十四の呪い 恋と呼ぶに醜くそして愛と呼ぶには身勝手すぎる
「本当に申し訳ありません」
深々と頭を下げるのはあのバカの両親である。
高い地位を持つ貴族だと聞いていたがきちんと頭を下げることができていた。
よくアニメや漫画などで上位貴族ということから頭を下げない。
そういった人間はけしてすくなくないイメージがあったのだ。
だが、きちんと頭を下げた。
そんなことを失礼なことを考えているとは知らないだろう。二人は頭を下げたまま言う。
「息子は幼い頃から良くも悪くも実直というか思い込みが激しいところがあるのです。
ですが、ここまでのことをしていたとは……」
「頭を上げてください」
そう彼らにオレは言う。
ちなみに案内されたのは魔法協会の支部である。
オレは用意された服を身につけている。
ちなみに医学的に調べられており栄養状態なども栄養失調状態と言う判断。栄養ドリンクを渡されたぐらいですんだ。
体重はけっこう落ちていたが……。
閑話休題。
とにかくそれで話をきくためにオレは対応をする。
「正直、ちゃんと息子さんをみていてほしかった。
不満がないと言えば嘘になりますが……。
一番、謝罪するべきなのはあなたの息子です。
地位や家柄、将来とかそんなのは関係ない。
ただちゃんと謝罪をして間違えだと判断をするべきだ。
良くも悪くもそう思います」
そう光輝はきっぱりと言う。
いろいろな考えや価値観があるだろう。
だが、
「これは誘拐だし……。彼はあまりにんも人の話を聞いていなかった。
誘拐してしかも与えるお菓子も自分が理想とする女性の食べ物。
現実性がない。
……言っては何ですが……隔離するべきだったのでは?」
正直な話、あれは精神病院に行くべきだろう。
檻がある自由に動けなくなる病院。
そちらへと行くべきだろう。
この世界に精神病院があるのかどうかはしらないが……。
「それと使用人の教育をするべきだったのでは?
貴方の息子がしたことは立派な誘拐。
なのに使用人はそれを止めない。
使用人って言うのは主人の言うことを聞くだけじゃないでしょう」
そうオレは言う。
「オレの世界では今日日、貴族の使用人という職業はありませんが……。それでも上司と部下と言う関係ならばありますし雇い主と雇われるもの。そういった立場もあります。
けれど、雇い主に言われたかららと言って犯罪もするというのは間違いです」
きっぱりとオレは言う。
「主人が間違えてしまったら止める。たとえ、それで仕事がなくなったといても……。そういう人間こそが正しい生き方だ。少なくともオレはそう思います」
そう言えば二人はうなだれた。
「あのさ」
そんな中でアリスが口を開いた。
「まあ。空気が読めないというか……。
個人的にヨシキの意見には同意よ。
いくらこいつが傾国の美女という呪いがあれど……。
こいつはその呪いを弱体化させるのもある。
確かに魅了効果もあるし……こいつを手に入れようとしたら身の破滅。そういった可能性も強くなるけれど……。
それでも強い精神力があればあがなえるし……。
そもそもこいつの仮面でそれらの力は弱体化している。
何より年齢的に美女になるのはちょっと早いからね」
まだぎりぎり美少女ラインらしい。
「つーか、こいつの呪いがあっても無くてもあいつは狂っていたわよ」
「確かに」
思わず同意する。
本当に同意する。
あの行動というかいささかあった。
「それにあの剣。
あれは人を斬り殺したくなり安くなる魔剣。
いわゆる呪いの魔剣ね。
あんなのは厳重に管理、封印。そして呪いを解くためになっている。
個人所有は基本として許可されていないのよ」
「そうなんだ」
アリスの言葉に薫が言えば、
「少し考えればわかることだろう。
持ったら人を殺したくなる。
そんな剣が世にはびこっていたら……殺人事件がどれだけ増える」
「あー」
「軽い呪いの代物ならともかく……。
そういった危険度が高いものはかなりの探索がある。
本来ならばある程度の地位がある貴族の元に届けられる前に何らかの形で発見されるはずだ」
「貴族は上位になれば敵が多いからね。
本来ならばお抱えの鑑定士がいるはずよ。呪われているかどうかを判断する。
そういったのが……。つまり」
「はい。鑑定士にみせずに勝手に購入。あるいは手に入れたと言うことですね」
その言葉にあのバカの父親が申し訳なさそうに言う。
「全てが全て鑑定しているわけじゃありません。
夜などの艶事に使う道具など……。ある程度の代物などになると排除したりします。
ですが……剣などはわかりやすくそれゆえに鑑定もされていたはずでした」
「だからこれは個人的な意見だけれど……。
あのバカ息子。大分前から呪われていると思うわよ」
そうアリスが言い出した。
「え?」
「そもそも初恋の話だって……珍しくない話よ。
けれど貴族社会にいればその幼い頃に結婚したい。
そういった言葉が確実に満たされると言う保証は無い。
家の都合、時代の流れ……そういったので婚約破棄がおきるのも珍しくない」
静かにだが淡々とそうアリスは語り始めた。
