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黄金の世界、銀の焔  作者: ひろすけほー
「黄金の世界、銀の焔」
22/25

第二十二話「戲万(ざま)Ⅲ」

「大丈夫だ、(みや)、こんなゲスに指一本触れさせない!」


 俺は安心させるように、大事なひとに優しくそう言った。


(こう)くん……」



 雅彌(みやび)がへたり込んだ場所から直線上にいる九宝(くほう) 戲万(ざま)、その狂気の男の視線を遮るように間に立つ俺。


「五式無反動砲”(きょく)”!」


 俺はいきなり、武装兵器、右手のレンズ部分から放出する光の槍を放つ。


 シュオーーーーーーーーン!


 ーーバキィィィ!ーーグシャ!


 前触れも無く自らに迫る光の槍を全く事も無げに足の裏で受け止めると、そのまま不貞不貞しく踏みつぶす中年。


 苛立つ様子の中年、その足元で俺の腕から射出された光の槍は、爆裂して霧散した。



「……いちいち……癇に障るなてめぇ!」


 戲万(ざま)は忌々しげに、白銀の武装兵器を構える俺を射殺す程の形相で睨み付けていた。



「そいつは光栄だ、戲万(ざま)閣下」


 俺は、九宝(くほう) 戲万(ざま)の脅しに、とびきりの笑顔で応えてやった。


 そして、再びその武装兵器、焔鋼籠手(フランメシュタル)を構える。


 ーーヴィィィィーーン


 白銀の魔神ブリトラが呼応し蛇腹状の両腕をうねらせた。


 接続状態(コネクト)は良好だ、同調率(シンクロ)も申し分ない。


 コレなら更なる段階(ステージ)に移行できるはずだ。


 ウィィィィィィィイイイイイイイイイーーーーーー


 低速な駆動音と共に振動する両腕の武装兵器とBTーRTー04べーテー・エルテー・フィーア


「これは……」


 ハラルド・ヴィストが目を丸くする。


「うむ、最早あの武装兵器とブリトラは完全に一体の兵器といえるな、焔鋼籠手(フランメシュタル)……か」


 ヘルベルト・ギレの杖を握る手が、堅くなっていた。



「八八式強襲連弾”那由多(なゆた)”!」


 俺の両腕の武装兵器、その白銀がうっすらと光を纏う。


「八八式強襲連弾”恒河沙(こうがしゃ)”!」


 BTーRTー04べーテー・エルテー・フィーア、魔神ブリトラも同種の輝きを放っていた。


 そして俺は満を期して、九宝(くほう) 戲万(ざま)に特攻する!



 ーーヴオオォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーン!


 白銀の魔神も、その巨体を踊らせて、同時に突撃した。


 ブォォォーーーーーン!


 ブリトラの強靱な四本爪がターゲット目がけて一本の巨大な槍と化す。


「鉄くずがーー!」


 戲万(ざま)はそれを僅かに動いて躱し、そのままの勢いで近接する強大な鉄塊に、カウンターの鉄拳を見舞った。


 ガゴォォォォォーーーーーンン!


 ズズーーーーーーーーン!


 鉄壁の装甲を持つ白銀の魔神のボディが撓み、大きく上半身を仰け反らせて、強制的に後方に下がらせられる。


 しかし!


 白銀の魔神を退けた戲万(ざま)の至近に、息を置かずに展開する青色光のサークル!



 ドゴォォォォォーーーーーーーーーーン!!



 加速フィールドを突き破った、必殺の突貫打撃が戲万(ざま)の無防備な顔面に放たれていた!


 大気をビリビリと震わせる衝撃音。


 戲万(ざま)はそれを左手の手のひらで受け止めて、反撃の蹴りを繰り出す。


「九五式装甲”崩・双(なだれ・そう)”!」


 俺は両方の腕を、自身の前面に翳して瞬時に備えた。


 瞬く間に前面に、二重に浮かび上がる白銀色の光のサークル。


 ガシィィィィーーン!


