おわり
気がつくと、冬子は自室の布団の中にいた。さっきまで目の前にいた面々はどこにもいない。ただ窓の外に夕暮れが広がるばかり。
カノは、魔獣は、あの国はどうなったのだろうか。さっきのは夢? ハッピーエンドは本当になった?
考えても、答えは出ない。
けれど何か手がかりはないかと焦った冬子は、携帯電話を手に取った。
カノのことを話せる相手として、一番に浮かんだ小学生の頃からの友人。彼女の連絡先を選び、電話をかける。
静かな部屋に受話器からもれる呼び出し音が、やたらと響く。ほんの数回のコールを焦ったく思いながら聞いていると、がちゃりと相手につながった。
「あのさ、ごめん。カノちゃんのことなんだけど……」
前置きもなく話し始める冬子に、彼女はああ、そうそう、と冬子の言葉をさえぎって話し出す。
いわく、カノの行方不明は小学生当時に数日間だったようで、怪我もなく元気に戻ってきていたとのこと。家出騒ぎが大きくなって伝わってたのかもね、と言った彼女は、不穏な情報だけを伝えて悪かったと謝罪した。そして、お詫びにと今のカノの住所や連絡先を教えてくれた。
冬子から連絡があるまで伝え忘れていたことを詫びる彼女にお礼を言って、冬子は電話を切った。
携帯電話を机に置くと、敷きっぱなしの布団にぱたりと倒れる。
そうか、カノちゃんも帰ってこられたんだ。
布団に突っ伏して、冬子はじわじわと広がる喜びに身を任せる。
カノを助けられた。
ごろりと仰向けになった冬子は、天井に向かって手を伸ばした。何もつかめない手をぐっと握りしめる。
ちっぽけなヒーローだけれど、ちゃんと助けられたのだ。
身体中に広がった喜びに身を任せ、ごろごろと転がった冬子はそのまま目を閉じた。
喜びと共にあふれ出した熱が、腹の底にたまっている。それが自信になって、今ならなんだってできそうな気がした。
実際には大したことなんて何もできない、ちっぽけな人間だけれど。
「わたしは、カノちゃんの最強のヒーローになれたかな……」
冬子の閉じた瞳の向こうには、得意げにこぶしをふりあげる小さなヒーローの姿が見えたのだった。




