十五話 この世界でも権力争いというのはあるらしい
無事に街にもどったオレ達はとりあえずいつも通りだった。
学校に行って呪いの問題を解決していく。
ほとんどが呪いの核になるものではないので解除は難しい状況だ。
とはいえ、それでもどうにかなっている。
ただそろそろ元々、街にあった備蓄が限界を迎え始めていた。
けれどもそれも解決を始めていた。
「あの公爵家がどうにかしたそうだ」
そう言ったのはローイだ。
「あの公爵家が」
「ああ。あの後、調べてみたところ……。
本当に呪われていてな。呪っていた連中を探していた結果、政敵だったんだ。
まあ。そこからはいろいろと問題があるし詳しく知るとドツボにハマるから言わないが」
「そうしてくれ」
現代日本でも政治では駆け引きがある。
汚職とか賄賂とかそういうスキャンダルがマスコミにばれる。
だが、そのばれるのも実はそのマスコミへ情報をリークした存在が居て……。
とにかくいろいろと一筋縄ではいかない。
そういうのに関わるのは少し勘弁してほしいぐらいだ。
「まあ。それをどうにかしたという形だな。
それでお礼をしたいそうだが……。正直、もう会いたくないだろ」
「会いたくないね」
きっぱりと断言した。
正直、あのバカ息子もそうだがそのバカ息子に似ている両親も見たくない。
いや。厳密に言えばあのバカ息子が両親に似ているのだろう。
「まあ。気持ちは理解します。
それで支援としてこの街の流通の手伝いを約束したんです。
まあ。それにうまみが全くないというわけじゃ無いでしょうし」
「あー」
その言葉に俺も察する。
「どういうことですか?」
わからないのはフールらしい。
「たいしたことじゃない。
異世界の技術が知りたいんだろ」
そうオレは言う。
「発電機、病気の治療法、農業。
魔法が無いから魔法使いからみたらうまみが無い。
けれども……全ての人間が魔法を使えるわけじゃ無いだろ」
「ええ」
オレの言葉にローイは同意すれば、
「なるほどね。それにこの世界の文化や技術、それらの中にはとても魅力的なのはあるわ」
そう答えたのはフィリだ。
「このしょーゆとかみそと言うのも……。すごくおいしいしね」
そう言って台所にあった醤油差しを指さす。
西洋風の世界なので醤油はないのだ。この世界は……。
ついでに味噌も無いしみりんもない。
米も馬の餌としか使われていないほどだ。
たまにくる物好きが日本食を食べて喜んでいるのはよく見かける光景でもあった。
それだけではない。
日本のサブカルチャーは元の世界でも有数のものだった。
アニメにマンガ、ラノベなどはすごくそういったものが好きだという理由で留学を決める人だっているそうだ。
まあ。あくまで噂程度なので実際にそういった人に会ったわけでは無いけれど……。
他にもこの世界基準は知らないが日本というのは以外と驚きの伝統芸能というのはある。元々、日本人は地道にコツコツとやる飢えにオタク気質というか何かにこだわってやり続ける気質がある。
そういったことを考えるとさほど驚くことでは無いのかもしれない。
ぱっと思いつくのでもそういった便利性の高いものはいくつかある。
そういったことを考えれば驚くことでは無いのかもしれない。
つまり一か八か……デメリットも確実だがそれを打ち消すほどのメリットがあるかもしれない。そんなある意味では賭のようなものだったのかもしれない。
そして敵や味方もつくるかもしれない。
デメリットは確実。そしてメリットは不確定。
……株だってもう少しましかもしれない。
そう思わせる。
けれども今回は違う。
ある意味、俺に迷惑をかけたのだ。
そういった謝罪もあるのだろうしそしてメリットもある。
そこを考えると納得だ。
こちらとしてもそれを断ることが出来ない。
と、言うか……。
「そもそも俺は街のリーダーじゃねえし」
「それは町長か市長の役目よね」
俺の言葉に薫が同意する。
心の底から同感だ。
「とはいえ、そう簡単にいかないのだろう」
そう言ったのはローイだ。
「どういうことだ?」
「町長だがなんだか知らないがこの街の責任者にはこちらの行動だと伝わる。
つまり流通や頼み事……そういうのに貸しを作ることが出来たと言うことだ」
「うわ。大人の世界」
ローイの言葉に薫がうめくように言う。
「こっちとそっちじゃ大人の年齢が違うんだろうな」
そうため息交じりに俺は言う。
もちろん俺だって高校生だ。
冬にサンタクロースが煙突を通ってやってくると本気で思ってはいない。
現実には打算があるし真実だけで政治は回らない。
だが、
「お詫びがそういう政治に関わらせることかよ!
