十三の呪い それは恋と呼ぶには醜く愛と呼ぶには身勝手だった
そんな会話をしている中だった。
「見つけたよ。僕の花嫁!」
ばーん!
店の扉を破壊してそいつは現れた。
そいつを見た瞬間に俺は叫んだ。
「請求書はこいつの実家にお願いします!」
「言うことはそれか?」
思わずといった感じでローイが叫ぶので、
「当たり前だ。
オレから見たら誘拐犯だぞ。誘拐犯。
万が一にでも誘拐犯が破壊したものを弁償するように言われたら理不尽だろうが!
碌でもない生活で乱れた食生活。栄養バランスだって悪い。
なんとか健康だったがもしも病気になっていたら医療費だって請求するぞ!」
そう俺は叫ぶ。
こいつの理想のお姫様を求めるのは勝手だがそのために食生活までだ。
それも健康と言う最低限の常識すら守らない。
お姫様は甘い砂糖菓子しか食べない。
そんなまだ十歳に満たない子供だってさすがに無茶がある。そんな幻想を信じて実行しようとしているようなアホだ。
そんなのをオレがなんで懇切丁寧に遠慮、思いやりを持たなければならないのだ。
「そもそも、今のあいつが正気に見えるか?」
「確かに……まだミハナさんの方がまだまともに見えますね」
オレの言葉にフルーが同意する。
心花。バカ弟の吉成の恋人であり現在進行形でヤンデレストーカー蛇髪娘となっている。元々、嫉妬深いヤンデレ傾向のある女性であるが吉成という人間を理解している。少なくとも吉成を理想の王子様像に無理矢理押し込めたりはしていない。
まあ。近づく女性をむやみやたらに殺そうとしているが……。
それでも吉成がテストの成績が悪いはずがない。など悪いところを見て見ぬふりもせずに受け入れているしそして治そうとしている。
正直、あのヤンデレ傾向がなければよい彼女になれただろう。
実のところあの女好きな軽薄バカな性格を知っているからこそ不安からヤンデレになっているのではないのだろうか? そうオレは密かに考えていたりする。
まあ。実害はまだましだろう。
吉成が取り直せばよいしあれも最後の一線……犯罪にまで手に染めていない。……はずだ。たぶん。まあ。そこはおいおいと考えて……。
「あれはもういろいろとアウトだろ」
そうオレが言うとおりだった。
片手に血がしたたり落ちているどす黒い刃の剣。返り血で真っ赤に染まった純白タキシード。うつろな瞳。そしてもう片方の手には返り血で染まっているウエディングドレス。
どう考えても不気味である。
世の幸せな結婚式を夢見る乙女の幻想を破壊する。
どちらかというと血染めの花嫁というミステリーかホラーの光景だ。
そもそも、
「あれは誰の血なんだろうな」
「さあ。運がよかったら犬や猫とかの血かもしれないわよ。
犬や猫なら問題がないというわけじゃないけれど」
俺の言葉に薫がそうつぶやいた。
「見つけたよ。僕の花嫁」
「呼ばれているぞ。花嫁」
そう言って近くにいるローイを前に歩かせる。
「いや。無茶があるだろ。なんで俺!」
「女を盾にする趣味は無い」
「花嫁と呼ばれて男を差し出す趣味はあるのか!?」
「男が花嫁に化けて戦うことなんて珍しくないぞ」
「そんなわけあるか!」
ローイが怒鳴るがこちらの世界では珍しくないぞ。
花嫁の身代わりになったり花嫁衣装を着てごまかしたり……。
そう思っている中で、
「ああ。僕の花嫁。
そうか。君はさらわれたんだね」
「誰にだよ」
「たぶんこの状況ならさらった男は俺なんだろうな」
ため息交じりに言うローイ。
断じて違う。
とはいえ、
「なら。大丈夫だ。
君と僕を引き剥がすもの。結ばれるのを邪魔するもの。
僕らが愛し合うのを手助けできないもの。
全てを殺して僕らは愛し合うんだから」
「そんな愛はいらねえし!」
俺はそう言って近くにあったからのお皿を投げる。
「弁償代はそこの野郎に要求してくれ攻撃」
「いろいろとひどい攻撃ね」
俺の言葉に薫があきれたように言う。
まあ。確かに当たったら相手に肉体的なダメージ。よけたとしても皿が割れたこいつの懐にダメージがいくはずだ。
とはいえ、それを気にした様子もなくバカは切り捨てる。
ぱりんと割れる。
とはいえ、
「縛り上げろ」
そう呪文があった瞬間だった。
周囲から突如として樹木の板から樹のツタが生えてきて男を縛り上げた。
「おお」
簡単の声があげる中、
「麻痺」
そうフルーが言うと同時に男は暴れていたのがおとなしくなる。
「麻痺の呪いをかけました。
しばらくは動けません。まあ。自然に解ける魔法ですが」
「十分だろ。しかし、こりゃやばいな」
俺はそうつぶやく。
どう見ても返り血。それもあの話を察するに、
「人を斬り殺してきたんだな」
そうフィリが言う。
「衛兵に連絡だな。
しかし……。本当にどうしようも無いバカだな」
そうローイも言うが……似たようなもんだったと思うぞ。お前も……。
そんなことを思っている中だった。
「あははははは」
突如として狂ったような笑い声を上げるとツタを引きちぎる。
「うそ。麻痺状態であんな馬鹿力……。まさかあの剣」
フルーが驚愕の声を上げる。
「どういうことだ?」