 戲万(ざま)の蹴りはその光の壁をことごとく粉砕するが、半減した打撃は、白銀の武装兵器そのものでガードする俺の両腕に遮られ、ターゲットに届かない。


「五式無反動砲”(きょく)”!」


 敵の攻撃を受けきった俺は、そのまま続けて次の技名を叫んだ。


 ズバァァァァァァーーーーーー!


 右腕のレンズ部分から射出される一筋の光の槍。


「ぐわっ!」


 流石の戲万(ざま)もこれを躱す余裕は無く、まともに左腕の付け根辺りに被弾した。


「っ!」


 顔をしかめる戲万(ざま)、肩の関節部から千切れかかった腕は、風にそよぐ洗濯物の様にバタバタと暴れる。


 ーープシューーーー!ガシャッガシャッ!


 俺の両腕の武装兵器から、勢いよく蒸気のようなものが吹き出し、長方形のカードリッジが飛び出す、パラパラと複数個の使用済みの麟石(りんせき)が大地にこぼれ落ちた。


 俺は即座に胸に装備した新品のカードリッジを二つ手に取って、そのまま両腕の武装兵器に素早く装填した。


「て、てめえ!」


「!」


 その僅かな隙に、初めて大きく破損した戲万(ざま)は、体を揺らして俺の左肩を鷲づかみにする。


 あまいんだよ、おっさん!


 ーーヴオオオォォォォォォォ!


 胸部を大きく陥没させ、後退を余儀なくされた白銀の魔神が、胴体部に大きく開いた鋼鉄の顎を目一杯に開き、戲万(ざま)の背後にせまる!


「!」


 バキバキバキィィ!


「ぐぉぉぉーーーー!」


 戲万(ざま)の上半身が殆ど千切れて、大地を踏む下半身とは反対方向を向く。


 食いちぎられ、上半身をぶら下げる男、その垂れ下がった上半身からは、根元から殆ど千切れかけの左腕が更にぶら下がっている。


「ざ、ざっけんじゃねぇぞぉぉぉーーー!」


 血まみれで叫んだ中年の男は、滅茶苦茶な体制の上半身から繰り出した頭突きを、ブリトラにぶつけていた。


 ガコォォォォォォーーーーン!


 ズズズーーーーーーーーーン!


 大きく大地を揺らして倒れる巨大な鉄塊。


 戲万(ざま)もその勢いのまま後方にひっくり返った。


 ここまで非常識なら、人間どころか生物かどうかも怪しい化け物だ。


「五式無反動砲”(きょく)”!」


 間髪入れず、俺は地面に崩れ落ちた男に至近距離から光の槍を突き刺す。


 ズバァァァァァァーーーーーー!


「くふぁぁ!」


 倒れた戲万(ざま)の体が貫かれ、千切れかけた左腕は完全に飛び去った。


 そして残った四肢、いや既に三肢、その異形が地面の上でビクビクと大きく痙攣する。


「三式百五十番”(ほう)”!」


 寝そべる九宝(くほう) 戲万(ざま)と見下ろす俺の間に、青色光のサークルが展開された。


 青円光のサークル、加速フィールド”突き破り、俺の拳が敵に炸裂する!


 ドゴォォォォォーーーーーーーーーーン!!


 大地を揺るがす打撃音。


「ざけんじゃねぇぞーーー!ざけんじゃねぇぞーーー!」


 狂ったように叫んだ戲万(ざま)が、寝転んだままでも、それを右腕一本で受け止めていた。


 ーーマジかよこれでも……おっさん、ほんと、立派な化け物だ……


 プシューーーー!ガシャッガシャッ!


