第八話 解明される呪いとありがたくない神具
遅くなりました。令和最初の更新です。
たぶん次の更新はさらに時間がかかる。理由は報告で
フルーの呪文と同時にぶわりと光が編み出して立体映像のような光景が広がる。
そして光が地図となり白い線がホテルの全体図。そして黒い光が呪いだろう。
「立体映像。SF映画みたいだな」
しみじみと俺はつぶやく。
どちらかというとアクション映画の方がすきだがSF映画も好きだ。宇宙飛行が可能だったり時間移動が可能だったりとするそれ。
その中には立体映像というのがあった。
現代では3D映像ぐらいが限界で平面から立体的な映像を生みだすのは不可能ではないが難しく一般的ではない。それをこうしてみると少しばかりうれしくなる。
しかしそれを見ていても、やっぱり魔法の知識が全くない俺には何が何だかわからない。だが、
「これはっ」
「へー」
「驚きましたね」
驚くローイと感嘆の声を上げるアリスにフルーがつぶやくように言う。
「何かわかったのか?」
魔法に対してそれほど詳しいわけではないフィリが尋ねる。
「魔法陣のようなのを描いている」
「ような?」
ローイの言葉に薫が怪訝な顔をする。
「魔法陣ではなく魔力をもった星座を組み合わせている。
これで魔法陣と同じ結果を生みだしているんだろう。
さすがは魔女王と呼ばれるだけはある。
魔女の王と呼ばれるだけの高い魔力と技術を持つ。
正しいことに力を使えば偉人として歴史に名を残すことができただろうに」
ローイがそういう。
「これはおそらくあの女が編み出した独自の技術に近いですね」
「星座を組み合わせるね」
フルーがまとめる中で俺は考える。
星座を使うというのはわからなくもない。
魔法やらオカルトやらに詳しいわけじゃないが多少は本を読む。その中には魔法が出たりオカルトが出たりする。その中には星座をテーマにしたものがある。
そして星座占いなどもあるのでは星座や星の位置などを占うのがあるそうだ。
ひょっとしたらそれを利用しているのかもしれない。
ローイは興味深そうにそれをノートにまとめ始めている。
「これは呪いの一種としても貴重だが魔法の形態としても覚えておかなければならない。
記録するから分析は少し待ってくれ」
「ああ。別に良いぜ」
「良いの?」
俺の言葉にアリスが尋ねる。
「ああ。呪いの元凶である呪いの魔女王が作り出したオリジナルに近い形態。
それが今回だけという保証とは限らないからな」
「ああ。なるほどね」
俺の言葉にアリスは納得したようだ。
今回と同じ魔法がもう使われていないとは限らない。同じ形態の魔法がないとはとてもじゃないけれど思えないのが本音だ。ここで調べておいてもらった方が良いだろう。それと、もう一つだが俺の目的がある。
それはフルーに功績を与えたいということだ。今回の新しいオリジナルの形態の魔法を解析して世に広める。それだけでも十分に功績になるだろう。
それを平和利用できる可能性もあるし新しい魔法が生み出される可能性も高い。
たとえ一人の功績じゃなく複数の人間と協力して。そうなったとしてもフルーが活躍したという名前になればフルーの評価に上がる。
もちろんすぐに名前を出せることができると限らなくてもだ。
いくつも功績を作り上げて一気にその功績を広める。
そうなればいくらフルーが大犯罪者の娘であり復活のカギだとされてもだ。フルー個人の偉業と功績を積み重ねればフルー個人に対する嫌悪が減っていくはずだ。
フルーに嫌悪される嫌われる呪いがかけられているが、その呪いはそれほど強力じゃない。だからこそローイはいろいろあって態度がましになったりアリスといった親しくなれる人も増えたというわけだ。
だからこそフルーの印象をよくしよう作戦をするのだ。
政治というのはいつだって世論が大きくものを言うのだ。
世論は人を大きく動かしてくれるのだ。
世論でフルーが善人として広まり良い評価を持たれるようになる。そうなれば危険だからという理由で殺す。あるいは監禁するのに反対意見が出てくるというわけだ。
つまり人の印象というフルーを気づつける刃をフルーの身を守る盾と鎧にするつもりなのだ。とはいえそれは口で言うのは簡単じゃない。
悪い印象を一気に覆せるような偉業というのはそうそうできない。だからどうにかする必要があるな。そう思っている中でこれだ。
