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EP03 導かれし金の亡者達。その2

 うーむ、目の前にいるパンツ一丁の少年――井上春太だが、コイツは特異体質なんだろう。


 何せ、ルルルイエ樹海内にある湖から湧き出す魔界の瘴気を、その身に浴びても何も変化がないしね。


 まあ、それも長続きしないんじゃないかな?


 俺はそんな気がしている。


 そのうち俺みたいに身体が女のモノの変わっちまうさ……きっとね。


「あ、いたぞ!」


「まったく、逃げるなんて酷いじゃないかー!」


「う、うわああ、出たァァァ! 不思議の国の年増女がーッ!」


「ちょ、俺はまだ三十路になっちゃいないぜ! ほら、胸だってタレてないだろう!」


「マリウス、脱がなくていいーッ! ストップ、ストップゥゥゥ~~~!」


 ん、美人ではあるが、年甲斐もなく不思議の国のアリスのような格好――水色のワンピースと白いエプロン、それに黒いリボンに縞模様の靴下といった如何にも幼い女のコが好みそうな格好をした赤い髪の年増女がやって来る。


 俺が所属する何でも屋サキュロ団の仲間であり、同じ女魔族の一種であるサキュバスのマリウスだ。


 ついでに、紺色のブレザーとチェック柄のスラックスといったどこかに男子高生が着ていそうな制服姿の黒髪の女のコ――サマエルも一緒だ。


「お、メディエリカじゃん! 丁度イイところで会ったな。お前も一緒に、ソイツの身体を調べてみないか?」


「ここにやって来たクセに、その身に何も変化が起きない――というソイツの奇妙な体質が気にならない、メディエリカさん!」


「うーん、確かに……」


「う、うわああーッ! や、やめろ、僕の肉を食べても美味しくないぞゥ! あああ、今の僕はゾンビに襲われ脳みそや腸を食べられてしまう被害者のようだーッ!」


「あのなァ、そういうゾンビとか人食い人種的な事はやらねーっての! そうだなァ、お前の身体を爪先から頭の天辺……身体の隅々まで調べるだけさ☆」


「マリウスがそういう事を言うとエッチィな想像が頭に中に浮かんでしまう!」


「あ、ああ、確かに……」


「なんだとゥ! クソァ、俺をそんな目で見やがって!」


「だって、お前、服を脱ごうとしてるし……」


「ち、違うぞォ! ソイツの身体のメカニズムを調べるための服に着替えようと思ったんだ!」


「ホントにホント?」


「おい、お前ら! こんなところにいたのかッ――年に一度のアレが始まるぞ! さっさと向かおうぜ!」


 ルルルイエ樹海内になる湖から湧き出す魔界の瘴気を浴びても春太の身体に何も変化がないワケだし、マリウスやサマエルと同じ考えを抱いてしまったぞ、俺!


 むう、アイツの身体の隅々まで調べてみたいかも――探求心に火がついたかも☆


 とそんな俺達のもとに二足歩行で尚且つ服を着た白い兎がやって来る――兄貴だ。


 ん、年に一度のアレが始まる? 何かイベントでもあるのか?


「兄貴、アレってなんだよ?」


「アレだよ、アレ! ほら、アレアレー!」


「アレじゃわからんぞー!」


「私が代わりに説明するッス。兄貴がアレアレ言ってるアレとは十年に一度、行わる大規模なオークションの事ッス」


「オークション? ああ、この世界でもやってるのかァ」


「ちなみに開催場所はレインシエル城ッス」


「レインシエル城? サキュロの村の近くにあるのか?」


「メディエリカ、ここから見えるぞ。ほら、霧がかって薄っすらとだがな」


「ん、もしかして、湖のド真ん中にある城みたいなモノか?」


 ふーむ、この異世界リドームアースでもオークションが行われているようだ。


 で、ヤスの話じゃ大規模なオークションらしいから、凄いお宝が出品されたりして――。


 さて、そんな大規模なオークションが行われる会場が、俺がいるルルルイエ樹海内にある湖のド真ん中にあるレインシエル城という場所なんだとか。


 むう、霧がかって薄っすらとしか、そのシルエットが見えないが、巨大なナニかが湖のド真ん中にそびえ立っているのは確かだ。


「ま~た、あそこで開催かァ……」


「ん、十年前? ああ、若い頃ね。んで、何かあったの、マリウス?」


「おい、若い頃は余計だぜ、サマエル! 俺はまだ三十路前だから十分、若いっつうの!」


「ニャハハ、冗談だよゥ。マリウスは若い、そしてスタイル抜群で超然美形だよ☆」


「フン、わかりゃいいんだ。さて、何があったのかを一言で説明すると〝亡霊騒ぎ〟だよ」


「ぼ、亡霊騒ぎ?」


「アソコは古戦場でもあるんだ」


「古戦場? あ、ああ、なるほど、だから〝出る〟ワケね。戦死したモノ達の亡霊が……」


「オマケに、アソコは魔族的には裏切り者になる勇者ソルファードと最後まで争った青の魔王って奴の居城でね」


「な、なるほど、それで魔族的には曰くつきなワケね」


 うむー、古戦場であり、あの勇者ソルファードと最後まで争った青の魔王とやらの居城だったらしいし、そりゃ亡霊騒ぎ――いや、それ以上の問題が起きて当然の曰くつきの場所だなァ、確かに。


 やれやれ、何故、そんな場所で大規模なオークションなんかを――。


「うーん……」


「ン、春太、どうしたんだ?」


「気のせいかな? あの城……レインシエル城だっけ? あの城の方から誰が呼ぶ声が――」


「ちょ、ヘンな事を言うなよ!」


「アハハハ、青の魔王の幽霊が呼んでいるとか想像してビビったんスか、ひょっとして☆」


「違うっての! と、とにかく、空耳だ、そ~ら~み~みィィーッ!」


 むう、春太の奴、何を言い出すんだ。


 ちょ、別にビビってなんかいないゾ!


 し、しかし、妙な事を言う……一体、どんな声が聞こえたんだろう……何気に気になるなァ。

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