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第12話 エルドラスの森と通過儀礼

俺たちはまだ石造りの隠れ家の最上部にいた。ラックとの握手が「血の同盟ブラッド・アライアンス」での俺の運命を決定づけたその時、階段から激しく急ぐ足音が響いた。一人の兵士が、息を切らし、目を見開いてテラスに飛び込んできた。


「ボス、問題が発生しました!」兵士は自分の足に躓きそうになりながら叫んだ。


ラックはゆっくりと俺の手を離した。その表情は歓迎の微笑みから、即座にリーダーとしての厳格さへと変わった。「今度は何だ?」


「例の侵攻作戦についてです。ご存知の通り、私は武器やポーション、全ての在庫管理を担当していますが……」


「それで?」ラックは苛立ちを隠さずに促した。


「全て順調だと思っていたのですが、大きな問題が一つ。今回の侵攻には、通常の倍の武器が必要です。しかし、手持ちの武器は既に摩耗し、寿命が尽きかけています。新しい装備が必要ですし、鎖帷子も同様です。どうしますか、ボス?」兵士は深刻な状況を説明し終え、困惑した表情で尋ねた。


ラックは溜息をつき、しばらく地平線を見つめた。「ふむ、なるほどな……タイト、リックを呼んでこい。二人とも今すぐ俺の執務室に来い」


「了解だ、呼んでくる」俺はテラスを後にした。


リックをあちcoち探し回り、ようやく訓練場で一人、槍の修練に励む彼を見つけた。その動きは正確で、金属が鋭い音を立てて空気を切り裂いていた。


「おい、リック! ボスがお呼びだ。行くぞ、深刻な話らしい!」俺は叫んだ。


「ん? ああ、タイトか. ちょっと待ってくれ、すぐ行く」リックは槍を地面に突き立てて答えた。


俺たちは組織の廊下を歩き、ラックの執務室へと向かった。静寂を破るのは、俺たちの足音の響きだけだった。


「それで、タイト。何の話か分かってるのか?」リックは前を見据えたまま尋ねた。


「ああ、ラックと一緒にいた時に兵士が報告を持ってきたんだ。簡単に言えば、武器に関することらしい」


「ふむ、なるほどな。おそらく俺にその厄介事が回ってくるんだろう」リックは口角を上げた。「着いたぞ。ここだ」


彼はドアを叩いた。*コン、コン, コン。*

「入れ」


俺とリックは木製のデスクの前の椅子に座った。二人とも緊張し、何が語られるのかを待った。ラックは指を組み、黄ばんだ書類を手にしながら俺たちをじっと見つめた。


「リック、ドワーフの村へ行って、この書類を届けてこい。ここには注文の詳細が全て記されている。お前は説明が苦手だろうから、全て簡潔にまとめておいた。ただ書類を渡して戻ってくればいい」ラックは端的に告げた。


「ボス、もしよろしければ……」俺は、ここから出て行動する必要があると感じて口を開いた。「俺は交渉事には自信があります。もしよろしければ、リックに同行させてください」


「ふむ」ラックは、あの鋭い視線で俺を評価し、鼻を鳴らした。「いいだろう。一緒に行った方が確実かもしれん」


「よし、決まりだ」リックは既に立ち上がりながら言った。「タイト、日没前の二十分後に出発する。準備しておけ」


「分かった。でも問題が……剣を持っていないんだ。道中で魔物に襲われたらどうする? まだ魔法を完璧に使いこなせるわけじゃない」俺は空のベルトを見つめて言った。


ラックは立ち上がり、デスクの横に置かれていた鞘入りの剣を手に取り、俺に差し出した。「これを持っていけ。当分は役に立つはずだ。予備のロングソードだが、あまり使っていないから刃はまだ一級品だ」