 俺の両腕の武装兵器から、今日何度目かの、長方形のカードリッジが蒸気と共に飛び出し、パラパラと複数個の使用済みの麟石(りんせき)が大地にこぼれ落ちる。


「……」


 そして俺は何度目かの、カードリッジ交換を手早く済ます。


 ーー終わらないなら……トコトンやるだけだ!


「ば、化け物!」


「……」


 回復のため、傍観していた峰月(ほうづき) 彩夏(あやか)阿薙(あなぎ) 琉生(るい)、さらには燐堂(りんどう) 雅彌(みやび)までもが立ち上がり、攻撃の用意をする。


 この化け物を仕留められるとすれば今しか無い!


 全員の考えが一致した瞬間であった。




「下がってろーーーーー!有象無象!」


「ーーーーー!」

「ーーーーー!」

「ーーーーー!」


 瀕死?の戲万(ざま)の絶叫に、三人だけで無く、そこにいた上級士族全員が地面に崩れ落ちていた。


「ぐ……何だ?……力が……」


 阿薙(あなぎ) 琉生(るい)は片膝をついて苦悶の表情を浮かべる。


 ……彩夏(あやか)も同様に何かの圧力に耐えるように踞っていた。


「これが……九宝(くほう)の……強制力か……」


 フォルカー、アーダルベルト、その他、ファンデンベルグの軍人達の何人かも、苦しそうに這いつくばり、体にかかる正体不明の圧力に必死で耐えている。



「は、(はがね)……」


 黒髪の美少女、竜の美姫、燐堂(りんどう) 雅彌(みやび)は、それでも何とかしようと、か細い両足で戲万(ざま)に抗っていた。


「!雅彌(みやび)よーーーてめぇ、逆らうんじゃねぇよ!、流石に殺すぞ!」


 必死に抵抗する雅彌(みやび)を睨み付け、戲万(ざま)が両手を大きく振るう。


 ーーグォォンーー


「っ……!」


 戲万(ざま)による、さらなる圧力強化、途端に雅彌(みやび)は、押しつぶされ、膝から崩れ落ち地面に張り付…………



 いや、張り付かない!


 両手を大地にしっかりと着き、土下座するような無様な形になりつつも、華奢な体に、渾身の力を込めていた。



「っ……はぁっ!……っ……」


 背中に乗せられた巨石に容赦なく巨人の大槌が打ち込まれる衝撃、それを幾度となく受け続ける少女の二の腕と太ももの筋肉は、ピクピクと小刻みに震える。


「んっ!……はぅ……!」


 濡れ羽色の瞳からは涙が溢れ、桜色の唇からは苦悶の声が漏れる。


 驚異的な圧力に耐え続ける竜の美姫。



「わたし……だって……だい……じ……な……」


 力なく垂れ下がる美しい黒髪を、汗に塗れる白い頬に張り付かせながら、四つん這いのままで、それでもなんとか、震える右手を前面に翳す。


 屈辱的な体制で、それでも顔を上げた彼女は、その瞳に波打つ黄金の海を顕現させていた。



「なんだってーんだ!健気な女何ぞに成り下がりやがって!……マジでむかつくじゃねーか!、えーーー雅彌(みやび)ちゃんよーーーー!」


 目の前の敵を忘れ去り、怒りに我を無くした中年は、這いつくばる燐堂(りんどう) 雅彌(みやび)の方へ駆け出そうとした。


 ーーガシィ!


 俺は、勿論それを背後から羽交い締めにする。


雅彌(みやび)よぉーーーてめぇーー殺ーーーす!」


 くそっ!


 羽交い締めにした俺ごと引きずり、雅彌(みやび)の方へ進む戲万(ざま)


「ま、不味い!」


「ちょ、ちょっと!」


 尋常じゃ無い戲万(ざま)の状態に、琉生(るい)彩夏(あやか)が何とかしようとするが、その能力の前で立ち上がることさえ出来ない。


 士族(しぞく)に生まれた者は……士族(しぞく)の能力を持つ者は、九宝(くほう)には逆らえないのだ……


 そして、士族(しぞく)で無い者は……九宝(くほう)には敵うはずも無い……



 ここにいる者の中で……いや、世界中でも、この男に抗うことが許されるのは……出来るのは……俺……、士族(しぞく)に生まれながらそれを捨て、そのことで手に入れた、唯一の力をもつ、穂邑(ほむら) (はがね)だけだった。


「ブ、ブリトラ!」


 引きずられながら俺は必死に叫ぶ!


