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神との戦い




 ーー神様という存在は、どうやら目に見える存在らしい。



 


 周りを見渡すと、人、神、人、人、神、人、神、神神神神。


 


 なんだこれ。




 いつからか、僕たちは神様と一緒に暮らすことが当たり前になっていた。学校へ行けば神様が先生だったりするし、神様が生徒だったりもする。

 いくら平等な社会を作ろうと政府が張り切っていたとはいえ、神様まで平等になっちゃうなんてどうかしてる。


 それに、僕の家に住みついてる神様なんて……、路上で飢え死にしそうだったのを僕の母が助けたところ、一向に出て行こうとしなくなったダメ神様だ。

 この神様が住みついたことを境に、僕の中にある神々しく偉大な神様というイメージは完膚なきまでに崩れ去った。


 まあ、僕にとって一番大打撃を受けたことといえば、歴史の授業の中に、神様の歴史を細部まで学ぼうという分野が追加されたとこだけど。

 正直日本史、世界史だけでも過去のこと学んだところで何の役にも立たないだろうと思ってるのに、神様のことを学べだって? それこそ何の需要があるんだよ! 何の役にも立たねーよ!


 ……っと、話が逸れてしまったけど、それほど僕は神様が当たり前のように暮らしているこの社会にうんざりしている。

 

「おーひな? そこにツクのポテチがあったはずだが…ないのだ。どこか知らぬかー?」

 

 あぁそう……僕の名前は日向。鈴森日向。周りの人からは大体ひなって呼ばれてる。


 歴史を盛大にdisってるあたり成績も大して優秀なわけでもない。どっちかというと悪いかもだけど、華奢な見た目に反して運動神経にはちょっと自信がある。

 まあ自慢できるのもそれくらいで、全体的に見るとただの平凡な高校生だ。


「ひな? 聞いておるのか? ポテチだポテチっ!」


「うっさいな! 今絶賛現実逃避中なの!」


「全く……現実逃避したところで何も変わらないというのに」


「ツクには言われたかないよ。社会から現実逃避真っ最中じゃないか」


 僕はそう言って、ツク……。以前僕が聞いた話ではツクヨミ……月の神様という立派な神様という話だった神様に顔を向けた。

 まんまるとした大きな瞳に、着物の下に隠れた白い肌。幼い顔つきではあるが顔のバランスも整っており、身長も140前後のように見えるため特に違和感はない。

 見た目はそんな感じの可愛らしい美少女である。だがタイプではない。


 以前語られていた神様の歴史というのはあってなかったと言ってもいいくらい嘘っぱちだ。なんでかって?それはツクの存在が証明してる。

 路上で飢え死にしかけてた神様だし。


「引きこもり神様のツクヨミ様じゃないか」


 僕は固まってたツクに追い打ちをかけるように再び口を開く。


「な、なにをー! ツクを引きこもり神様などと言うのだな? ひな、それは違うぞ。ツクは毎日外で遊んでいるのだ。規則正しく生活しておる……断じて引きこもり神様ではないッ!」


「そう、じゃあアウトドア型ニート神様」


「ツクはまだ働く歳ではない。ひなと年齢的には変わらんぞ。隠してあるがひなの学校の制服だってある」


 僕の知ってる情報だとツクヨミって日本の神様の中でもだいぶ初期の神様なはずだけど? 僕と同じ歳? 一致してるとこなんて月の神様だったってことくらいじゃないか。


「じゃあ、学校行かないとダメだろ」


「行くわけないぞ」


 ツクは笑顔で答える。


 そして僕から少し距離をとった。見るからに警戒している。

 まるで草食動物が敵から危険を感じとっているようだ。


「制服は……どこ?」


「ひな、ツクはこう見えて歳の変わらない女子なのだ。お、教えられないことだって山ほどある……」


「そうかぁ、男女平等主義の僕にはどうでもいいなぁ、そんなこと。どこだよ制服」


「ひぃぃぃぃ」


 逃げ出そうと立ち上がったツクの着物を右手で掴む。

 逃すわけないだろ、制服も持っていると知った以上…毎日一緒に登校してやる。今まで遊び呆けてた罪、死ぬまで味わうがいい。


「毎日朝早くからジョギングしてたんだし、朝早くから学校に行くのだって何も問題ないよね。なあツク」


「問題大有りだ。ツクは勉学が大の苦手だ」


 謎のキメ顔で答えたツクは、僕の右手の力が若干緩くなったと同時に勢いよくそれを振りほどいた。

 勢いよく振りほどいたため、後ろにあったクローゼットに頭から突っ込む。


「ひな。早く、早く助けるのだ」


「いいけど、そこの新品のブレザー。ツクのだよね?」


 ここはツクの部屋だ。僕の制服がかけられているわけがない。それに新品……女子の制服。

 ツクめ、墓穴を掘ったな。


 ツクの顔が青ざめているのが見なくてもわかる。そして、僕の顔もかなり悪人面な表情をしているのがなんとなくわかった。


「明日から……学校な?」


 ツクの学校サボり生活が終わりを告げる瞬間だった。

ツク「ここにひながいないから言うが、まだ制服が見つかっただけだ。誰も学校に行くとは言ってないからな」


隠れてたひな「んん?」


ツク「あっ…いや…、なんでもないぞ」

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