第四話 傲慢な王は猫じゃなくてライオンだよな。いや、同じネコ科だけれど
傲慢。
高い自尊心、他人より重要、魅力的になりたいという欲望。称賛をそれに値するものへの怠慢や過度の自己愛のことだ。
七つの大罪。元はキリスト教で人間が罪を犯す原因となる感情のことだが、それにも数えられている。七つの大罪というのは、わりと有名だ。
アニメや漫画、ゲームといった二次創作でもふんだんに使われている。対極である七つの美徳はかなりマイナーなのにと思う。とはいえ、人間は何かしらの罪を背負っているというか、悪いところのほうが共感をしやすいのかもしれない。
とにかく、その中には傲慢もある。
傲慢。として、有名だ。そのために、簡単な象徴ぐらいなら知っている。悪魔ならルシファー。動物ならライオンかクジャク。幻獣ならグリフォンだ。
そう。ライオンである。
そして、傲慢の呪いをかけられているのは……どこからどう見ても豚のように肥え太っている猫である。
「暴食の呪いじゃないのか?」
「まあ、そういう呪いもあるが違うぞ」
俺の言葉にローイがそう答える。
ちなみに、暴食も七つの大罪であり、象徴となる動物はハエか豚だ。豚なのは、まあよく食べることだろう。そして、ハエなのは暴食の悪魔として数えられているのが蠅の王だからだろう。
つかあるのか。暴食の呪い。
ひょっとして、強欲の呪いとか怠惰の呪いとか色欲の呪いや嫉妬の呪い。憤怒の呪いとかもあるんじゃないだろうな? と、俺はあきれる。
しかし、そんな七つの大罪と数えられるようなシリーズ。
そのシリーズの呪いにかかっているのが、猫。
もう一度、言おう。猫である。
「せめて、ライオンとか」
「まあ、同じネコ科よ」
俺の言葉に薫が慰める。
まあ、ライオンと戦うよりはましかもしれない。
詳しく調べたことはないが、猫とライオン。どっちと戦って死んだ人間が多いかと聞かれれば、おそらくだがライオンの方が圧倒的に多い。
調べたことはないが、否定する人間も少ないと思う。
と、いうか猫に殺された人間というのもいない気がする。
「まあ、良いけれどさ。
それって厄介な呪いか?」
「まあね。七大悪魔の呪いと呼ばれているものの一種よ」
ある意味予想通りの言葉だ。
予想通りだが、この世界に存在する悪魔がいる。その中に七大悪魔と呼ばれる悪魔がおり、その悪魔が好む感情が強欲、怠惰、色欲、嫉妬、憤怒、暴食、そして強欲である。
「これもその呪いの一種」
「どこの世界もそういうのは似ているのか?」
と、俺はつぶやく。
「そっちの世界にもそういう呪いがあるんですか?」
「呪いも悪魔も実在は確認されていないが、七つの大罪。と、いうのがあってな。その中では、強欲とか数えられている」
と、フルーの言葉に俺はそういった。
傲慢の悪魔はその名は、リュシフィス。
ルシファーでもルシフェルでもないらしい。まあ、異世界で悪魔の名前が同じだった方がおかしいので、特に文句はない。
その悪魔との半強制的な契約がその呪いだそうだ。
「強制的な契約?」
「そう。魔法の中には悪魔の力を借りる魔法があるの」
と、フルーが言う。
「呪いの管轄だから、そういうのはアリスが詳しいよ」
と、アリスが口を開いた。
リュシフェスは傲慢であり、自身の下僕をたくさんに作り上げるんだそうだ。
なんでも自分に従うものには魔力を与えて、望みをかなえる。
そうして、何でも言う部下を作り上げてどんどんと傲慢になっていく。と、いうのだ。「なるほどな。
隆司さんをこんな姿にしたのは、お前か」
「そうだ。我が忠実な部下が望むからな。
我はなかなかに慈悲深いだろう」
と、傲慢な態度で言う猫。