もちろんこの一つだと意味がないかもしれない。けれど複数、大量の偉業で何かをすれば何かを変化がおきるかもしれない。
塵も積もれば山となる。
大きな偉業を引き起こせるときにフルーの名前が出る。そして今までの功績を広めることができれば一気に世論は変わる。
一度、失った信頼を取り戻すのは簡単じゃない。だが、フルーは信頼を失っているわけじゃない。むしろ悪い噂が広まっているという状況だ。
だがその悪い噂を打ち砕くことができれば話は別ということだ。
まあ。わかりやすく言うと不良だと思っていたやつが野良猫を拾っていたら一気にいい人のように感じられる。だが完璧無血な優等生だと思っている人が猫を虐めていた。そんな噂が広まったらまるで残虐非道な悪人のように思われる。
つまり第一印象を何かの拍子に覆すと急に評価が反転する。むしろものすごく評価が上がったりするというわけだ。
もちろんそうなると限るわけじゃないのだが……。
少なくとも良い印象を持たれるようにしておいて悪くないだろう。
ついでにいうと存在していて評価する価値がある。そう思ってもらえれば問題がないというのが俺の考えというわけだ。
もちろんそれはあくまで俺の個人の意見でしかないのだが……。
そう思いながら三人は解析をしている。
「こういうの嫌いなのよねー。あたしって感覚派だし」
「そういうのを自分で言うのか?」
アリスの言葉に俺はそう突っ込みを入れてハリセンではたく。
「まあ。魔法使いの専門知識で分析している。
そういえば納得してもらえるかもしれないな」
俺はそう報告を考える。かなり優遇された環境だ。早く仕事の結果を出さないと悪い印象を持たれるだろう。とはいえすぐには難しい。向こうもわかっているだろうが目に見える成果を少しでも見せないといけないだろう。
俺はそう思いながら報告の内容を考えたのだった。
報告の内容はとりあえず素人向けであり魔法がとっても複雑だけれど解決策が見えた。ただ時間はかかりそうだ。そう書き終えることができたのだ。
要約するだけでありなるべく期待を損なわない。けれど過剰に期待されないような報告書にすることができた。そして俺たちはホテルで引きこもり交じりの仕事をしていた。
ホテルでなるべく呪いの核と思われるところを挑戦したりしているのだ。
それにも呪いを分析したり調べたりしていく。
それと同時にあの聖女様の情報を調べていたのだ。
仕事はとんでもなく大変でそうそう終わらないがそれでも終わらせないといけない仕事。けれども仕事が終わったらホテルを出るべきだろう。
だがホテルを出たらそのあとはどうするか? 聖女もあまり長くいないだろうが未だにいて呪いを解いている……わけではない。呪いを緩和していたりしているらしい。
完全に呪いを解くことはできていないがそれでも呪いの表情を緩和する。それに関して沢山の人が感謝しているそうだ。
まあ。その行為自体に否定はしない。立派な行いだとおもうし助かっている人も大勢いる。呪いが完全に解けるのが理想だが緩和するのもまた助かるのだ。俺などは呪いで自我を失っていないが中には自我を失った人がいる。その場合、最も困っているのはその自我を失っている人ではなく一緒に暮らしている家族や親しい恋人などだ。
あえていうならば精神病患者の相手をしている家族みたいなものかもしれない。犬のような精神となってしまい言葉は通じず会話もなりたたない。犬のような行動をとられたとしても外見は人間だ。たとえ呪いのせいだと理解されて誰もが呪いにかかっている。そうはいっても被害に遭えば不愉快になるし文句を一つでも言いたくなるだろう。
それが呪いの影響で多少は人間の自我を取り戻せた。自分のことがわかるようになった。そんな人たちにしてみたら幸いなのは事実だ。動物になってしまった人たちも会話ができるようになったり自我を取り戻したりした人もいるそうだ。
……フルーとアリスのことがなければ俺も両親を見てもらっていた。
余談であるが夜逃げをした俺の身内。つまり家族だが兄貴は職場に泊まり込みをしながら一緒に移動させた両親の面倒を見ている。色ボケ弟は恋人のところにすみこむことになった。俺が嫉妬するとかこれは浮気になるとか騒いでいたがとっとと出て行ってもらった。
俺と一緒に行動したら俺の命の方が危ない。