「貴族と言うのはきちんと幼少のころから教育。特に貴族としての義務を教わるし友人だってできるわ。親が選んだ友人もいるし自力で友人も作る」
厳密に言えばコネなどであるが……。
そうアリスは前置きをする。
なんとなくだが俺も理解した。
要するに貴族のご子息、ご令嬢は幼い頃から人脈作りを覚えなければならない。近所の同年代の子供達と公園で遊び回ってしょうもない喧嘩で殴り合いをしたりした俺には想像は出来ないが……。
そういった人脈は大人になっても続いていき時に助け合うことができる。
こちらは理解できないわけではない。
現代日本でも大学や高校などの友人や知人。今でも交流が続いていた場合というのもある。例えば知り合いが医者ならば医療費を安く……は無理でも簡単な相談なら受けてくれたりするし政治家などでもある。
まあ。そんな超絶便利な人脈はさておいても……知り合いと言うのは助かる。
友達一人は下手な財産よりも素晴らしいと言う言葉があったようななかったような……。まあ。もちろん害にしかならないような人間もいるが……。
王族とかそういう貴族となれば違うのだろう。
「だからこそ人付き合いにはきちんと学ぶ。そうでしょ」
「ええ」
「そもそも結婚とかそういうのだって話に出ていたはずだし……。
年齢が近いものがいれば恋バナもあるわよ。そうすれば自分の初恋がわりとめずらしくない者だし……相手が悪気が無いもの。その場しのぎの発言だ。そう気づくことも可能」
淡々と言う。
「もちろん全く人の話を聞かなかった可能性もあるわ。
ただちょっとあいつは暴走があったわ。
何よりも……あの呪いの魔剣」
そう言ってアリスは言う。
「あんな物騒なのを簡単に手に入れることも……。
周辺に止める人材がいなかった。
あまりにもできすぎているのよ。
だから思うんだけれど……誰かがそういう呪いをかけたんじゃ無いの。
恋に狂い身の破滅を呼び込む呪い。
……哀れな愛ってやつよ」
そうアリスは言う。
「あれか!」
そう声を上げたのはローイだ。
「有名なのか?」
「いや。正直、無名だ。あれは呪いをかけるのもそうだが維持にもかなりのコストがかかる。正直、王族や貴族を破滅させるのろいとしても……正直、コスパが悪い」
そうローイが言う。
「コスパが悪い」
「ああ。貴重な魔法薬やなんやらをするし大量の魔力と儀式に時間もかける。
しかも三年ごとに儀式をしないと呪いは解除される。
しかも年々と呪いの持続に必要な魔力も魔法薬も増えていく。
しかもある程度の年齢になればなるほど呪いをかけるのが難しいわ」
そうアリスが言うが……なるほど。確かに聞けば行くほど面倒そうだ。
そういう呪いをかけるぐらいならもっと楽な呪いがありそうだ。
楽な呪いというのも問題がある気がするが……。
そう俺は思うのだった。
「確かにコスパが悪いけれど……。
それゆえに気づきにくいわ。
知っている人もかなり少ないあら気づく人間も少ない。
つまり判明しづらいというのよ」
そうアリスは言う。
「それに……これはまだわからないけれど……。
多分だけれど呪いを改良しているわ。
おそらくコスパがよくなっている」
「ああ。なるほど」
その言葉に俺も理解した。
魔法に関しては全くの素人以下であるがそれでも理解はできた。
従来のやり方では要領良くなく材料費や維持費がかかる。だから最新式ばかりが出ていたがその従来の旧型のシステム。それを研究した結果、材料費や維持費の問題をクリアしたというところだろう。
そうなれば知られていないマイナーということもあり対策は立てにくい。
そういったことかもしれない。
しかし、
「呪いをもっとたちが悪くするなんて研究をする人なんているのね」
「いることにいはいるだろ。
コンピューターウイルスと同じだ。
すでにあるウイルスをさらに改良してというやつ」
パソコンにもインターネットにもプログラムにも詳しくないが……。(プログラムと言えば運動会などのスケジュールを思い浮かべる方だ。オレは)
とはいえ、そういう改悪があるというのは聞いたことがある。
「もっと詳しく言えば既存の技を改良するやつ」
「あー」
どちらかというと改悪というべきだろうが……。
そうつぶやきつつ言う。
「まあ。あくまでも可能性ですが……。
それを調べてみた方がよいかと……。
そうでもしないとお家も大変な事になるのでは?」
そうアリスは言う。
その言葉に二人は黙る。
「まあ。たとえ呪いだとしてもそれを気づかなかった。
それに関してはありますし……あくまで呪いも可能性。
ひょっとしたら違うという可能性もありますが……。
それでもこのまま頭のおかしい息子がいた。
そうなるよりもマシかと」
「ええ。そうですね。それでも爵位や領地など……。
変化はあるでしょうね」
そういった貴族の話はさっぱりオレにはわからない。
わからないが……。それでもかなりの事が起きそうだ。
まあ。あれは自業自得だろう。
ただ一つ、
「まあ。呪われていたのか呪われていなかろうが……。
一つだけ言わせて下さい」
オレは口を開く。
「今後、二度とオレはあいつの顔を見たくない」
きっぱりとそう釘を刺したのだった。