「助かるよ、ボス。ありがたく使わせてもらう」


***


二十分後、俺は「隠者の安息所ボスケ・ド・レフュージョ・オカルト」の外で待っていた。隠れ家の方を見ると、リックがゆっくりとこちらに向かってくるのが見えた。


「おい、タイト! 準備はいいか。行くぞ」彼は活気よく言った。


俺たちは北西へと続く土の道を歩いた。二時間ほど歩いた頃、天候が悪化し始め、前方に鬱蒼とした森が姿を現した。


「あそこだ, タイト。あれが『エルドラスの森』だ。魔物が巣食う場所だ。そこを横切る必要があるから、警戒を怠るな。何か奇妙な音がしたら、すぐに知らせてくれ。俺もそうする」


「了解だ」


俺たちは深い森に足を踏み入れた。突然、こちらに向かってくるような重い足音が聞こえた。

「タイト、足音だ!」リックは重心を下げて警告した。


「分かってる」俺はロングソードを抜いて答えた。


ゴブリンの群れだった。俺たちの姿を見つけるなり、緑色の怪物たちは鋭い叫び声を上げながら突進してきた。リックは槍で戦い始め、俺もそれに続いた。緑のクリーチャーを斬り伏せながら前進した。


(妙だな……このゴブリンたちを殺しているのに、何のスキルも手に入らない。俺の『サバイバー』は魔物には反応しないのか?)俺は次の一体を倒しながら考えた。


「ふぅ、この辺りは片付いたようだな」リックは額の汗を拭いながら言った。


「ああ、そうみたいだ」


再び歩き始めた。しばらく静寂が続いた後、俺は尋ねた。「なあ、リック……ところで、あんたはどうやって……いや、みんなはどうやってラックと知り合ったんだ? 俺と同じように誘われたのか?」


リックは溜息をつき、その視線は木々の間に消えていった。「ああ、始まりはこうだ……俺は名もない村に住んでいた。常に魔物や盗賊に襲われていたが、何とかやり過ごしていたんだ。だが、『瘴気に憑かれた魔物』が現れた。彼らの力は現実離れしていた。村人のほとんどが殺されるか負傷した。混沌が支配していた。俺は負傷しながら隣の村へ逃げたが、そこも既に破壊されていた。結局、帝国の都に辿り着き、Aランクの冒険者になった。帝国の学校で教官として働き、槍や他の武器を教えていたんだ。そこでラックに出会った。彼は当時、帝国の騎士だった。時が経つにつれ、俺たちは親しくなり、彼が発見したことを教えてくれた。俺たちは一緒に調査を始め、人々を救い始めたんだ。やがて救出した村人たちが俺たちに加わり……そうして『血の同盟』を設立したんだ」


「へぇ……そうやって始まったのか。驚いたな。でも、アリヤとソラは?」


「アリヤは俺とは違って、ラックに救われた奴隷だったんだ。ソラはヴェルモラ王国の知り合いだ」


「なるほどな……」俺はこれまでの経緯を整理しながら答えた。


突然、俺の感覚が叫んだ。「リック、強力なエネルギーを感じるぞ!」


「ああ、タイト、俺も感じた。背後に気をつけろ!」


俺たちは互いの背中をカバーするように防御の姿勢をとった。紫色の巨大な蛇が襲いかかってきた瞬間、俺は左へ、リックは右へと跳んだ。


「おい、タイト! 俺が正面を引き受ける! 隙を突け!」リックが叫んだ。


「了解だ!」


(リックがあの蛇と戦っている間に、学んだことを試させてもらうぞ)


「**身体強化フィジカル・エンハンスメント!**」俺は魔力の流れを感じながら念じた。


**【 敏捷性 +20 】**

**【 筋力 +10 】**

**【 速度 +15 】**


(よし、これで十分だ。次は剣に火を付与する。この刃なら魔法にも耐えられそうだ)


「準備完了だ、リック!」俺は叫んだ。


「了解!」


リックは前進し、槍で蛇の首に強力な一撃を叩き込み、貫こうとした。だが、怪物の肉はあまりにも硬かった。槍の先が鱗に挟まり、蛇は激しく身をよじってリックを弾き飛ばした。


「くそっ! リック、大丈夫か!」


リックは地面に叩きつけられ、朦朧としていた。意識を失いかけているようだ。蛇は倒れた戦士を無視し、冷酷な瞳を俺に固定した。突進してくる。


第12話 終わり

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