魔神ブリトラ。


 その巨大な腕が戲万(ざま)の体にグルリと蜷局を巻いた蛇のように何重にも巻き付く。


 ブリトラは、巨大な蛇腹状の金属に埋め尽くされ、殆ど見えなくなった男の体を容赦なく締め上げた。


 ーーギギギーーーー!


「がはっ!て、テメーーー」


 戲万(ざま)の細い体をギリギリと圧迫していく鋼鉄の腕。





「これは……どういう?……これはBTーRTー04べーテー・エルテー・フィーアなのか?……それに火焔竜(かえんりゅう)の因子が安定している?……」


 遅ればせながら地上に到着したハラルド・ヴィストがその光景をポカンと眺めていた。


「さもあろう……そもそも、採取した竜因子が不安定だったのでは無く、動力システムが、穂邑(ほむら) (はがね)くんによって最初からそういう風に設計されていたのであるからな」


 ヘルベルト・ギレは、隣で呆然と変わり果てた鋼鉄の魔神を見上げる男に声を掛けていた。


穂邑(ほむら)准尉の?それは……」


「恥じることは無いぞハラルドくん、君の仕事自体は完璧だった、仕様通り完璧に組み上げ、チェックした、この不具合は最初からそういう要件の装置だった時点で不具合では無かったのだ……いやはや、木を見て森を見ず……暗闇の中では盲点は見つかるはずも無い」


「……穂邑(ほむら)准尉はもとからBTーRTー04べーテー・エルテー・フィーアを乗っ取ることを?」


 上官の言葉から、ようやく事の次第を理解した様子のハラルド・ヴィスト技術准尉。


「元だ、元准尉……私が彼を犠牲に研究を進めようとしたとき、珍しく君は反対したが……」


「私は彼の能力を評価したのです……ただそれだけ、その事自体は貴方も同じでしょう?」


 ハラルド・ヴィストは無愛想にギレを見た。


「……どちらにしても、それさえも彼の、穂邑(ほむら) (はがね)くんの手の内であったのだ、ふふふ……」


「……」


 謀られていたというのに何故か愉しそうである老人。

 その老人を無言で見つめる部下の男。


「ふふ、人間の行動、人生そのものをどう行動するか、理に適った計画性のある存在そのものが結果を凌駕する……そのものではないか、穂邑(ほむら) (はがね)!君の人生はまさに、そのものだ!」


「?」


「真なる創造は、結果さえも価値のないものにしてしまう!、彼の弱い心が、貧弱な士族の能力が、天才とは言い難い才能が、それを可能にしたのか!」


「ドクトーレ?」


「面白いでは無いか!ハラルドくん、見届けよう!その無力なる男の結晶が、人生をかけた理性ある大博打が!あの至高の存在!無敵不敗の九宝(くほう) 戲万(ざま)に通用するか否かを! 」




 ーーギギギーーーー!


「がはっ……ぐぉぉぉ……」


 ブリトラの腕という大蛇に締め上げられ続ける戲万(ざま)の身体。


「三式百五十番”(ほう)”」


 そこに、蹴り飛ばされた俺は舞い戻り、青色光のサークル、加速フィールドを突き破った必殺の突貫打撃を、戲万(ざま)の無防備な顔面に炸裂させる!



 ーードゴォォォォォーーーーーーーーーーン!!



 再び鼓膜を引き裂くような衝突音が響く。


 首の骨が砕け散ったかのように後方に弾けて背中側にダランと下がる中年の首。


 プシューーーー!


 ガシャッガシャッ!


 俺の両腕の武装兵器から、勢いよく蒸気のようなものが吹き出す。


 長方形のカードリッジが飛び出して、パラパラと複数個の使用済みの麟石が大地にこぼれ落ちた。


 今度も俺は、即座に胸に装備した新品のカードリッジを二つ取って、器用に両腕の武装兵器に装填した。


「三式百五十……」


 ガシィィィー!


「うぐっ!」


 戲万(ざま)の蹴りが、技を出そうとした俺を再び吹き飛ばす。


「調子にのんじゃねぇ!若造が!」


 九宝(くほう) 戲万(ざま)は、信じられない剛力で巻き付く巨大な鋼鉄の戒めを、強引に引き剥がしていたのだ。


 そして、その後の光景の奇妙な事は、そこに立つ男の頭は、ダランと背中に下がったままと言うことだ。


「ん……ああ?……天地が逆さまだぁーー?……おおっ」


 叫ぶ男は、両手で頭を両脇からガッシリと無造作に掴むと、本来在るべきところに戻す。


「こうか?……だな!」


 そう言って納得する男はまるで堪えていないようであった。


「……なんなの……あれ……!」


 彩夏(あやか)がデタラメ過ぎる生き物に思わず声を上げていた。


(こう)くん……」


 雅彌(みやび)も不安な声を漏らす。


「……」


 俺は焔鋼籠手(フランメシュタル)を構え、完全に打撃前の状態に復元された戲万(ざま)の頭、いや、額に浮かぶ、なにかを凝視していた。


 そこには五百円硬貨ほどの光の輪が浮かんでいる。




尖士(せんし)族の癒やしなのか?」


 思わずそう呟いた俺は、首を左右にコキコキと鳴らす戲万(ざま)を凝視したままだ。


 それには答えずに、ニヤリとおぞましい笑みを浮かべる中年。


尖士(せんし)族……一角獣の一族は、ある程度の傷なら回復しながら戦える能力を持つと言うが……しかし」


 阿薙(あなぎ) 琉生(るい)が自身の()る、その種族の能力を語る。


尖士族(ユニコーン)の癒やしはあくまである程度だ!首をもがれて回復するなど、生物としてあり得ない……少佐殿、あなたは何かご存じでは無いのか?」


 状況を静観していたフォルカー・ハルトマイヤー大尉が、同じく静観している上官のヘルベルト・ギレ少佐に尋ねていた。


「……九宝(くほう) 戲万(ざま)閣下のポテンシャルの元では、そう難しいことではあるまい……」


 ーー!

