《過去編》 4-11 心優しき君へ スタン その6
オレ様なスタンの普段は見せないシリアスな一面? の話。
※今回少しですがBL風な表現があります。嫌いな方は飛ばして下さい。
11.心優しき君へ シュターニスラウス・オーベルシュタイン その6
「あの、聞いてもいいですか?」
他愛のない話が一段落した後、随分恐縮そうにカイリが切り出した。
「何だ?」
「その、あなたはどうして……自分に“呪い”をかけているんですか?」
―――げぇっ。
瞬間、冷水をぶっかけられた気分になった。
「す、すいませんッ!! どうしても、気になっちゃって……」
「……いや、いいんだ。しっかし、そんなコトまで分かっちまうなんてな」
そんな事、今の今まで聞くヤツは居なかった。……と言うよりは、気付けるヤツが居なかったんだ。
「あなた程の力が有るなら、そんな呪いは足枷にしかならない気がして……」
「……まぁ、な。確かに大人の肉体に成長すれば今よりもっと魔力の底上げが出来るのは確かだ。
契約精霊だって少なくともあと4万は増やせるだろうしな」
俺は隣に居る少年を見つめた。
「お前なら……いや、お前達なら、あの存在を、倒せるのかも知れない」
カイリは真っ直ぐにオレを見つめ返している。
「俺は、恐ろしくて逃げ出しちまった。自分が可愛くて、立ち向かうコトを放棄しちまった。
今でも、俺の実力じゃ勝てるとは思わねえ」
俺は『あの日』を忘れない。
ガキだった俺以外の術者を―――アカデミーきっての能力者で『長』でもあった父さえも、アレには勝てなかった。
ヒトの生命エネルギーを吸収して生きながらえる、実体を伴わない精神生命体。
特に、高い魔力を持つ者の生命エネルギーを好むアレを、俺は未だに絶大な恐怖とともにしか
思い起こす事ができねぇ。
『あの日』……。
「はは、……なんからしくねぇな、こんなのはよ」
俺のキャラクターじゃねぇや、全くよ。背中を向けて行きかけた時、その一言が聞こえた。
「あなたは……悲しい人です。」
こいつは、まるでそれが自分の事のように悲しげな顔をしていた。
「いつか倒せる手段を探し出すまで、そうやって……永遠にも近い時間を過ごすんですか?」
「カイリ……」
―――まいった。どうも、この子には隠し事が出来ねぇみたいだ。
調子狂うぜ………。
「この数百年もの間、これからもまたずっと、ずっと……」
あーあ、もぅ。唯でさえ可愛い顔してるのに、そんな大粒の涙浮かべられたら、こっちが困っちまうよな。
「お前は、俺の事、買い被ってるぜ。そんなイイモンじゃねぇんだ。
アイツを越えない限り、俺の……俺自身の為の人生ってのは、始まらねぇんだよ。
スタートラインにも、立てやしねぇ……それだけなんだ」
カイリは、心配するような表情を変えない。
「そんな顔、すんなって。折角の可愛い顔が台無しだぞ?」
他人にこんなにも真っ直ぐに心配されるってのは、生まれて初めてだな。
何かくすぐったくて、でも……暖かくて、なのに……「痛い」気分だ。
安心させてやりたくて、柔らかな髪を撫でてやる。
「やっぱ、こんなガキのなりじゃ、サマになんねぇな」
俺は、とある呪文を唱えた。ドロン、と俺の姿が青年へと成長したように化ける。
うん、我ながらなかなかハンサムなんじゃねぇか?
「ほら、もう泣かないでくれよ」
自分でもキザったらしいとは思ったが、カイリの涙を吸い取ってやる。
「じゃないと、ムラムラきて襲っちまうぜ?」
茶化すように言ってやると、ようやく少年は微笑んだ。
「ほんと、お前は、俺のタイプだよ」
「でも、ボク、男ですよ?」
「良いよ、俺、両刀だし」
ニィっと笑って、俺は少年に口付けた。
「あ……ぅん……っ……」
舌を挿れて、深くふかく、濃厚な大人のキスを。そしてついでに呪文を口移しに掛けておく。
………唇を外すと糸が引いた。
「―――俺が死んだら、精霊達の面倒を頼んで良いか?」
小さな、細い肩を抱き締める。
「……ダメ、です。みんな、あなたの事が大好きだからっ! 離れたくないって。
だから、そんな事言っちゃダメですっ!!」
「そっか、……そうだよな」
優しい子だ。この子になら、俺の精霊達を安心して任せられる。
本当の俺を、知っていてくれる誰かが居る。それだけで、良い……。
「そろそろ効果時間が切れるな」
もうすぐ魔法が解ける頃だ。また、いつものガキの格好に戻っちまう。
「約束してください。みんなと、仲間のために、生き続けるって。」
はぁ~。溜息が出るねぇ。
「……俺がやだって言えないの分かってて言うか?」
「だから、です。……ね? 指切り」
小指と小指を絡ませて、二人で声を合わせる。
「ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたーら、はーりせーんぼん、のーます、ゆーびきったっ」
俺達は、どちらからともなく笑い出した。
「じゃあ、行きましょう。第13研究室は、もうすぐですから」
「アイツ、多分待ちくたびれてやがんなぁ」
俺が行くことは、ちゃんと連絡が行っている筈だ。大体、アイツ一人じゃ部屋まで帰れないし。
「しゃーねぇな、オレ様はアイツの保護者なんだもんな。よっしゃ、走るぞ、カイリ!!」