「異世界の悪魔というのは、随分と平等なんだな。
相手が猫でも構わないのか?」
「大丈夫です。
今まで猫が悪魔との契約をしたなんて話は聞いたことがないです」
俺の言葉にフルーがきっぱりと断言をしている。
何が大丈夫なのかはわからない。
まあ、こちらの世界の悪魔は知らないが曲がりなりにも大悪魔が猫の魂を、喜んでほしがっているとした涙が出るほど情けない。
そう思いながら、俺は猫を見据える。
「お前な。隆司さんに迷惑をかけているんだよ」
「ふん。我に気に入られることをしようとは思わないその下僕が悪い」
傲慢に言い放つお猫様。
まあ、猫というのは基本的に偉そうだ。とはいえ、こいつは偉そうというよりも憎らしい。猫と言えば、もう少しかわいいはずだ。と、俺は思う。
確かに気まぐれであり、偉そうなところがある。
だが、気が向いたら甘えてくるとかそういうところがかわいい。と、猫好きの友人がそう語っていた。たしかに、その家に来た猫はそれなりに可愛らしかった。
偉そうにえさをねだり、えさがなければどこかに行く。現金とあきれたが、その程度ならかわいいが、これはかわいくない。
どんな猫好きも簡便だろう。
「あのな。お前が食べる餌を用意してくるのは元をたどれは、隆司さんなんだがな」
と、俺は言う。
とはいえ、
「ま、お前と議論するつもりはないんだ」
と、俺は言う。
「あいにくと、人類が猫より偉い。と、いうつもりはない。
けれどな。お前みたいな傲慢なやつと議論をするつもりはない」
まあ、猫を相手に議論をしている。と、いうのも情けないような気がする。とはいえ、一応は話し合おうと思っていたが、いい加減にあきらめてきた。
「一つ聞く。大人しくその力を使うことをやめるつもりはないか?」
「ふん。なんでだ?」
俺の言葉に猫はそういって鼻で笑った。
「なぜ、私がお前たちのいうことを聞かなければならない。
お前らは私の召使だ。
ただ、私に仕えて気に入られるならば喜びを与える。
それだけだ」
「……傲慢だな」
「まあ、猫という生き物はたしかに傲慢かもしれないが……」
ローイの言葉に俺はうめく。
そもそも、猫というのは犬と違い飼い主に忠実にならない。半野良とでもいうべきか、外で自由気ままに暮らしており飼い主を複数、持っている猫というのもいる。
まあ、そもそも猫というのは野生の血が強く群れではなく個体で生活をしている。親離れをすれば、たとえ親ですら他人として行動をする。
対して、犬というのは群れで行動する。
トップに忠実に行動をするために、飼い主を自分より上の地位。と、判断すれば従順なのだが、猫は違う。
場合によっては、飼い主を召使とも判断する。まあ、都合がよいのだ。
「とはいえ、こいつの呪いを解除しなければ依頼も達成しない。
何より、いくら何でも隆司さんが不憫すぎる」
「たしかに」
俺の言葉にローイもうなずく。
このままだと、隆司さんが発狂するか胃に穴が開くか。精神が壊れるか。いずれかだ。あるいは、兄を見捨てるかのどれかだろう。
とはいえ、このまま見捨てたらどれになったとしても寝ざめは至極悪い。
「と、いうわけだ。
あんたの呪いを解かせてもらう!」
俺はそういうとハリセンを振りかざしたが、
「させるかぁぁぁぁ!」
と、現れた総司さんをみて、
「おげっ」
思わず嘔吐しそうになった。
魔法少女ものグッズには、なりきリセットというのがある。主人公やその仲間などが使う武器や変身グッズなどが、販売されているのだ。
まあ、それは魔法少女ものだけではない。変身ヒーローも同じなのだ。変身グッズやその武器などを販売するのだ。
まあ、ただ魔法少女などのものには別の品があるのだ。