いや。まあ。フールのことがあるしな」
そう言って俺はフールを見る。
否応なく関わることになったフール。
全ての元凶である呪いの魔女王の娘。
そして呪いの魔女王が復活するための生贄とされてしまった。
こいつと一緒に呪いを解除する。
そう決めた次点で厄介ごとに関わっているのだ。
そうわかっていても愚痴を言いたくなるのが……人間という物だと俺は思う。
「まあ。もう二度と、あの男はあなたの前に現れないでしょう」
そう愚痴を言っていたらそう言ってきたのはラファレアさんだった。
「ラファレア様」
驚いた様子のローイ。
「いつから……」
「少し前からだな。迎えに来たんだ。
苦労したようだな」
「はい。とてつもなく」
真顔で思わず肯定してしまう。
「あの息子の行動に関してはいろいろと話題になっていたが……。
家柄もあって基本的に関わるな。と、言う形だったな。
今まではさほど致命的な問題は起きていなかったからな。
一つの愛に純粋というか一直線。一途な気質があたのだろう。
だが、お前の呪いとは相性がある意味では良すぎたんだ。
お前を惚れて破滅へと全速力に駆け下りたんだ」
駆け下りたというよりも転げ落ちたのでは?
そんな疑問を抱いたが黙っておく。
まあ。確かに恋で破滅というか人格が凶暴化する。そういうことをしていずれは家を破滅へと導くような呪い。
それとオレの他者を惚れさせて自分を含めて破滅へと導く。
そういう傾国の美女と言う呪いとはある意味では相性が良すぎたのだろう。
全くもって嬉しくない。
「今後、このようなことがないように気をつけたいと思っています。
ですが、あなたの呪いは今後も波乱を引き寄せてしまうかもしれません」
その言葉にオレは黙る。
「様々な呪いを見てきました。
あなたの呪いは核ののろいじゃ無い。
けれども極めて厄介なのろいです。
おそらくですが呪いの魔女王の性格から考えると……。
何かしらの意味があるかのうせいがあると思います」
その言葉にオレは、
「あの。今更かもしれませんが……。そもそも呪いの魔女王の性格ってどんなのですか?」
そう尋ねていた。
「本当に今更ですね」
「とはいえ、この状況の元凶ですし……。
それにこのハリセンがある以上、無視できる存在じゃ無いでしょう」
それにフールのことがある。
フールは呪いの魔女王の娘。
そして復活のための生贄でもある。
当人はもちろんその復活のための生贄になるつもりは無いが……。
それでもおとなしくそうなっている予定はなさそうだ。
けれども復活を考える連中。
そしてそのために強硬手段を考える連中。
この状況の元凶。
「行ったこと。それによる影響。
それはわかりましたが……具体的なことは何も聞いていないので」
そう答えるとしばらくラファレアさんは考えた様子だったが、
「よいでしょう。さすがにここまで来たら話しましょう」
そう答えてくれたのだった。
そもそも呪いというのは印象が悪いが……。けしてそれは悪というわけではない。
「例えば守るための呪いというのもあります。
盗んだ者が不幸になる呪い。
あるいは悪意ある行動をしたものは呪われて動きを封じる。
そういった呪いがあります」
「ああ。要するにちょっと過激な警備システム的な?」
そうオレはつぶやいた。
確かにそう言われるとわからない話では無い。
例えば無断で王族の住居に入れば茨によって動きを封じられる。そうすれば暗殺者や敵対する国の兵士などから王族を守れる。
他にも大切な者なら無断で身につけるというのもあるだろう。
「だが、一般的には悪意をもつものもいる。
それに悪用するものもいるのは事実だ」
「なるほど」
事実、オレにかけられている呪いなんてどう考えても毒にしかならない。
「そしてその呪いに関して天才的な才能を持つ者がいた」
それが呪いの魔女王だった。
「彼女は魔法使いの名門家系だった。
だが、呪いに適性がある。
そう知ったとき、父親や母親はそれを正しく使う道を教えようとしていた。
だが、そうは思わないものもいた」
呪いの魔女王の両親。つまりフールの祖父母ということだろう。
フールを横目でちらっと見るが特に変化は無い。
「そしてその中の一人が危険だからと言って……。
両親の目をかいくぐり誘拐して……そして殺そうとした」
「うわぁ」
あんまりである。
赤子のうちにである。
あえて言うならば人を殺す才能があるとか……。いや。違うな。そもそも呪いの魔法の素質云々はひょっとしたら関係ないかもしれない。
有名な魔法使いの家柄ということもある。
ひょっとしたら妬んで恨んでいた人。あるいは敵対していた人達の策略という可能性だってあり得る。
「だが、高い魔力故に生き延びて……。
そしてある魔女に拾われた。
……呪いを悪用する危険な魔女に」
それはさながら運命だったのかもしれない。
「魔女はどういう理由で拾ったのかはわからない。
慈母や慈愛を持っていたのか……。それとも利用するつもりだったのか……。
今となってもわからないことだ」
ただ碌でもない存在に育てられた呪いの魔女。
その才能を十分に育てる。ただしそれを正しい使い方では無く間違った使い方を教える。そういったある意味では悪党の英才教育を整える環境になってしまったのだ。
もしも本当に呪いで人を襲う悪党を生み出したくない。そういう考えて居動いていたやつがいたとしたらとんだ皮肉な結果である。
とはいえ、まったく同乗したくはならない。
そう思いながらも話を聞き続ける。
これはとても無視できない内容だ。
それは確かだからだ。