 ーー?


 部下に答えるように、ボソリと発言した老人の言葉に、そこにいた全員が注目する。


「それは……どういう……?」


 フォルカーが、全員を代表するように、続きを要求する。



「ひゃーはっはーーーーー!」


 唖然とする人々を眺めて、突然大声で笑い出す戲万(ざま)


「わっかんねぇかーー!鷲士(しゅうし)族、いやさ、ファンデンベルグでは鷲士族(フレスベルグ)って言うのか?、兎に角、フレスベルグの兵隊よーーーー!」


 戲万(ざま)は、そう答えに辿り着けないフォルカーをからかうように喋り出す。


「俺は他種族の能力を喰らい込むんだよ!そんで、その能力?いや士力(しりょく)を根こそぎ頂いてなーーー、強くなって、あとはこの体の維持とかーーまぁなんだ、いろいろ俺的には大助かりなわけだ!」


 ーー!!


 フォルカーだけでは無い、その場の人間全てが、その事実に言葉を無くした。


「ギャハハーー、ってなんて顔してんだおめぇら?そんなの普通だろ普通!弱肉強食の世の中じゃあなーー」


「方法?簡単だ!孕ました他種族の女の腹の子を、生まれる前にって言うか、妊娠する直前に……なんてーーか分かんだよ、俺っちは、何となく抱いた女にガキが出来たかどうか、その瞬間にな!」


「何を……いっているの?この男……妊娠する前にその子供を喰う?」


 彩夏(あやか)が呆然と呟く。


「出来る前だよ、鬼の女ぁーー、俺にはそれで十分、いいやそれが最高!生まれるはずのガキの因子を因果を先に喰らっちまう……まぁだいたい母体も死んじまうがなぁーー」


「生まれて来るはずの命を……先に?……未来を喰らう……」


 言葉にならないおぞましさに彩夏(あやか)の顔は蒼白になっていた。


「それじゃあ……それじゃあ九宝(くほう)に跡取りを作るって言うのは……」


 今度は雅彌(みやび)が叫んでいた。


「デタラメにきまってるだろーが、雅彌(みやび)よーーー、俺様がいれば十分なんだよ、俺様が未来永劫この世に君臨すれば、万事解決!」


「……」


 あまりにショッキングな事実に、雅彌(みやび)の顔は血の気が引いたように白くなる。


「俺っちはそうだな……鳳凰じゃなくて不死鳥みたいな?選ばれた存在なんだよ、炎の中で自身の体を焼いて再び蘇る……永遠の存在!」


 呆然とする聴衆を前に、両手を胸の前で大きく広げ、高らかに宣言する、九宝(くほう) 戲万(ざま)という男。



「ふざけるな!不死鳥は自身の体を焼くんだ!おまえは…おまえは未来の……」


 あまりにも身勝手でおぞましい男に俺は我慢が出来なかった。


「ったりめぇだろが、ボケ!自身なんて焼いたら熱くて泣いちゃうだろ、そういうのは他人で済ますんだよ、ばーーか!」


 戲万(ざま)は苛立たしげに、話に割り込んだ俺を罵倒する。


 そうして何か思いついたのか、俺の顔をニヤリと嫌らしい笑みで見つめ返してくる。


「まぁ、なんだ、しかしよぉ……雅彌(みやび)、おめぇなら俺の子を産ませてやってもいいぜ!」


「!」


 俺に対してこれ見よがしに……見下して、愉しそうに、その男は嗤った。


 雅彌(みやび)は……雅彌(みやび)は、その言葉のあまりのおぞましさに、両腕で自身の体を抱きしめるようにして、その場にへたり込んでしまった。


 ーーこのっ!


 ーーこの男……くそっ!


 解ってる、これが挑発だと言うことは……


 いや、正確にはそれですら無い!


 俺を、相手にするに値しない、ゴミの様な存在の俺を……最高に弄ぶ方法を見つけただけの男のやり方……


「……」


 言葉無く震える幼なじみの少女を見る。


 俺の事なんかどうでもいい!どうでも弄べばいいだろう!


 だが!


 だが!雅彌(みやび)を……


 何時も毅然とし、上を向く気高い雅彌(みやび)を……よくもこんな……


「……」


 俺の足は自然とその位置に立つことを選んだ。


 男の視界が雅彌(みやび)に届く直線上。


 俺はこの身体で、穂邑(ほむら) (はがね)という盾で、燐堂(りんどう) 雅彌(みやび)に向けられる邪視を完全に遮る。




 そしてーーここから俺は始めるんだ。



 九宝(くほう)戲万(ざま)と呼ばれるとびきりの悪夢の終焉を!


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