 ーーヴォォォォーーーー!


 俺の魂の叫びとも言える声に、白銀の魔神が応えた。



「死ね!」


「くっ」


 引きずる俺ごと雅彌(みやび)に飛びかかろうとする戲万(ざま)


 バシュゥゥゥゥーーーー!


 ほぼ同時に、雅彌(みやび)の渾身の雷帝(らいてい)がその男に打ち込まれる!


「しまっ!」


 間抜けな俺は、戲万(ざま)の身体を通しての間接的な衝撃で、その場に転んでしまった。


「がぁはぁぁぁぁっっ!!」


 胴体にもろにそれを喰らった戲万(ざま)の傷が開く!


 ついさっき、ブリトラに食い千切られた傷だ。

 そしてその傷は直ぐには塞がらない。


 戲万(ざま)士力(しりょく)も底を尽きかけているということか!


 しかし、男は、ゾッとするような、悪魔の笑みを浮かべていた。


 なみなみと注がれたワインをテーブルにぶちまけたように、容赦なく溢れる鮮血!臓腑!


 それでも男は、殺すことを優先する!


 誰を?雅彌(みやび)を!


 くそっ!なんて間抜けだ俺は……


 這いつくばる幼なじみの少女と一瞬目が合った俺は、背筋が凍り付く!


 黄金の瞳!雅彌(みやび)の双眸が煌めく黄金の世界を顕現させていたからだ。


 焔王(えんおう)!?焔王(えんおう)で何をするつもりだ!!


 解っている、俺は解ってしまった!……彼女は……燐堂(りんどう) 雅彌(みやび)は……


 残った士力(しりょく)を全て解放し、戲万(ざま)諸共、燃え尽きるつもりなんだ!!




 雅彌(みやび)が……死ぬ?




 ーードクンッ!


 鼓動がはねた。


 ーードクンッ!


 嫌だ……イヤダ!いやだ!いやだーーーーー!!




「ブリトラーーーーーーー!!」


 ブォォォーーーーーン!


 鋼鉄の槍が俺の頭上に飛来する。


 実際の時間にすれば、ほんの一瞬だっただろう。


 俺はゆっくりと黒い影に覆われていき、自然と伸びた俺の両手は目の前の狂人をガッシリと捕まえる。


「て、てめっ!」


 その男は振り返り、何か言っているが俺の口元は綻んでいた。


 ーーーーーーーーーーー


 ズドォォォォォォォォーーーーーーーーーーーンン!!


 猛烈にわき上がる砂煙!


 巨大な四本爪が頭上から降り注ぎ、奴を叩きつぶしてくれた。


 大事なひとを殺めようとする狂った男を……


 穂邑(ほむら) (はがね)という男ごと……




 ーーーーーーーーーーー



「……なんなのよ……な、んなのよ……これ……」


 峰月(ほうづき) 彩夏(あやか)は愕然とした顔でその場から立ち上がる。


「……」


 阿薙(あなぎ) 琉生(るい)はただ、ただ無言だ。


「と、止めたのか……あんなやり方で……!」


 険しい表情で黙る老人の隣で、ハラルド・ヴィストから言葉が漏れる。



「これが……穂邑(ほむら) (はがね)……」


 フォルカーもそれを、巨大な鋼鉄の腕に埋もれた男をじっと見つめ、短く呟く。


 そして……


 燐堂(りんどう) 雅彌(みやび)は……




「……こ、(こう)くん!……(こう)くん!」


 竜の美姫までほんの数メートル手前で起こった出来事に、燐堂(りんどう) 雅彌(みやび)は取り乱し、幼馴染みの名を連呼していた。


 静まりかえる周辺と、その眼前で取り乱す竜の美姫。


 しかし、無情にも状況は、更に最悪の方向に進展する。



 メリッ……メリメリッ!