ただでさえ厄介ごとを背負い込んでいるんだ。お前の彼女の問題は自力で解決してくれ。そう思う。まあ。惚れられているのは俺なので無関係を主張することはない。身内だし……。ただし、俺への恋愛感情をどうにかしてからだ。
……あれもどうにかしてほしいものだよなぁ。
まったくもってこの状況じゃなければ聖女の力も借りたかったほどだ。そういえば、
「なあ」
泊まり始めて三日目の夕食を俺は食べながら缶詰め状態で分析している三人に話しかける。正確に言えばアリスであるが、
「聖女が呪いを緩和していると聞いたけれど、それってお前らにもできないのか?」
アリスは呪いをかけるのが専門の仕事だ。だがフルーは一応が付きそうだがローイともども呪いを解くのが専門家のはずだ。そう思って質問すると、
「あれはあの王族特融の得意能力みたいなものだ」
そう答えたのはローイだ。
「それってアリスのえっと……聖淑女みたいなものか?」
「ちょっと違う。あれはどんな呪いも自分には影響をうけない。
そしてその血を一滴でも武器に垂らせばしばらくの間、呪いを打ち消すことができる聖具を生みだすことができる」
「それってこのハリセンみたいな?」
アリスの言葉に俺は背負っているハリセンを見せて訪ねればアリスは首を振った。
「それはもっと上位の代物。もう神具に近いわね。神の道具に匹敵するわ」
「ハリセンが」
アリスの言葉に俺は思わずそう聞き返していた。
神具。そういわれて思い浮かべるのはまず三種の神器だろう。
八咫鏡、八尺瓊勾玉、草薙剣。
とくに有名なのは草薙剣だろう。天界を追放された問題児の神様であるスサノオノミコトが行いを反省しながら諸国漫遊をしている最中に八岐大蛇を倒して尻尾から見つけ出したという剣だ。たまに倒すのに使ったと勘違いしている人もいるが倒した後に見つけたものである。
勾玉はアマテラスが弟の問題行動に怒って引きこもった時に出てもらうために作った道具の一つである。(それがどうしたといわれても困る。詳しいことは専門家に聞いてほしい)鏡も同じだったりする。
この三つは国宝であり実際に見たものはほとんどいない。
ちなみに電化製品の三種の神器と評されているテレビとクーラー(今ならエアコンだろう)車。デジタル三種の神器というデジカメ、DVDレコーダー、薄型テレビがある。
まあ。この電化製品の三種の神器はさておいて逸話も神秘だし外見も素晴らしい。
けれどそれに対してこのハリセン。神秘性も威圧感もまったくない。
第一、ハリセンだ。ハリセン。
勾玉は昔は装飾品とされていたし鏡も昔は作るのがとても大変だった。剣は当然ながらだしそもそも立派な武器だ。
ハリセンなんて外見だけならば同じものを作るのは猿でも躾ければできそうだ。
「まあ。大切にしなさい」
「捨てたくても戻ってくるんだけれど」
アリスの言葉に半眼で呻く。そもそもこのハリセンがなければ俺の色物具合は減っていたのだ。今の俺は絶世の美女になった元男で仮面で顔を隠している、それでいて魔性の美女よろしく歩くだけで男を惚れさせる。そしてハリセンを持っている。
もうギャグなのかエロなのか歴史ものなのか三流小説なのかわからない。
「元々はごく平凡な男子高校生だったのに」
まあ。兄と弟が女性で問題を起こしている。
それに関しては平凡と言えないがこれだけならば平凡だったはずなのだ。
それをどうしてこうなったのか?
なんか悪いことでもしたのだろうか?
そう尋ねたくなる。
「まあ。だから狙われると思うから気を付けた方が良いわよ」
「すでに狙われたよ。命を」
「これからも狙われることがあるわよ」
「うーん」
命を狙われる。それは冗談じゃない。
そう思っていたら、
「お、お客様」
「こちらにもそちらがお客様なんですけれどね」
ホテルのオーナーが慌てた様子でやってきた。
「どうしました? そろそろどうにかできそうなんですが何しろ時間がかかります。けれどうまくいけば街全体のためになるかと」
時間がかかるけれど許してね。そう遠まわしに伝えようとしていたら、
「そ、それが聖女様がやってこられたのです」
『『『げっ』』』
オーナーの言葉に俺たちは思わず声を上げた。
思いっきり顔をしかめていたとしてもそれは無理はないだろう。
厄介なことになったと俺はそう痛む頭を抱えた。




