表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
改 悪役令嬢がいじめてこないのでストーリーが進まない! 〜もしかして私は、悪役令嬢がヒロインの物語で断罪される元ヒロインですか!?〜  作者: うみの もずく
この世界のヒロインは

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/20

19話:聖女の初陣①

 8月。ついに初の討伐隊へ参加する日がやってきた。

 参加が決まってから先輩たちとシルベール様に鍛えてもらったし、レベルも十分だという自負はある。けれど、やはり実戦となると心臓の音がうるさかった。


 目的地までの移動は、騎士魔導部の馬車に同乗させてもらった。当初はシルベール様と一緒のはずだったが、急遽、彼が傭兵隊の隊長を任されることになり、別行動となったのだ。

 

(魔王戦へのスカウトに向けて、好きな食べ物くらい聞き出しておきたかったんだけどな……。残念)

 

 討伐隊の隊長を任されるほどの逸材が、なぜ原作にも小説にも影も形もないのか。攻略対象であるなら、是非リリアージュに攻略(捕獲)してほしいところである。

(まあ、それはアレン王子が許さないんだろうけど……)

 そんな勝手な想像をしながら、私はガタゴトと揺れる馬車に身を預けた。


 *

 

「現地では各隊の隊長の指示に従うこと!勝手な行動はしないように!」

 

 道中、現地での動きについてカルティナ先輩が指示を出す。基本的に学生は後方支援だというが、レベルの高い生徒や特定の魔法を使える場合は戦闘部隊に組み込まれることもあるらしい。


 基地に着き、学生は各隊に振り分けられる。ここからは私は別行動だ。案内役に従って指定された控室へ向かう。

 真っ白な聖女の制服に着替え、扉を開けた瞬間、部屋にいた面々が一斉にこちらを振り返った。

 

「おお……これぞ聖なる御姿! お待ちしておりましたぞ、聖女様!!」

 

 15名ほどの男たちが、示し合わせたように一斉に跪いた。司祭のような法衣から、豪奢な鎧、整った軍服まで、身なりは様々。だが、その瞳に宿る熱量だけは共通していた。

 

「あ、あの……顔を上げてください」

 

 困惑して告げると、彼らはバッと顔を上げた。

 

「なんと慈悲深いお言葉……! 命をかけて聖女様をお守りいたします!」

 

(いや、自分の身くらいは守れるように鍛えてきたんだけどな……)

 どうやら特訓の成果を発揮する機会は無さそうだ。物足りなさを感じつつも、彼らの抱く「理想の聖女像」を壊さないよう、顔の筋肉を総動員して「聖女スマイル」を貼り付けた。


 そこからは彼らの聖女語りが始まった。聖女がいかに神聖で絶対的な存在か。どのような奇跡を起こしてきたか。彼らにとって、「聖女」は崇拝の対象だった。そして何度も聖教園ルミナージュへの転校を勧められた。

 

 貴族が目指す学校は主に2校、私達が通う王立学園と教会が運営する聖教園ルミナージュだ。

 聖教園は2代目聖女が建てた学校で、篤い聖女信仰だという。

 

「起床時と食前、就寝前に聖女様に感謝を伝えます。聖女様がいらしてくだされば、もちろん直接お祈りいたします!!」

 

(絶対嫌だ……)

 絶対に転校はしない。固く心に決め、貼り付けた笑顔で彼らの話を聞いた。

 

(疲れたなぁ…)

 彼らの一方的な話に、戦う前から精神をゴリゴリと削られ、表情筋がピキピキと音を立て始めたその時。


『—―全軍、中央広場へ集合せよ!』

 

 風魔法に乗った、低く鋭い号令が響き渡った。

 

(やっと解放される!)

 私は救われた思いで、逃げるように控室を後にした。


 *

 

「諸君!良く集まってくれた!今回の編成は……」

 

 壇上で全軍を見下ろすのは、今回の総大将・シルベール公爵。シルベール様の父親だ。精悍な顔立ちと輝く銀髪に血筋を感じる。

 貴族隊、一般隊、そして傭兵隊。それぞれの隊長が順に紹介されていく。

 

「傭兵隊長――ヴォルク」

 

 最後に呼ばれ、シルベール様が壇上に上がった。

 ほかの隊長が豪華絢爛な装飾付きの白い軍服を纏う中、シルベール様は実用性に特化した黒の軍服を着ていた。

 

(すごい……本当に隊長なんだ……)

 普段、演習場で私をボコボコに(失礼、熱心に指導)している人が、今はとても遠い存在に見えた。

 尊敬の眼差しで見つめていた、その時だ。

 

「今回、新たに覚醒した聖女殿も参加されている」

 

 公爵と、バッチリ目が合った。

(え、まさか!?!?)

 

「壇上へ」

 

(ひええええ、先に言ってよー!)

 全軍の視線が私に突き刺さる。バクバクと跳ねる心臓を抑え、転ばないよう慎重に、震える脚で壇上への階段を登る。

 

(どうしよう、、何話そう……あっ!そうだ!)

 

 私は壇上の中央で足を止め、優雅に右脚を引いた。

 

「皆様に、神のご加護がありますように」

 

 リリアージュに習った完璧なカーテシーと同時に、魔力を一気に解放する。

 総大将と各隊長たちの足元から、眩い光の柱が立ち昇り、彼らの身体を包み込んだ。

 

「これは……聖域か。見事なものだ」


 公爵達を包み込んだのは、聖属性の魔法の一つである聖域展開。魔物が扱う闇属性の攻撃を無力化する、特殊シールドだ。

 驚きに目を見開く公爵を確認し、私は静かに微笑んだ。

 公爵はすぐさま全軍に向き直り、剣を掲げて吼えた。

 

「諸君! 我らには聖女の加護もある! 勝利は我らの手に! 魔物を打ち倒そうぞ!!」

 

『おおおおおおおお!!』

 

 大地を揺らすような、威勢のいい勝鬨(かちどき)が上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