 ひび割れ、捲れあがったアスファルト。


 その元凶たる巨大な金属が、あちこち、乾いた音を発しながら変形していく。


 ビキビキッ!ーーーーーーガコンッ!


 ひび割れの線が幾つも走り、その後、一際大きな音が響いたかと思うと、それは腕の真ん中辺りから、くの字にへし折られていた。


「し、信じられぬ!」


 ヘルベルト・ギレが思わず身を乗り出す。


 ギギィィィ、ガギュューー!


 金属同士を擦り合わせる不快な音が響き、拉げた、鋼鉄の腕は、人の高さほどに持ち上げられていた。




「いーーーてーーーえーーーじゃーーーねぇーーかーーー!」


 片手で自身の何倍もある鉄くずを持ち上げる男、九宝(くほう) 戲万(ざま)



「な、なんで!」


 彩夏(あやか)は、理不尽すぎるその光景に叫んでいた。


「ああーーーったく!とんだ目に遭ったぜ、こんなに情けない思いをするのはいつ以来だぁぁ?」


 九宝(くほう) 戲万(ざま)は、右手一本ではあるものの、その他の傷は完治していた。


 いや、取りあえず見た目では、完治しているようには見えた。


 ーー


 絶望感に支配されるその場……



「……して」


 呆然とそれを見つめる竜の美姫は何かを呟いた。


「あ?」


 聞き取りづらい言葉に、戲万(ざま)が不機嫌に聞き返す。


「……どうして……どうして……」


 だが雅彌(みやび)は、そんな戲万(ざま)にも焦点が合ってないような瞳で一人呟き続けていた。



「だーかーらー、何なんだよ!」


 苛立った男が一歩、彼女の方へ踏み出す。


 どうして貴方が立ち上がるのよ!九宝(くほう) 戲万(ざま)!、あれだけ……あれだけ(こう)くんが、頑張ったのに……頑張ってくれたのに……どうして貴方が……」


 急に堰を切ったように錯乱して泣き叫ぶ、雅彌(みやび)



「あーーー簡単だろ、そんなの、俺が強くて、こいつが雑魚だからだ!」


 戲万(ざま)は面倒臭そうに言い捨てると、足下にある何かを蹴り飛ばした。


「!」


 ズザァーー


 地面の上を砂埃を上げて転がる身体……


 それは確かに……


「い、いやっ!」


 雅彌(みやび)は慌ててそれに走り寄る、腰砕けになりながら、ヨロヨロと、それでも自身の出せる全速で。


「この!」


 やりたい放題の男に彩夏(あやか)は腰を落として構えた。


 たが、こちらも強制力の影響か、フラフラと定まらない足下は覚束ない。


「あ、あんたなんて(はがね)の足下にも及ばないわ!ただ強いだけ、それだけの外道よ!」


 彩夏(あやか)はそれでも、激しく戲万(ざま)を糾弾する。


「わかってんじゃねぇか、ねぇちゃん!そうだよ、ただ強いだけ、それこそが全て!それこそが俺だ!最強の俺様が治める国、九宝(くほう) 戲万(ざま)九宝(くほう) 戲万(ざま)による九宝(くほう) 戲万(ざま)様のためだけの世界なんだよ!それだけが、サァーーイコォーーウなんだよ!」


