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未登録放送  作者: NoNaMe
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あとがき

このたびは『未登録放送』を最後までお読みいただき、ありがとうございました。本作は、正体の分からない声そのものよりも、声を聞いた人が何を記録し、その記録を次の人がどう読むのかを描く物語でした。事件について確認できる事実には結論を置きましたが、怪異については意図的に最後の扉を閉めていません。このあとがきも、その扉の外側にあるとは限りません。


選んだ言葉の正体を考えるとき、多くの人は最初に「誰が話したのか」を探すと思います。けれど、作中で聞き取られた言葉を並べると、完全に未知の単語を聞いた人物は一人もいません。自分の名、家族の名、既に読んだ文字、あるいは人名として知っている音。声は聞き手の外から来たようでいて、材料の一部を聞き手自身から借りています。


はじめの構想段階では、録音の波形に明確な台詞を隠す案もありました。しかし、それでは再生機器を変えても同じ答えへ到達してしまいます。本作で重要なのは、音源が同じでも答えが揃わないことです。音声解析が示したのは「声が存在する」ことではなく、声だと解釈できる隙間が、同じ位置に存在することでした。


奇妙なことに、資料を制作する過程で一つの傾向がありました。文字起こしを先に読んだ人ほど、その文字に近い音を聞き、何も読まずに再生した人ほど「言葉かどうか分からない」と答えたのです。ただし、全員がそうなったわけではありません。この例外を誤差と見るか、何かへの抵抗と見るかで、怪異に対する仮説は変わります。


空欄にも注意してください。事故報告の欠けた別紙、八つ目に見える欄、削除された投稿、聞取人不詳の署名欄。物語の中では、書かれている内容よりも、書かれるはずだった場所が繰り返し残されています。何かが記録から消された結果、怪異が生まれたのか。それとも、空いた場所へ後から意味が入り込んだのか。両者は似ていますが、同じではありません。


一つだけ、本文にも公開資料にも収録しなかった古い走り書きがあります。それは三十七年前の事故より前に作られたもので、「呼ばれた名前」ではなく「呼ばれた方角」を記していました。声の主も犠牲者も書かれておらず、その場にいた者が全員、同じ壁を向いたとだけ残されています。点検坑の椅子が拡声器ではなく、壁へ向けて置かれていたことを思い出してください。


ところで、「みなせ」は何だったのでしょう。人名、姓、命令形、あるいは無意味な音の分節。どれも捨て切れません。ただ、元の音には単語の境界を示す沈黙がありません。「みなせ」と切るか、「水、飲ませて」の一部と切るかは、聞き手が決めています。音が言葉を運んだのではなく、聞き手が音へ境界線を引いた可能性も残っています。


外側から人数を数えてみると、八人目の意味も少し変わります。仮に八人目が実在したとしても、その人物が声の主とは限りません。七人と八人の差は、死者の人数ではなく、数えた人間の位置を示しているのかもしれません。点呼する者は列の外に立ち、自分を人数へ含めない。では「聞いた人数」を数えるとき、記録を作った聞取人は内側と外側のどちらにいるのでしょうか。


次に資料を読み返すなら、名前より先に動詞を拾ってみてください。「聞く」「呼ぶ」「返す」「記す」「見なす」。この物語では、怪異らしい名詞よりも、人が何かをした瞬間に記録が変化しています。特に「見なす」は、曖昧なものを何かとして扱う行為です。「みなせ」が命令なら、何を見ろという命令ではなく、何を何として扱えという命令だったのでしょう。


繰り返された祭礼にも、二つの読み方があります。声を遠ざけるための対処だったのか、同じ順序で音を聞く訓練だったのか。六分間隔で子局を鳴らし、返事を禁じ、決まった道を歩く。その手順は人を守る儀式に見えますが、同時に、町中の人間へ同じ待ち方と同じ聞き方を教える装置にも見えます。防いでいたものと育てていたものが、同じだった可能性があります。


ルールを探すなら、「最初にその声を発したのは誰か」ではなく、「最初に雑音を声として記録したのは誰か」と考えてみてください。その人物が怪異を作ったとは限りません。けれど、誰かが文字にし、誰かが読み、誰かが同じ形で聞いたとき、現象は個人の体験から共有可能な記録へ変わります。皆さまが資料を読み、照会語を入力したことも、その連鎖の外ではありません。


もう一度読み返す際は、誰が先に何を読み、どの順番で音を聞いたのかを追ってみてください。最初とは違う事件が見えてくるはずです。


そして、もし何かが聞こえても、すぐには文字にしないでください。


書かれた言葉は、次に聞く人の耳へ先回りするかもしれません。




ここまで、この記録にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


もし本作を面白いと感じていただけましたら、評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。


また、感想やレビューもお待ちしています。皆さまが声をどう聞き、資料から何を見つけ、どのような真相へたどり着いたのか、ぜひ教えてください。


ただし、照会語や資料の内容、物語の核心に触れる場合は、これから読む方への配慮として、ネタバレを含むことを最初に記していただけますと幸いです。


寄せられた考察が、ほかの誰かの耳へ新しい言葉を先回りさせるかもしれません。


それもまた、この物語の続きなのだと思います。

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