「おそらくあれは魔剣だ」
そうローイがかわりにとでも言う感じに言う。
「すぐに気づかなかったがどうやら達の悪い呪いがかかったタイプの魔剣だ」
「妖刀みたいなもんか」
ローイの言葉に俺はそうつぶやく。
妖刀。日本に育ったならば否応なく知ることになる刀の中でも曰くがある刀。有名なところでは村正。なんとなく偏見であるが魔剣と聞くと炎を出したり氷を操ったり……魔力をもった攻撃力アップのパワーアップ剣と言うイメージが強い。
とはいえ、実際のところとしてたちの悪い呪いと聞くと……。一気に妖刀のイメージへと変化する。
使用者の体力や知力や精神力。それらを吸収していき力を増していく刀。だが、それと同時に精神を食らっていきやがては自らの命すら奪うという妖刀。
まあ。これらは大半が創作などであり本当に妖刀と呼ばれるのがあるのか? そういうのには議論されたりする。
まあ。元の世界では呪いなんてのは言葉はあったが実在は怪しい。そういった代物だ。とはいえ、この魔法の世界ならばだいたいはわかる。
「おそらく殺人衝動を強めるか。正気を失わせるかのどちらかだな」
フィリも構えをした状態で言えば、
「大丈夫です。ヨシキさんが言う言葉を聞く限り……。
最初から正気とは思えませんでした」
「否定はしないが……大丈夫の使いどころがおかしい」
フルーの言葉に俺はそうつぶやきながらもハリセンに手をかける。
このハリセンは呪いを解かせることに関して派便利だ。
ちなみにあの城でもハリセンは常にあった。
まあ。気に入らなかったらしくあるたびに捨てさせていたが……。
スカートの中からどこからともなく出てきたのだ。
はたしてどういう仕組みなんだろうか。
そう思いたくなる光景であった。
とにかくそのために唯一、持っているハリセンを構える。
「一人だけ間抜けね」
薫がそうつぶやくが、
「好きで装備アイテムがハリセンなわけじゃねえんだよ」
RPGゲームならば格闘家、魔法使い×3に武装ハリセンの人間。
かつて無いほどにバランスが悪い。
そう思っている中で奇声を上げながら迫ってくるバカ。
「まったく」
オレは泣き泣き前に出る。
「盾役がほしい!」
そうつぶやきながらもオレは一気に目線を下げて相手に足払いを与える。それと同時にフィリも一気に近づいており崩れた体制を使い一気に剣を持った手に一撃を与える。
「とりあえず剣から手を離しなさい」
「離さないとひっぱたくぞ」
怒鳴るフィリにオレも同意してそう叫んだのだった。
「ああ。なんてことを言うんだ。
お姫様はそんな言葉遣いをしないんだ。
ああ。悪い環境でそうなってしまったんだね。
やはり理想のお姫様は守らないといけない。
誰も来ないような場所で僕と君だけで一緒に暮らす。
そうすれば君はずっと僕を愛し続ける理想のお姫様でいられる」
会話が成り立たない。
いや。最初から会話が出来ていなかったな。
そう思いながらも振り下ろされる刃をオレはかろうじてよける。
「捕まえるというよりも殺意を感じるな」
「かなり正気を失っているわね」
「大丈夫ですよ。誘拐をする人間なんて最初から正気なのかも怪しいですし!」
オレの言葉に薫がつぶやけばフルーの何が大丈夫かわからない大丈夫がくる。
正論だが、今はその正論がほしいわけじゃ無いのだ。
「悪いけれどな。
オレはお姫様じゃねえ!」
そうオレは言うと同時に飛び上がる。
下着が見えるとかそんなのはどうでもよい。(そもそも男だったのでそういうことを気にするのはあまりなれていないのだ)
瞬時にそう言うと同時に跳び蹴りを与える。
二世代も前から伝わる日本のヒーロー……仮面をつけた戦士の必殺技のまねである。もちろんたんなる素人ならばそれはただのまね。
だが、それなりに格闘技を学んでいる人間ならばそれなりに立派な技となる。
スカートの中に見惚れたのか虚を突かれたので思いっきり動きが止まる。
そして、
「お前は……もう少しいろいろと世間をしろ。
この勘違いストーカーヤンデレ変態監禁野郎!」
スリーアウトどころかフォーアウト。
いや。デットボール並の行動にオレは怒りを込めて思いっきりその頭をひっぱたく。
その衝撃に剣が吹っ飛びその剣にも、
「ややこしいやつをさらにややこしくしているんじゃない!」
と、怒鳴って剣をハリセンでひっぱたく。
どうやらたたき方が奇跡的な何かを引き起こしたらしい。
奇跡的に吹っ飛んで天井へと突き刺さりそして……、
『『『あっ』』』
刺さり具合が甘かったのか落下した。
そしてバカの股間に突き刺さった。
ざっしゅっ!
絶叫が……。
本来ならば絹を裂いたようなと表現するべきだろうが……。
叫んだのは男だし……。
それはどちらかというとまるでぞうきんを引きちぎったような叫びだった。
「うわぁ」
「ちょっとどうするのよ。これ」
「不運な事故だったですね。
まあ。大丈夫です。目撃者はいますし」
「そういう問題か。
おい。誰か治癒魔法の卓越した使い手はいないか!?」
大騒ぎはまだ終わらない食堂だが食事をする空気だけは確実に終わっていた。




