第5話
ユリウス殿下の事を知る────。
前の人生では、学園生活での二年間、ユリウス殿下との関わりはほとんど無かった。同じように過ごしていたら間違いなく、あの方を知る機会などやって来ない。向こうから話しかけてくることは無いと分かっているのだから、私から話しかけるしか方法は無いだろう。
遠巻きにユリウス殿下に視線を送ると、あの方の周りには相変わらず、彼に取り入ろうとする取り巻き達の姿が。
あの中に入っていかなきゃならないのか。あまり社交的とは言えない私の性格では、だいぶ気力を使う行為だ。うう、殿下との関係を改善しなければ国に厄災が降りかかるなんて、無茶すぎる話だよぉ・・。
重い心をなんとか奮い立たせ、輪の方へと忍び寄る。しかし殿下はひっきりなしに誰かに何かを話しかけられていて中々タイミングが掴めない。え、えぇい、こうならゃヤケクソだわ。
「ユリウスでん・・」
声を上げかけたところ、前にいた女子の背中に押されて、私はまた尻餅をついてしまった。
「何をしてらっしゃいますの? 相変わらず鈍臭い方」
前にいた女子────アーシャは、今日も美しく巻かれた金の髪をかきあげながら、私に見下した様な視線を落とした。そして群衆の間から、こちらへと向けられた黒い瞳と一瞬目が合った気がしたが、彼は相変わらず冷たい表情のまま、すぐに私から視線を外した。
やっぱり無視するんですね。私を孤立させてから手を差し伸べようとしているのかもしれませんが・・やはりそれは、良い関係性とは言えないと思うのです。
「────婚約者が転んでいたら手を差し伸べるのが普通では?」
私の方へ注目が集まる。だけどもう後戻りは出来ない。
「相手が婚約者でなくても、女性が転んでいる場面に遭遇したら、手を差し伸べるのが紳士たるもの。そうではありませんか、ユリウス殿下」
私の言葉を受けて、ユリウス殿下は立ち上がった。そして群衆を掻き分けてゆっくりと、私の目の前に立ち塞がった。そして見上げたその顔は────見るからに不快と言った風に、私を睨み下していた・・。
ま、不味い。
私は死期を早めただけなのでは────?