雨と恋
その日は雨だった。
傘を忘れためいは校門で立ち尽くしていると
頭上に傘が差される。
「入る?」
健だった。
二人で並んで歩く帰り道。
雨の匂い。
制服の袖が少し触れる。
めいは小さく呟いた
「優しいね」
健は笑う。
「優しくねーよ」
「優しいよ」
「……お前がそう思いたいだけ」
その言葉が妙に苦しかった。
人は、自分が信じたいように他人を見る。
それが優しさにも、残酷さにもなる。
子どもでも大人でもない…。
そんな2人は雨の音が響く中無言で歩き続けた。
雨の音は好き
波の音も好き
どちらも私を責めず心地よく鳴るだけだから。
私を家まで送ってくれた健は
「じゃぁ」
と言って踵を返そうとした
「待って!」
咄嗟に制服の端を掴んでしまったけれど
その後の言葉がでない
沈黙を破ったのは健だった
珍しくおどけた顔して
「1人が心細いのか?」
と笑った
ドキっ
胸が痛い。
心臓がうるさい。
どうしよう、どうしよう。
何か言わなきゃ
咄嗟に出た言葉が
「帰らないで!」
だった…
驚いた顔をした健がフッと笑って
少しだけな、と言うから
そのまま2人で家に入った
私の部屋、と言っても狭いアパートだから
たいした部屋じゃないけど
2人で床に座り込みベッドにもたれかかった
「親は?」
「いない」
「1人で住んでんの?」
「まさか。母親」
「仕事?」
「そう、明日の朝まで帰ってこない」
「は…?」
「うちシングルでさ、父親は逃げて行方不明、母親は夜職で朝までいない。私が学校行った後帰ってきて昼過ぎまで寝てまた仕事。だから週1くらいしか顔合わせない」
「…いつから?」
「小4」
そっか。と呟いたまま健は黙った。
沈黙が続くけれど居心地は悪くない。
なんとなく隣に座ってる健の肩に寄りかかってみた
健はそっと頭を撫でて優しい声で言った
「頑張ったな」
うん
「1人で頑張ったんだな」
うん
声にならない返事をしながら
なぜか目からポロポロと涙が溢れてきた
優しく頭を撫でていた手に力が入り
そのまま引き寄せられて唇が重なった
何度も優しく慰めるようにキスをする健
好き…
俺も…
声にならないほど小さな言葉を伝え合う
その日はお互いの存在を確かめるように、
今、ここに自分が存在しているのかを実感するように
何度も何度もキスをして体を重ねた。




