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まだ君に夏を返せていない  作者: 夏凜


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11/11

あの夏

卒業式の日。


桜が舞っていた。


友香との仲は元に戻らなかった。

壊れたものは元通りにはならない。


けれど形を変えて続く関係もある。

いつか話せるようになるかもしれない


誠は地元を離れた。

友香は専門が決まったそうだ。


健は働きながら通信高校に通い夜間大学を目指していた。

建築関係を学びたいんだ

って強い意志が見える顔で教えてくれた


「大人になるってさ」


帰り道、健が言う。


「失うこと増えるな」


めいは、ふっと笑った。


「でも、選べることも増えるよ」


海が見えた。


あの日と同じ海。


けれど景色は違っていた。


人は変わる。


傷つきながら。

誰かを裏切りながら。

誰かに救われながら。


幸せになったからといって、過去の傷が消えるわけじゃない。


むしろ、幸せになった時ほど、人は過去を思い出す。


それでも前を向くのは――

隣で笑う誰かを、失いたくないと思うからだ。


健がそっと、めいの手を握った。


「今年の夏こそ…一緒に…」


うん…


「まだあの日の約束を果たせていないから。あの日の夏をお前にかえさなきゃな」


健がポツリと呟いた


潮風が吹く。

遠くで、春の海鳴りが聞こえていた。



END

最後まで読んでいただきありがとうございました


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