例えば、その服装をモチーフにしたコスプレ衣装だ。
小さい、保育園児や幼稚園の女の子。ギリギリで小学校低学年。その年齢ならば、まだそういったコスプレ衣装を着ていたとしてもほほえましいだろう。
だが、いかにもサイズがあっていないとわかる服を着ている三十を超える太ったおっさんが身に着けていると、いうのは吐き気を覚える醜悪さを感じさせた。
ぱっつんぱっつんではちきれているし、パンツは見えている。器用にかつらまで身に着けているが、余計にかわいくない。
見た目がかわいいとか綺麗な女性ならば、まだ良い。だが、実際は違うのだ。性別も一致していないし、外見も醜悪だ。
「……なんですか? あの服装は?」
「たしか、あれはラブリーマジカルエンジェル。キューピーちゃんですニャ」
と、フルーの疑問に隆司さんが説明を始めた。
「朝早くにやっている魔法少女アニメのキャラクターですニャ。
天界からやってきた天使の卵を育てるために、変身したキューピーちゃんが、魔界と戦って人々のラブハートを集めるんです」
いろいろと頭痛を覚える説明をする隆司さん。
「なんで、その恰好をしているんですか?」
「知らんが、それで強くなったつもりなんじゃないかな?」
と、俺は適当に言う。
あいにくと、アニメが好きだとかゲームが好きだ。と、いう気持ちを否定するつもりはないが、十代後半を超えた年齢を通り越して二十歳を超えた男性がそんな女装をするという発想は理解はできない。
まあ、コスプレを否定はしないが……。
あんな恰好をして恥ずかしいと思わないのがわからない。これが、似合っているとかならわかるが、そうじゃないんだから理解不能だ。
何が悲しくて野郎のアニメキャラ(幼女向け)のコスプレを見なければならないんだ? そんな中、
「ミラクルキュンキュン」
と、謎の呪文を唱えようとしている総司さん。
「キュンキュンア―――」
「いい年して、いい加減に現実を見ろ!」
と、俺は思いっきり頭をハリセンでひっぱたいた。
そのまま、瞬時に足払いをかけてバランスを崩すと絞め技で気絶させた。
「ぜい肉の塊が勝てると思うなよ」
と、俺は言う。
女になって筋力とか落ちたが、あいにくとぜい肉の塊に負けるほどではない。ぜい肉の塊で強い奴なんていない。
相撲取りは肥満体でも強いが、あれは脂肪の下にはしっかりと筋肉があるのだ。こいつは、ただたんに死亡の塊で筋肉もろくにない。
「きさま、よくも我がしもべを……。
何様のつもりだ?」
「それは、こっちのセリフだ!」
と、猫の言葉に俺は思いっきり頭をひっぱたいた。
その瞬間に現れた巨大な黒い塊。
「フルー! あと、ローイにアリス」
「はい。わかりました」
と、俺の言葉にフルーが呪いが逃げないようにする。
呪いを操るというのでは、フルーにアリスがたけている。フルーは呪いを逃がさないように、アリスはほかの人に呪いが映らないように防ぐ。
そこに、ローイが呪いを打ち消す。
呪いを打ち消そうとすると、高頻度で失敗するフルーより、いろいろと性格に問題があるがローイの方がたけている。
呪いが消えた瞬間に、隆司さんの服装が変わる。
まともな服装になり、猫耳や尻尾もなくなりそこにいたのは、普通の少年だ。
「戻った! 戻った!」
と、歓喜の声を上げる中、猫が、
「にゃー?」
と、首をかしげている。
「なにがニャーだ?」
「おそらく呪われていた間のことは忘れていると思います。
猫ならそういうこともありますから」
「まったく、いい気なものだよ。お猫様」
と、フルーの言葉に俺はため息交じりに言う。
かくして、一つの騒動が終わったのだった。




