その1 急がば廻れ右(パート1)
おれは宇宙輸送船クーガの艦長。副艦長は女房だ。
他にお袋、5歳、3歳、1歳の娘。それから雌猫のクーガが家族で乗員だ。つまりおれ以外はみんな女だ・・・。
おれは小型宇宙輸送船クーガで(形式的には)宇宙運送業を営む個人事業主で組織される協同組合本部からの依頼で積載可能な貨物を数十光年の範囲内で運んでいる。宇宙輸送船クーガは小型で、性能も劣る。当然のことながら収入は僅かで生活は苦しい。家族6人と猫が食うだけでやっとだ。おれの夢は組合の理事長になることだ。そうすれば何処かの惑星の高級住宅地に屋敷を持ち、数百人の組合員を使い、儲けをピンハネできる・・・。
そのためには、500万ロートという大金が必要だ。実際、そのチャンスはあった。
一年ほど前のことだ。その時、宇宙輸送艦クーガは僅かな貨物を惑星Mに運び、そこからは空荷で一応の本拠地としている惑星Rに戻る途中だった。突然、全てのセンサーが作動停止し、亜空間通信もできなくなり、操船不能となり、その上我々は気を失った・・・。
どれくらい経ったのだろう、おれ達の宇宙輸送船は惑星の草原にいつの間にか不時着いていた。船窓から見ると他にも6つの宇宙輸送船が不時着しているのが見えた。いずれも協同組合員仲間だった。もっとも彼らの艦は、おれの船数倍大きく、より高速で航宙できる。
せめて、あれくらいの宇宙船を持ってみたいものだとおれは思った。
「艦長!」と、副艦長の女房が言った。女房は仕事中にはおれのことを“艦長”と呼ぶ。「普及した艦外センサーによると、この惑星の大気は呼吸可能よ。重力も地球と同じ1G。船外に出ても大丈夫!」
確かに船窓から見える景色は地球の景色そのままだった。「でも、地球でないことは確かよ」と、副艦長が言った。
で、おれは言った。「船外に出てみる」
おれが船外に出ると、他の船からもそれぞれ艦長が出てきた。それぞれ異星人だったが、互いに軽く挨拶を交わし話し合った。そしてみんながいつの間にか、宇宙の何処にあるかも分からない、この惑星に不時着していたことが分かった。
我々とは段違いの科学力を持った未知の知的生命体の仕業であることは確かだった。
「ブーン」という低い音がして、おれ達は突然日陰になった。おれ達は上空を見上げ、一様に「あっ!」と声を上げた。今まで見たこともない巨大な宇宙艦が微動だにせず、上空に停船していたのだ。
そして、眼の前に見たこともない異星人が出現した。奴は言った。
「突然、我々の星にご招待して驚きのことでしょう。私は我らの国王の使いの者です。
これから、我らが国王のためにあなたたちにはレースを行っていただきます。勝者にはそれなりの報酬を提供いたします。我らの国王のお慈悲です。感謝しなさい!」
「冗談じゃない」と、一番多大きな船の艦長が言った。「他人を大勢拉致しておきながら、王様かどうか知らないが、たった一人の野蛮な異星人の遊びか!!」
その野蛮な異星人が左目を閉じウインクした。
と、同時に一番大きな船が艦長を残したまま消えた・・・。




