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その1 急がば廻れ右(最終パート)



 おれの宇宙輸送船クーガの大気圏中の飛行速度はマッハ一。つまり、1225キロ/時。副艦長、つまり女房の考えと、猫のクーガの気まぐれが間違えでなければ二時間ほどでゴールにたどり着けることになる。こうなったら、運を天に任せるしかない。

 おれは宇宙輸送船クーガを自動操縦にして最後になるかも知れないコーヒーを飲んだ。最後になるかも知れないセックスに女房を誘ったが睨みつけられただけだった。


 二時間後、宇宙輸送船クーガのセンサーが信号を取られ、難なく古城を発見し、王国の旗を手にした。あまりにもあっけなかった。

 おれが王国の旗を手にすると同時に、例の男が現れ言った。おれの傍らには副艦長とお袋がいた。

「あなたが勝者です。

もうレースの勝者は決まっているのに、他の参加者はまだレースを続けています。これまで我々は何回かこのレースを開催してきましたが、こんなに勝者が早く決定したのは初めてです。

 国王と一緒にレースの状況を観戦していた大臣の一人が“これはルール違反だ”とあなたを非難しましたが、国王は“ルールは、飛行高度は15万メートルを超えないことだけだ。後出しルールは、後出しじゃんけんと同じで、私の名誉にかけて認めない。あの船の艦長は利口なのだ”と一喝された。そして、国王はその大臣を解任された。なお、我が王国では大臣の任期途中の解任は、即、死刑を意味します。

 あなたは勝者としての当然の報酬を求めることができます。何にされますか?」

「一千万ロート分の金塊」と、おれは、即、答えた。

「そんな大金、どうするの?何に使うの?」例の男が何も言わないうちに、お袋が言った。

「協同組合の理事長になり、何処か治安がよく環境がいい惑星に屋敷を建てのんびり暮らすのだ」と、おれ。

「お前!」と、お袋がおれの事を睨んで言った。「美人でしっかり者の奥さんと、三人の可愛い娘と・・・」

 足元で“にゃ~ご”と猫のクーガが泣いた。まるで“私のことを忘れないで”と言っているようだった。「その上、利口な猫までいて、何が不満なの?」

 また、“にゃ~ご”と雌猫のクーガが泣いた。まるで“分かればいいわ”と言っているようだった。

「・・・」おれは何も言えなかった。

「第一、私は環境がいい惑星の屋敷でのんびり暮らすなんて、まっぴらよ!私は多少の危険はあっても、宇宙を駆巡っていたほうがよっぽどマシよ!」と、お袋が言った。

 おれは思わず、その美人でしっかり者の奥さんを見た。美人でしっかり者の奥さんは頷いた。

 おれは肩を竦め「一千万ロート分の金塊は忘れてくれ」と言った。

「でも、折角だから」と、その美人でしっかり者の奥さんが言った。「この宇宙輸送船クーガを住みやすいように改装したいわね。それから、ワープエンジンもより高性能なものにしたいわ!

 500万ロート分の金塊をお願いするわ!」

「分かりました」と、例の男が言った。それからおれだけに聞こえる小声で言った。「どこの、どの種族も女の方がしっかりしているようだ」

 おれと例の男は互いに苦笑しあい肩を竦めた。

 

 気づくと宇宙輸送船クーガのモニターに惑星Rが映し出されていた。おれの船は今回航宙目的地に予定よりも三日も早く着き、おれの足元には500万ロート分の金塊があった。


 今、おれは改装とワープエンジンを高性能にした宇宙輸送船クーガで惑星Hに向かっている。改装前には考えられない遠くの惑星に行けるようになったのだ。その分、これからいろいろなことが起きるだろう。楽しみのような、怖いような・・・。

 あれから一年が経ち、また娘が生まれた。あの日の夜にできた子だ。

 近頃、一番上の娘がおれに生意気なことを言うようになった。それにつられて下の娘達も生意気なことを言う。お袋も女房は共同戦線でおれを攻めてくる。

 我が宇宙輸送船クーガはますます女性優位だ・・・。そんな時、おれには肩を竦めるしかない。



 それから、あのレースに参加した者の他の船は見かけなくなったし、噂も聞かなくなった。


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