 そう言って壊れたようにゲラゲラ笑い転げる痩せこけた中年の男。



「狂ってる……狂ってるわ、あんた……」


 聞きしに勝る狂人ぶりに、彩夏(あやか)だけでなく、その場の人間全員が言葉を失っていた。


 孤立無援、誰もが彼を擁護することは無い。


 誰にも支持されず、誰にも慕われない。


 それでも男はニヤリと満足そうに嗤う。



「さーーーてと、じゃあその狂ってる俺様に、最初に殺されたいのはだーーれだ!」


 心底楽しそうに、ギャラリーの元へ歩みを始める男、体の自由を制限されている雅彌(みやび)達に抵抗できる手段は皆無だった。





「はーい!……じゃあ……取りあえず殺されるのは、九宝(くほう) 戲万(ざま)くんが最初で最後ってことでいいと思いまーす!」


 歩みを進める戲万(ざま)の後方で、彼の問いに答える声。


 巫山戯た声だ……。



「……」


 戲万(ざま)は面白くなさそうにゆっくり振り向くと、”はぁー”とこれ見よがしにため息をついていた。




(こう)くん!」

(はがね)!」


 俺を心配してくれていた人々が歓喜の声を上げる。



「まだ俺は、エンディング条件を達成していない……最後まで付き合ってくれよ、戲万(ざま)閣下」


 そう言って俺は白銀の武装兵器、焔鋼籠手(フランメシュタル)を構えていた。



「……頭悪いのなぁーーおまえ、どう考えても無理だろうが!」


 戲万(ざま)が苛つきながら俺を睨む。


 まあ、確かにこいつは驚異的に、壊滅的なまでに、最強最悪だ。


 俺がこうして無事なのも、結局、戲万(ざま)がブリトラの攻撃を受け止めたからであって、そうじゃ無ければ今頃はペラペラの紙みたいになってるところだった。


 といっても二人とも全くの無傷ではないし、寧ろ直撃を受けた戲万(ざま)は重傷と言っても良いだろう。


 今までのダメージも合わせ、表面上は回復していても……



 それともう一つ。



「なんだぁぁ!てめぇ、余裕かましやがって、この雑魚が!」



「まあそう言うなって、それに、無理でも無いだろ、いっぱいいっぱいなのはお互い様じゃないのか?だから”強制力”を使ったんだろ?」


 俺の返事に九宝(くほう) 戲万(ざま)の顔がピクリと引きつった。


 この解答の根拠は単純にして簡単だ。


 通常通り戦えば、戲万(ざま)は、雅彌(みやび)達が束になっても敵わないだろう、なのに”強制力”という反則技とも言えるそれを使った。


 それは圧倒的強さを誇り、相手を嬲る事を楽しむ奴の戦い方とは相反するやり方だ。


 つまり、この事は、九宝(くほう) 戲万(ざま)自体も、これ以上敵を増やす余裕が無いことを意味している。




「しゃらくせぇんだよ!本当に貴様は!」


 そう叫ぶと同時に殴りかかる戲万(ざま)


 ーーガキィィン!


 大振りの右ストレートを、俺の武装兵器が受け止める!


 ーーピシィィ!


 乾いた音を響かせて、その装甲に亀裂が入った。


「!」


 それを目の当たりにする者達は、戲万(ざま)の本気の一撃に改めて驚愕する。


 天才ヘルベルト・ギレ特製のHG合金、最強の強度を誇る金属を、ブリトラの腕の場合は更に四大竜の因子を施した、黄金竜姫の竜城(りゅうぐう)に匹敵するとまで言わしめた装甲を破壊したのだ。


 九宝(くほう) 戲万(ざま)……まさに化け物の中の化け物と全員が再認識させられたわけだ。



「自慢のおもちゃを粉々のスクラップにしてやるよ!」


「……」


 勝ち誇る戲万(ざま)とひび割れた武装兵器、俺は無言でそれらを眺めてから 満身創痍の俺は、それでも無理に笑っていた。



 この答えも簡単、雅彌(みやび)が見てるからだ。



「さあ、第三(ファイナル)ラウンドを始めようか!」

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